「赤瀬くん、ちょっと後でいいかな」
担任のりんちゃんに呼び出しをくらった
呼び出しをくらった理由はなんとなくわかっている
春休み、夏休み、冬休みがあるのになぜか秋休みがない
そんな社会にNOを叩きつけた俺は自主的に秋休みを作り、学校へ来たのは約10日ぶりのことだったからだ
放課後、先生との面談が始まる
「もうすぐ実習も始まるし赤瀬くんも頑張らんと!」
励ますようなりんちゃんスマイルと共に告げられる絶望を意味する言葉"実習"
理学療法の専門学校に行っていた俺へ襲いかかる初めての魔物だった
そんなこんなで励ましだけでなくこっぴどく怒られた1週間後、実習は始まった
実習といってもいきなり何かするわけではなく、バイザーの先生の臨床を見る"見学実習"と呼ばれるもので、基本的にはメモを取るだけだった
(はよ終わらんかな...)
突っ立って見ているだけ
このリハ室の時空は精神と時の部屋のように完全にねじ曲がっていた
3日目の最終日には視覚まで狂わされ、車椅子のホイールが1筒に見えていた
最終日の夕方17時、長かった実習もついに終了の時がきた
しかし、なかなか先生の仕事は終わらなかった
定時から30分オーバー
ようやく患者さんへのリハビリが終わったかと思ったら
「金本さんと坂田さん、今日まだみてないから行ってくる。赤瀬くんはもうあがっていいよ3日間おつかれさま」
と、まだ先生の残業は終わらないらしい
普通なら貴重な実習の場
自分も一緒に残るところだが、俺は「ありがとうございました。お疲れ様です」と逃げるように病院を後にした
バイザーの先生に聞いたところ、残業代はあんまりでないらしい
まさに聖人と呼べるおこないだ
しかし、それとは真逆の世界の空気を一刻もはやく吸いたがっている俺には「理学療法でやっていくのは無理だな」と悟っていた
実習から少し経って報告会がおこなわれる
さくっと始めの方に終わらした俺は、今夜の戦いに向けしっかりと睡眠をとった
周りがざわつき始め目を覚ますと、報告会は終わっており、冬休みがスタートしていた
さっそくバイト先に向かい「将来どうすっかなー」と牌と会話したものの返事はこない
まさか4年後の今も社会にNOを叩きつけているなんてこの頃は思ってもみなかった