魔女の子供時代 Ⅳ  ~財宝を求めて~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女



2度目の朝が来た


私たちは山を下り始めた


魔女は木の実を見つけては食べ

猫のハックルとベリーは地面に虫を見つけたりして食べた

狐のトムもあちこちで穴を掘ってはなにやら食べていた


しかし狼のソーヤは水だけは飲んでいたが、何も食べなかった


魔女は帰り道のことより

ソーヤの空腹のことの方がよほど気になっていた


「きのみ、たべる? むし、たべる? はっぱたべる?」 


色んなものを口の前に差し出したけれど

ソーヤはどれも食べてはくれなかった


(ソーヤにあげるたべもの・・ ソーヤのたべもの・・)


魔女は考えて、昨日の滝の下流に向かった


歩いて歩いて、やっと川に辿り着いた!


渓流で魚を獲って、それを食べさせようと思った

でなきゃソーヤが死んじゃうから・・


川に入って行って魚を探した

大きいくはないけれど、いる・・


魔女はびしょ濡れになって魚を追いかけ続けた

しかし魚はすばしこくて、あっという間にに逃げてしまい

ほんのちょっとだけ移動し、そこで魔女を観察した

それはまるで魔女をバカにしているようだった


魔女は必死だった

魚を岩場に追い詰め、そこを石で囲って逃げられないようにし

やっと1匹を捕まえた


手に乗せた魚が飛び出さないように、もう片方の手でしっかり蓋をして

ソーヤのところまで持って行き


「ごはん・・」


と言って口の前に持って行ったが

ソーヤは食べなかった


魔女はその時、すごく複雑な気持ちになったのを覚えている

魚さんが食べられなくて良かった・・

でも魚さんを食べないとソーヤが死んじゃう・・


魔女はそっと魚を川に返した


まだ小さな子供で、一緒の動物達よりずっとバカだった魔女は

好き勝手に森をうろつき、

ただ山を下って行きさえすれば家に帰れると思っていた

でも、どこをどう下っても、一向に家には辿り着きそうもなかった


さすがに魔女も少々不安な気持ちを抱き始めていた


すると、それまでは魔女の行く方に黙ってついて来たソーヤが

歩いている途中で、


「そっちじゃない」 


と言って、違う方角に歩き出しては振り返る、という行動をとり始めた


魔女にとって、ソーヤは森のお父さん

だから利口なソーヤの言う事を聞き、その後をついて歩いた


この後からは

魔女が不思議なキノコを見つけて駆け出したり

鳥の鳴き声を聞いてどんな鳥か確かめたくて

声のする方向に足を向けようとしたりする度に

ソーヤは吠えて魔女に注意を与え、先を急がせた


その度に魔女はひどく後ろ髪を引かれながらも・・

渋々ソーヤに従った


着ている服はとっくに汚れ、破けて、ボロボロになっていた

ずっと魔女と一緒なのに、なぜ動物達は汚れないんだろう・・

それをものすごく不思議に感じながら歩いた


遠くに稲妻が走った

魔女は見晴らしのいいところまで走って行って、稲妻を眺め始めた


ソーヤが吠えている・・


本気で叱られる前に戻らなきゃ・・



頑張ってソーヤの後に続き、森を下った

森の色が変わって来て、夕方に差しかっかったのを感じ後ろの空を振り返った


すると・・ そこに大きな虹が出ていた


「ざいほう、さがしにもどろうか!!」


ハックルとベリーとトムはその場でバッタリと横になった

大きな体のソーヤが上目づかいで魔女を睨んだ


「だめ? ぁ・・ だめなんだね・・ 」


魔女は何度も後ろを振り返りながら山を下った



いきなり前が開けて、崖に出た・・

崖ギリギリのところでソーヤが景色を眺めている


魔女はその姿を鮮明に覚えている

ソーヤは明らかに犬とは違って見えた

それは確かに狼の姿だった



魔女も崖の先まで走って、ソーヤと一緒にその風景を眺めた


少し目を落とすと・・

木々の間に、ぽつんと見覚えのある屋根が見えた


私たちの家の屋根だ



 続きます