【水素大辞典】水素が脳を護る：水素ガス吸入療法

こんにちは。

朝比奈です。

本年3月に、慶應義塾大学医学部と東京医科歯科大学から

「水素吸入療法が院外心停止患者の救命および予後の改善に効果

－全国の救急医療機関で実施した臨床試験結果報告－」がでました。

水素吸入療法が院外心停止患者の救命および予後の改善に効果－全国の救急医療機関で実施した臨床試験結果報告－：[慶應義塾]2023/03/22慶應義塾大学医学部東京歯科大学東京歯科大学の鈴木昌教授（慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授）と慶應義塾大学医学部救急医学教室の本間康一郎専任講師、同内科学教室

www.keio.ac.jp

これは、水素ガス吸入療法の今後について

大きな期待を感じさせてくれる内容です。

■2016年　水素ガス吸入療法が先端医療Bに

2016年11月に、「水素ガス吸入療法」が

厚生労働省の「先進医療B」として承認され、

画期的な治療法として注目を浴びました。

「先進医療」とは日々研究されている

高度の医療技術を用いた治療法や医療技術のうち、
公的医療保険の対象にはまだなっていないものの、
有効性や安全性について一定の基準を満たし
厚生労働大臣の承認を受けたものを言い、

評価の結果によって有効性や安全性が十分に確認されると

先進医療から公的医療保険の対象となる

保険診療に切り替えられたりします。

■「水素ガス吸入療法」とは？

水素ガス吸入療法の先進医療への承認の中心的役割を担ったのは

慶応義塾大学先導研究センター水素ガス治療開発センターです。

この治療法は

心肺停止後の蘇生後に患者に水素ガス吸入を行い命を護るとともに、
脳機能を護り、それによって社会復帰を目指す治療法です。

慶応義塾大学病院のHPには以下のようにあります。

　今回、水素吸入療法を行うのは、

　心停止後症候群と言われる状態を対象にしています。

　心停止後症候群とは、病院の外で、
　突然に心停止（心室細動と呼ばれるような不整脈が

　突然発生することによっておこります）になり、
　救急蘇生術によって心臓の鼓動が再開したけれども、
　脳をはじめとした臓器の機能が損なわれた状態です。

　心停止後症候群になると、一部は、
　完全に回復して後遺症をほとんど残さずに社会復帰を果たされますが、
　高度の障害が残って、寝たきりの状態や、

　いわゆる植物状態のような状態になられることがあります。

　水素ガスは体内で様々な有害物質を

　無毒化できるのではないかと期待されています。
　今回の心停止後症候群では、主に脳の機能に焦点を当てて、
　心停止になった時の脳の酸素不足のダメージを
　水素によって軽減しようとするものです。

　これによって、心停止後症候群から回復して
　社会復帰を果たす方が増えることを期待しています。

　また、水素吸入療法は世界初の治療法です。
　この技術が確立されれば、
　心停止後症候群以外の病状にも応用が容易になります。

　水素吸入自体には、大掛かりな装置は不要ですので、
　簡便に効果的な治療が行えるようになります。
　まさに画期的な治療です。

2018年8月に放送された
ＢＳプレミアム「研究最前線！噂の水素水」でも紹介されています。

番組の中のコメントでこんな説明がされています。
分かりやすいですね。

「いったん脳に酸素が行かない状態があって、
　心臓が動き出すコトで再び酸素が脳に運ばれる。
　そうすると活性酸素がそこで生じる。

　その活性酸素が脳にダメージを与えているというふうに言われております。
　水素ガスは、悪玉の活性酸素を選択的に除去する力がありますので、
　そういったところが効果を示しているのではないかというふうに考えています。」
　（慶應義塾大学病院診療科副部長　本間康一郎さん）

「水素って基本的には生体の中に入っても無害なんですね。
　これまでの臨床試験の結果とか、
　動物実験のデータももちろんそうですけども、
　全く害というものが出てこないですね。」
（慶應義塾大学教授　佐々木淳一さん）

・・・

■2023年3月の臨床試験結果報告

先進医療Bの承認から7年、本研究は

新型コロナウイルス感染症で救急医療がひっ迫したために

やむを得ず早期に終了することとなり

現在は、先進医療Bから取り下げになっています。

しかしながら、実際の症例の中からは、

今回のプレスリリースにありますように

以下のようなことが示されています。

おりからの新型コロナウイルス感染症のため、救急医療はひっ迫し、

やむを得ず研究は早期に終了しましたので、目標症例数には到達せずに水素吸入療法が有効か否かをはっきりと示すには至りませんでしたが、

驚くべきことに、90日後の生存率は、従来の治療で61％なのに対し、水素吸入療法により85％に上昇、また、後遺症なく回復した人の割合も21％から46％に上昇することが統計学的に確かめられました。

水素は人体に害がないとされており、この臨床試験でも水素が原因と考えられるような副作用は観察されませんでした。実用化すれば多くの患者を救命できると考えられます。

水素吸入療法が院外心停止患者の救命および予後の改善に効果－全国の救急医療機関で実施した臨床試験結果報告－より引用

90日後の生存率が

従来の治療で６１％なのに対して

水素吸入療法により８５％に上昇、

また、

後遺症なく回復した人の割合も

２１％から４６％に上昇することが

統計学的に確かめられた、との結果でした。

これらの研究成果を踏まえて

また更なる発見がでてきそうですね。

・参考

「水素吸入療法が院外心停止患者の救命および予後の改善に効果－全国の救急医療機関で実施した臨床試験結果報告－」