統合のプロセスのなかで

子供時代に子供を生きることができなかったという記憶に触れることがあります。


手がかからないことを家族の役割の中で求められたり、子供らしさ(泣くことやはしゃぐことなど)を許されなかったり、実際に大人びた子供(オールドソウル)であったり、その要因はさまざまです。


要因はなんであれ、子供時代に子供らしく振る舞えなかったこと、それは長きに渡り子供時代を奪われているということであり

自分の感情処理を独自のやり方で行なっています。寂しかったとき、不安になったとき、恥ずかしかったときに適切に寄り添ってもらえなければ、子供は子供のやり方でその痛みに対処するしかありません。


感情を感じないようにしてしまう癖はそのひとつで、それは辛いことだけを感じないようにするばかりでなく、嬉しいことや楽しいという気持ちであっても感じることを止めてしまうこともあります。それは目の前にある流れを堰き止め、私たちの人生に停滞をもたらす原因です。



私が考えるインナーチャイルドのケアは、子供の頃の辛かった出来事にフォーカスするだけでなく、それらしく生きることができなかった子供時代の自分にふたたび出会い、それぞれのなかにあるしなやかでみずみずしい子供(の感覚)を呼び覚ますことです。


長い間眠っていた内なる子供が目を覚ますと、人生の中にもそのしなやかさが取り戻され、踊るように跳ねるしぶきの中を軽快に進むときも、激しい濁流に飲み込まれたときも、「恐れる」という感覚から自由になり、気持ちが広く解き放たれて、この人生を進んでゆく勇気──子供の時のようなそれらしい独自の工夫とアイデアで切り開いていくような──が取り戻されていくようです。



私個人にとって、『わたしのワンピース』という絵本は、内なる子供と出会うそれです。久方ぶりに読んだ時、子供の頃感じていた感覚のまま何も変わることなく飛び込んできたことにびっくりしました。





幼稚園の絵本棚の前でこの絵本を読んでいた時と全く同じように、柄の変わってゆくワンピースにうっとりとし、その時周りではしゃいでいる幼児達の声までもが鮮明に甦り、その瞬間私はすみれ組の教室の中で一人絵本を眺める、結いた髪にピンク色のみずたまのリボンをつけた、ちいさな女の子でありました。