『地方創生関係予算について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第40回

 3月16日からようやく参議院で予算審議が始まりました。安倍晋三首相は、地方創生に関し、「『霞が関発』ではなく、『地方発』の地方創生を進めていかなければならない」と強調し、「各地域が知恵を絞り、実効性のある地方版総合戦略を策定、実施してもらうことで若者が将来に夢や希望を持てる個性豊かな地方を創生してもらいたい」と述べ、地域の自主的な取組を促しています。

 地方創生に関する予算は多くの省庁で計上されていますが、政策は石破地方創生担当大臣の下で一元的に調整されることになっています。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局によると、H27年度当初予算におけるまち・ひと・しごと創生関連事業の予算総額は約7,225億円に上りますが、まずH26補正予算から説明します。

● 地方創生に関する政策 5つの原則

 H26補正では新しく「地域住民生活等緊急支援のための交付金」4,200億円が確保されました。この新交付金は、地域消費喚起・生活支援型(2,500億円)と地方創生先行型(1,700億円)の2つのタイプがあり、自治体からの申請に基づき、3月中に支給される予定です。
 各々について具体例等を説明する前に、地方創生施策に関して国が定める5原則を以下に確認しておきます。

(1) 自立性(自立を支援する施策)
地方・地域・企業・個人の自立に資するものであること。この中で、外部人材の活用や人づくりにつながる施策を優先課題とする

(2) 将来性(夢を持つ前向きな施策)
地方が主体となり行う、夢を持つ前向きな取組に対する支援に重点をおくこと

(3) 地域性(地域の実情等を踏まえた施策)
国の施策の「縦割り」を排除し、客観的なデータにより各地域の実情や将来性を十分に踏まえた、持続可能な施策を支援するものであること

(4) 直接性(直接の支援効果のある施策)
ひと・しごとの移転・創出を図り、これを支えるまちづくりを直接的に支援するものであること

(5) 結果重視(結果を追求する施策)
プロセスよりも結果を重視する支援であること。このため、目指すべき成果が具体的に想定され、検証等がなされるものであること

 なお、地方創生を本格的に推進するため、政府内で体制強化が1月20日に図られ、各地方自治体が作成する地方版総合戦略をワンストップで支援する体制が整備されています。

*内閣官房「まち・ひと・しごと創生本部事務局」は、地方創生に関する政府の司令塔とする。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」のフォローアップ・深化等を担当。新たに地方創生総括官等を設置。

*内閣府「地域活性化推進室」を「地方創生推進室」に改組する。現行の地域活性化の事務(特区計画の認定、補助金の交付等)に加え、①地域住民生活等緊急支援交付金の交付、②人的支援(地方創生人材派遣制度、地方創生コンシェルジュ)等を担当。また、地方版総合戦略等の相談体制(ブロック別の担当制)を新設。

● 地域消費喚起・生活支援型交付金(2,500億円)の概要

 地域の消費喚起など景気の脆弱な部分にスピード感をもって的を絞った対応をすることを目的に、①地方公共団体(都道府県及び市町村)が実施する、②地域における消費喚起策やこれに直接効果を有する生活支援策に対し、国が支援するものです。

 対象事業の例は以下のとおりで、上述した内閣府「地方創生推進室」は、「実施計画」の策定(適切な客観的指標の設定を含む)から実施までを支援する、相談体制を整えています。

*プレミアム付商品券(域内消費)(例:商工会議所などが発行する商品券に一定額を上乗せする)
*ふるさと名物商品券・旅行券(域外消費)
*低所得者等向け灯油等購入助成
*低所得者等向け商品・サービス購入券
*多子世帯支援策(例:第3子以降の保育料の無償化)


 交付は(a) 都道府県と市町村の配分比を4:6(1,000億円:1,500億円)とし、(b) 人口、財政力指数、消費水準等、寒冷地 などの諸点を踏まえる、という考え方で、前述したとおり、3月末までに配分されます。

 申請は3月6日に締め切られましたが、申請の多くはプレミアム付商品券の発行事業のようです。鳥取県は「とっとりふるさと旅行券(仮称)」という県内の宿泊施設で使えるプレミアム付旅行券を4月1日から全国の大手コンビニ約4万9,000店舗で発売します(3月11日、日本海新聞)。額面総額で1億4,000万円分が発行される予定です。利用者は1枚につき額面1万円の旅行券を5,000円で購入し、1泊につき1人2枚(額面2万円)まで利用できます。

● 地方創生先行型交付金(1,700億円)の概要

 しごとづくりなど地方が直面する構造的な課題への実効ある取組を通じて地方の活性化を促すことを目的に、①地方公共団体(都道府県及び市町村)による、②地方版総合戦略の早期かつ有効な策定と、これに関する優良施策等の実施に対し、国が支援するものです。

 対象事業は、地方版総合戦略の策定及び総合戦略における「しごとづくりなど」の事業で、メニュー例は以下のとおりです。

*「地方版総合戦略」の策定(必須)
*UIJターン助成
*地域しごと支援事業等
*創業支援・販路開拓
*観光振興・対内直接投資
*多世代交流・多機能型ワンストップ拠点(小さな拠点)
*少子化対策(地域消費喚起型対応等を除く)


 1,700億円は、基礎交付1,400億円と上乗せ交付300億円に分けられ、基礎交付分は次のような考え方で3月末までに配分されますが、前述の地域消費喚起・生活支援型の配分方法とは異なり、人口規模の小さな団体や人口動態指標等の悪い地域ほど手厚くされます。

(a) 配分比は、都道府県4:市町村6 即ち、560億円:840億円とする
(b) 地方版総合戦略策定経費相当分として、1都道府県2,000万円、1市町村1,000万円は確保する
(c) 以下の点を踏まえて、配分に配慮する
i. 人口を基本としつつ、小規模団体ほど割増す
ii. 財政力指数
iii. 就業(就業率)、人口流出(純転出者数人口比率)、少子化(年少者人口比率)の状況に配慮(つまり、現状の指標が悪い地域に配慮)


 一方、上乗せ交付分の300億円は当面、内閣府地域創生推進室に留保され、「しごとづくりなど」の事業のうち、非常にユニークで先駆的なもの(例えば、市町村の広域連携的な観光振興、あるいは小さな拠点事業)に対して、重点的に投入される予定です。地域創生推進室は、そうした事業が成功モデルとなり、全国的に普及することを期待しているのです。なお、“ユニークで先駆的な事業”というのは奇抜な発想に基づくものという意味ではなく、前述した「地方創生に関する政策を検討するに当たっての5つの原則」からみて“十分に考え抜かれた”事業ということです。

 また、地方公共団体の中にはいち早く地方版総合戦略の策定準備に取り掛かり、今夏までに策定完了するところもあると聞いています。そうした地方公共団体がH27年度中に着手する事業に必要な資金も上乗せの交付金から手当てされる予定です。

● 地方創生コンシェルジュ制度と地方創生人材支援制度

 次に人的な支援の仕組みについて説明します。一つ目は、「地方創生コンシェルジュ」という国が相談窓口を設けて、地方公共団体の地方版総合戦略づくりや地域の具体的な取組みを実施する際の相談に“親身に”当たる、という仕組みです。2月27日に立ち上げられ、現在、担当する地方公共団体の地元や東京事務所との顔合わせ等が進められています。

 この仕組みが一般的な相談窓口と異なる点は、①地方の地元出身者や赴任経験者など当該地域に愛着のある国の職員が、②自発的に手を挙げた人を中心に17府省庁総勢871名が選任されたことです。この仕組みは、当該地域とのゆかりや想いといった属人的かつ情緒的な関係があれば、コンシェルジュは地方公共団体に必要な情報や知見等を的確に提供できるとの想いが込められています。各々の地方公共団体としては、コンシェルジュに向けていかに地元の熱意や課題を伝え、共感とやる気を高めてもらうか、が重要になります。

 もう一つの仕組みは、地方創生人材支援制度です。地方創生の主役はあくまで地方公共団体であり、地方版総合戦略の策定や地域の具体的な施策を推進するのは地方であって、国は伴走者として支援する立場にあります。しかし、これまで国からの施策を受動的に遂行してきた市町村、とくに人口規模の小さな市町村、にとっては、急に地方版総合戦略を自立的に作れと言われても、そうした経験がなく、困惑するばかりかもしれません。そこで、地方創生に関し意欲と能力のあるプロを首長の補佐役として派遣し、地域に応じた「処方せんづくり」を支援する制度が新設されました。これが「地方創生人材支援制度」、別名「補佐役派遣制度」です。

 この制度の画期的なところは、①これまで国と人事交流のなかった小さな市町村を対象に、②地方創生に関するプロを首長の補佐役として派遣し、③地方版総合戦略の策定や地域に応じた施策の推進を通じて、職員全体の能力底上げを図ろうとしている点です。

 派遣対象の市町村は、首長が地方創生に関し明確な考えを持ち、派遣される人材を地域の変革に活用する意欲を持っている等、地方創生に積極的に取り組む市町村で、原則人口5万人以下の市町村です。すでに40道府県の144市町村から応募があり、鳥取県では八頭町、湯梨浜町、日南町、日野町から応募がありました。

 一方、派遣される人材は、地方創生の取組みに強い意欲を持つ、総合戦略の策定や地域政策に詳しい国家公務員(経験が原則5年以上15年未満)及び大学研究者や民間人材です。昨年12月から今年1月にかけて公募されました。派遣者の審査、派遣先市町村とのマッチングの結果、国家公務員42人、大学研究者15人、民間人材12人の合計69人が、①副市町村長、幹部職員(常勤職)又は②顧問、参与等(非常勤特別職)として、4月から派遣されます。派遣期間は原則2年間です。

 なお、この制度は当面、地方版総合戦略の計画期間を考慮し、H27~31年度の5年間の制度とされています。

● H27年度当初予算の概要

 最後に、H27年度当初予算に計上されている地方創生関連予算を説明します。冒頭で述べたとおり、地方創生関連予算は総額約7,225億円に上りますが、政策目的別の内訳は以下のとおりで、多くの省庁で計上され、既存事業も当然含まれています。

① 地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする 1,744.4億円(100億円超の事業)
・地域人材育成の強化 103.2億円(厚労省)
・新規就農・経営継承総合支援事業 194.8億円(農水省)
・革新的ものづくり産業創出連携促進事業 128.7億円(経産省)
・公共施設への再生可能エネルギー・先進的設備等導入推進事業190.0億円(環境省)

② 地方への新しいひとの流れをつくる 643.9億円(50億円超の事業)
・沖縄科学技術大学院大学(沖縄振興策) 167.3億円(内閣府)
・人口減少の克服にむけた私立大学等の教育研究基盤強化 257.5億円(文科省)
・農山漁村活性化プロジェクト支援交付金 61.5億円(農水省)

③ 若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる 1,096.0億円(100億円超の事業)
・幼稚園、保育所等の利用者負担の軽減 323.4億円(文科省)
・総合的かつ体系的な若者雇用対策の充実 221.5億円(厚労省)
・非正規雇用労働者の雇用の安定と処遇の改善 311.9億円(厚労省)
・待機児童解消加速化プランの更なる推進 124.3億円(厚労省)

④ 時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する 3,740.7億円※うち、沖縄振興策1,826.7億円(沖縄振興策を除く、100億円超の事業)
・地域再生基盤強化交付金 430.7億円(内閣府)
・地域公共交通確保維持改善事業 290.1億円(国交省)
・地域居住機能再生推進事業 195.0億円(国交省)
・スマートウェルネス住宅等推進事業 320.0億円(国交省)

 内閣府地方創生推進室には「地域再生戦略交付金」70億円が確保されています。この交付金は、予算規模は小さいですが、既存の補助金等の支援制度の“すき間”を埋めて、効果を高める、いわば触媒の役割を果たします。

 また、各省庁の事業を詳しくみると、地域再生戦略交付金を補完するようなソフトな予算が以下のとおりあり、地方公共団体がその予算を使いながら、他省庁の重複しそうな事業も効果的に利用することが期待されます。

① 地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする(雇用創出支援策)
*地域しごと創生プラン 94.0億円(厚労省)
*ふるさと名物応援事業 16.0億円(経産省)
*小規模事業者等人材・支援人材育成事業 4.5億円(経産省)
*広域観光周遊ルート形成促進事業 3.0億円(国交省)
*地域資源を活用した観光地魅力創造事業 2.9億円(国交省)

② 地方への新しいひとの流れをつくる(ヒト流入支援策)
*地域おこし協力隊の拡充による地域への人材環流の促進   0.9億円(総務省)
*良質なテレワークの推進 11.3億円(厚労省)
*テレワークの推進による多様な働き方の実現 0.5億円(国交省)
*都市農村共生・対流総合対策 27.5億円(農水省)

③ 若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる(出産・子育て支援策)
*放課後子供教室の推進 38.1億円(文科省)
*妊娠・出産包括支援事業の展開 17.3億円(厚労省)

④ 時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する(コンパクトシティ及び地域間連携の支援策)
*集落ネットワーク圏の形成 4.0億円(総務省)
*連携中枢都市圏の形成等 2.0億円(総務省)
*まちプロデュース活動支援事業 1.6億円(経産省)
*コンパクトシティ形成支援事業 2.6億円(国交省)
*「小さな拠点」を核とした「ふるさと集落生活圏」の形成推進 2.7億円(国交省)

 もっとも、各省庁のよく似た予算を効果的に使い回すには、地方の現場に根ざした考え方(基本方針)をしっかりと確立する必要があります。地方版総合戦略の策定は、地方公共団体にとって、足下を見直し基本方針を全員で再確認する絶好の機会です。一旦基本方針が定まると、地方創生コンシェルジュもそれに応じて頼もしい相談相手になるでしょう。

 地方創生は一朝一夕に実現するものではありません。このままでは2060年に人口が8,600万人に減少するところを、1億人程度の人口を維持していくという壮大な挑戦です。5年、10年腰を据えて、粘り強く取り組んでいく必要があると思います。私も鳥取県をはじめとする多くの地域で人口減少問題に歯止めがかかり、若者が将来に夢や希望を持てる個性豊かな地方創生が実現していけるよう全力で取り組んでまいります。