この村に来たのはこの世界でいう西暦二千五年の夏だった。
俺は一人の男を探していた。
共に過した時間はほんの数年。
それでも、当時の俺には他の誰よりも信頼のおける友、唯一人の相棒だった。
あいつは、俺の…俺達の前から忽然と姿を消し、行方をくらませた。
それも、奴のもつ人間放れした奇妙な力を使って。
俺達人間にできる事なんざたかがしれていた。
それでも、俺達は探し続けた。
そう簡単に『消えた』事を許容できる相手じゃなかったからだ。
あいつは、俺達にとって、なくてはならない存在だった。
巫女や星読み、陰陽師の力を借りて探した。
しかし、俺達の住む世界、その時間の何処にもあいつの姿はなかった。
一年、二年と月日が流れ、仲間達は次第に諦め、探す事を忘れたいった。
それでも、俺は探し続けた。
そして、あいつが姿を消してから、約三年が過ぎようとした頃、漸く見つけた。
あいつは、時空を越えていた。
俺達の生きる時代から数百年未来、そして、俺達にとっての異世界である、此処、妖怪村にあいつは生きていた。
月に輝く銀糸の髪。
星をちりばめた様な青灰色の斑な瞳。
奴の名は、緋勇 蘭華。