薔薇の香り~君の心に触れたくて~第3章・復讐の香り(7)~ | Someday, Somewhere

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J(ジェジュン)は、ユンホの家のキッチンに立っていた。

ユンホは、腕を枕にしてソファーに横になり、時々Jの方を見ている。



少し前―

「離せよ。帰るから・・・・。」

Jはユンホの腕から抜け出そうとした。

ユンホがどう言うつもりであんなことを言ったのかわからないが、胸の苦しさが増す前に

楽になりたかった。


「今日は休日だろう。ゆっくりすればいいじゃないか。」

「誰かさんと違って忙しいんだ。」

「じゃあ、Jの名前を教えてくれたら離すよ。」

「・・・。」

「どうして黙っているんだ。それとも・・・」


突然、ユンホがJを組み敷いた。

「・・・営業妨害だ。秘密にしておくことが大事なんだから・・・。」


「くっくっくっ」

突然、ユンホが笑い出し、Jの上から離れ肩肘を着き頭を乗せる。

それでも片手はJの胸の上に置いたままだった。Jは何がおかしいのかよくわからないが、笑われていい気はしなかった。


「わかったよ。そんなに怖い顔するなよ。でもいつか聞き出してみせる。」

ユンホの腕が緩だ瞬間に、Jは体を起こした。


「世話になった。帰るよ。」

「それだけ?」

「えっ?」

「あんなに迷惑をかけたのにそれだけ?薄情過ぎないか?」


「ユンホもいい思いをしたんだからいいだろう。」

Jはついつい本音を漏らし、ユンホはJの一言にバツが悪そうに口ごもった。Jにされたことを思い出すと

顔が火照る。


「じゃあ、朝食を作ってよ。料理は得意なんだろう。」

「どうして知っているの?」

「この前、ユチョンが話していただろう。」

「ああ、・・・あれね。」



ユンホに強請られ、Jキッチンに立っていた。

冷蔵庫には定期的にやってくるお手伝いさんが、一昨日、補充したという十分過ぎる食材が入っていた。

しかもどれもこれもJが普段使っているものと比べて上質のものばかりだった。


「ユンホは料理するの?」

キッチンに立つJが尋ねる。

「しない。してもラーメンとか目玉焼とか、その程度かな・・・。」

「じゃあ、この食材は無駄になるだろう。」

「そういうこともあるかもな。要るものがあればもって帰っていいよ。」


30分もすれば、コーヒーのいい匂いがしてコーンスープやサラダ、オムレツ、ボイルしたソーセージ、

フルーツのヨーグルト和えがテーブルに並んだ。


「どうぞ、できたよ。」

ユンホは顔を洗ってテーブルにつき、1人分しか並んでいない食事を見て「Jは食べないのか」と尋ねた。


「俺はフルーツを摘まんだから、コーヒーだけでいい。」

Jはユンホを残しカップを持ったままベランダに出た。

なんだか2人で食事をするのは、幸せなカップルみたいで嫌だっだ。



―ユンホはこれからどうするだろう。

 俺に、独占欲みたいなものを見せておきながら、意外と簡単にJに落ちるんだから・・。 

 多情だな・・・。ジェジュンとしての俺も誘惑したら、ユンホはどちらに傾くのだろう。

 それとも同じ人だって気づくだろうか。でももう少しの間、気づかれる訳にはいかない。



「J・・・」

名前を呼ばれ振り向くと、ユンホが立っていた。

「あっ、呼んだ?」

「どうした?何度も呼んだのに返事をしないから・・・。考え事でもしていたのか?」

「気持ちがいいからぼーっとしていた。」

ユンホはJに並んで立った。


「朝食、旨かったよ。」

「そう。」

「あのさ・・・、また会いたいんだけど・・・。」

「店に来たらいいだろう。」

「そういうことじゃなくて・・・。店以外の場所でまた会いたいんだ。」

「何のために?」


ユンホはそんな風尋ねられると思っていなかったから面喰ってしまい、言葉がすぐに出で来なかった。

「何のためにって・・・・言われると・・・。」

「そんなに良かった?」

Jは涼しい顔をしている。


―良かったと言われれば良かった。・・・のだと思う。でも、それは関係ない。

いや、それが全てという訳じゃない。多分、2人で過ごす、こういう何でもない時間が心地良いのだと   思う。―


ユンホの心の中を察したように、Jがふわっと笑い、ひとさし指でユンホの胸をグリグリと押す。

「ユンホっておもしろいね。からかっただけだよ。真面目に悩むなよ。」


ユンホはJの指を掴むと、真面目な顔で見つめた。

「良かった・・・って言えば、また会ってくれるのか?」

ユンホの思い詰めたような表情は、Jにとって好都合でもあり、重くもあった。


「気が向いたら店に寄って・・・。」

ユンホの手の中からJの指がするりと抜けた。リビングへ入っていくJの背中に、ユンホは問いかけた。


「連絡先は?連絡先は教えてくれないのか?」

「今はね、まだ秘密。」


昨晩、ユンホはJを捕まえたと思った。Jが自分に心を許してくれた上での行為だと思っていた。

それなのに、Jはまた近寄っては離れていく。


―Jにとってはあんなことは大したことではなかったのだろうか?俺はからかわれたのだろうか、一夜の 遊びだったのだろうか?いや、それならそうはっきり言うだろう。でもJは拒絶もしていない。―


考えを巡らせながらリビングへ入ると、テーブルの上は片づけられ、Jは上着を羽織っていた。

「じゃあ、帰るよ。」

「ああ・・・。」

「いろいろありがとう。」


Jが束の間、チュッと音を立てユンホの頬に唇を寄せて部屋を出て行った。

そんなJの行動に、ユンホの思考は迷路に入ったかのようにグルグルと回っていた。



<お詫びほか>

いつも読んでいただきコメントありがとうございます。

コメントに返すと何気に話の展開をお伝えすることになり、どう返していいか困る場合もあり、

第3章に関しましては私からの返信はお休みさせていただきます。

申し訳ないですが、ご理解ください。

これからもジェジュンたちを見守り、受け入れていただけると嬉しいです。