ワンライUPの続きです。
「○○ちゃん、こんなところに呼び出しちゃって…どうしたんだろう?」
僕は○○ちゃんの会社の側までやって来ていた。
「そろそろ20時か…もう来る頃だよね」
実は今朝○○ちゃんが出勤したあと、ドアにメモが挟まっていた。
『今日20時○○で待ってます』
ただそれだけ書かれていて、名前も書かれてなかった。
(でも、あの字って絶対○○ちゃんの字だもん!)
僕は迷うことなく指定された場所に来た。
「でも、デートならデートって言ってくれたらいいのに」
こんな誘われ方もたまにはいいか、なんて思っていると知った声に話しかけられる。
「おい、未来!なんでお前がここにいるんだよ!?」
「あれ?ゆづくん!?僕は待ち合わせだけど…ゆづくんは仕事か何か?」
僕は普通に聞いたつもりだったのに…
「ま、待ち合わせって…○○とか?」
(ゆづくん、なん戸惑ってんの?)
「そうだけど?」
「そ、そっか…やっぱり未来も一緒か…」
最後のゆづくんの言葉は聞えなかったふりをする。
(やっぱり僕も一緒ってなに?)
(どうしてそんなこと、ゆづくんが言うわけ?)
「ゆづくんはどうしてここに?」
(こうなったらゆづくんがどうしてここにいるのか聞いてみよっと!)
「お、俺か!?俺はま、まあ…あれだ。俺も待ち合わせに決まってんじゃん!」
(げーのーじんがこんなとこで待ち合わせって…)
(嘘ってバレバレなんだけど)
「ふーん…そっか。ねえ、誰と待ち合わ…」
「おや、未来に悠月じゃないか?」
「あ、兄き!?」
(皐月さんまで…なんなの、一体!?)
「皐月さん、どうしたの?こんなところで」
「いや、私はここでちょっと待ち合わせを…」
(皐月さんまで待ち合わせって…)
「兄きもかよっ!?」
「『も』ってことは悠月も待ち合わせなのか?」
「ま、まあな…」
(本当に一体なんのいたずらなんだろう…)
「みんな揃って、珍しいね」
「ち、千早さん!?」
千早さんまでもが同じ場所に同じ時間に揃った。
「みんなで出かけるのかい?」
(もう、こうなったら…!)
「千早さんは誰かと待ち合わせ?」
「あ、ああ…そうなんだ」
(なに、これ!!)
(たぶんこうなると、また一人来るんだろうな)
みんなの顔を見ると、同じことを思っているようだ。
「次はノエルか?それとも遼一か?」
「……なに、俺のこと、呼んだ?」
「はっ!?お、お前!!背後から突然声出すなって!!」
「ああ…ごめん。みんなが楽しそうに集まってたから、つい」
(ついって…ノエル……)
(これは絶対ノエルも待ち合わせに違いないよ)
「ノエルも待ち合わせかい?」
千早さんが僕が聞きたかったことを聞く。
「うん。20時にここで待ち合わせ」
「ノエルもかよっ!?」
「それに、20時にここっていうのも、私と同じですね…」
「私と同じって、皐月さんも俺と同じ?もしかして千早さんも?」
「ああ、みんな同じみたいだね」
(ちょっと待ってよ!)
僕も20時に待ち合わせ、ゆづくんも他のみんなも同じ。
(それに…)
ゆづくんの言葉から考えれば、どうやら○○ちゃんが関係しているらしい。
「ねえ、みんなは誰と待ち合わせしてるの?」
「えっ!?」
みんなが一斉に言葉に詰まった。
(ふーん…僕には言えないってこと?)
(確実に○○ちゃんが関係してるってことだよね)
「なに?答えられない人と待ち合わせなんだ~?」
「そっか、じゃあ…どうして待ち合わせしてるの?」
「お、俺は美味いイチゴジャムの土産があるっていうから…」
「私は相談したいことがあると言われて」
「俺は最近疲れ気味だから、自分でできるマッサージを教えて欲しいと言われてね」
「俺は取材」
(っていうか、なに、それ!?)
(みんなして、僕に罰が悪そうに言っちゃって!)
(やっぱり○○ちゃんと待ち合わせしてるってこと?)
「ちょっと!みんな、どういうこと!?」
ワケがわからない僕がみんなに詰め寄ると
「あははははっ」
……笑い声が聞えた。
「面白いねえ」
「ちょ…っ!!遼くん!?」
「なんだよ。遼一も待ち合わせとか言わねーだろうな?」
「違う…とも言い切れないねえ」
遼くんはまだ笑いが止まらないのか、くくっと喉を鳴らして笑いながら答える。
「言い切れないってどういうこと!?ちゃんと説明してよね、遼くん!!」
僕は遼くんに詰め寄る。
「まあまあ、実はお前ら、ここに来たのはメモ受け取ったからだろ?」
「そうだけど?」
「ここに20時に来てって」
「ああ」
「悪いな。あれ、出したの俺だ」
「はあっ!?だってあれ、○○の字だったじゃねーかっ!?」
「ちょっと!ゆづくん!?やっぱり○○ちゃんと待ち合わせてるつもりだったんだ!?」
「あっ!!」
ゆづくんだけじゃなく、みんなの顔をみるとこれもまた、同じだった。
(やっぱりみんな○○ちゃんと約束してるつもりだったんだ)
(なんか怪しいと思ったんだ!)
「まあ、こいつらに怒んなさんなって。あれは○○に頼んで俺が書いてもらったもの」
「どういうことだ?遼一」
「次の話の中で、数人の男が一人の女と約束し、鉢合わせする場面があってな」
(……なに、嫌な予感しかしないんだけど)
「一人の女からそれぞれが名前も書いてないメモをもらい、同じ日・同じ場所・同じ時刻に待ち合わせをする。名前は書いてないが字で女が誰かはみんなわかってる。でも、メモには『絶対に誰にも言わないで』と書かれていたら…どんな反応をするかを見たかったってわけだ。で、○○にメモを書くのを手伝ってもらった」
「じゃあ遼くん、○○ちゃんは?」
「ああ、来ないな」
遼くんのその一言でみんなが文句を言い出す。
「ほんっと、信じらんねー!」
「なに、お前だって現に○○の字とイチゴジャムっていう物欲に惹かれて来たんじゃないの」
「そ、そうだけど…」
「それに、皐月さんの場合、強いて言えば『相談を受ける』っていうことによる『名誉欲』ってやつか」
「べ、別に私はそんな…」
「遼くん、今日のお返しはたっぷりとさせてもらうからね?」
「おー怖…未来は完全に『独占欲』ってやつだな」
「ふんっ!当たり前でしょ!○○ちゃんは僕のものなんだからっ!!」
「出たよ。未来の『○○ちゃんは僕のもの』発言…」
「もう、何とでも言ってて?僕、○○ちゃん迎えに行こうっと!!」
遼くんのいたずらのことなんて既に忘れたみたいに、みんなが後ろではやし立てていた。
(いいんだ、別に!だって○○ちゃんは誰がなんて言おうと僕のなんだから!)
突然遼くんがもたらした○○ちゃんのメモで、僕は独占欲を丸出しにさせられたんだ。