『外国人技能実習制度の見直しについて』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第20回

 昨年12月20日、千葉市にイオンモール幕張新都心が開業しました。3,000名余りのパート従業員がなかなか集まらず、相場より高い時給で募集を強化した結果、周辺地域のスーパーやコンビニで働いていたアルバイトやパートが辞めてきて、ようやく人数が揃ったとのことです。そして、従業員に辞められたスーパーやコンビニは、相場よりも50円あるいは100円高い時給でスタッフ募集をせざるを得なくなったそうです。こうした時給の上昇と労働力の移動の玉突き現象が、首都圏で広がっています。

 全国的にみても、土木建築業をはじめ、医療・介護、保育、製造業、そして、一次産業でも人手不足が問題化しつつあります。こうした中、6月下旬の政府の『日本成長戦略』の改訂にむけて、外国人労働者の受入れや外国人技能実習制度の見直しをめぐり、様々な角度から検討が行われています。

今回は、外国人技能実習制度(以下、「実習制度」という。)の現状及び制度の見直しに向けた取組状況について説明します。

● 実習制度の概要

 実習制度は、「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力すること」を目的として、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づく制度として、平成5年に創設されました。

技能等の移転による「人づくり」を通じ、途上国の経済発展に貢献することが目的であるため、途上国のニーズに合った実践的な習得プログラムが必要となりますが、概要は以下のとおりです。

① 職種・作業が具体的に特定(68職種126作業)されている
② 受入れ企業で講習(座学、原則2ヶ月間)と雇用関係の下での実習(10ヶ月~2年10ヶ月間)が行われる
③ 実習生は、1年目に所定の技能評価試験(技能検定基礎2級)を合格しなければならず、3年目にはさらに上級の技能検定資格の取得が奨励される
④ 3年間の実習終了後、ただちに帰国しなければならない
このほか、入管法上、実習生は家族の帯同を認められず、再入国も認められないことに留意する必要があります。

● 実習制度の現状

 それでは、実習制度の現状はどうでしょうか。

法務省によると、H24年末の技能実習生の人数は約15万1,000人で、出身国別では中国(7割強)、ベトナム(1割強)、インドネシア、フィリピン(各々約6%)、タイ(約2%)等です。新規の受入れ人数はH19~20年のピーク時、年間10万人を越えましたが、東日本大震災の影響や経済情勢の悪化等により減少し、最近は約6万8,000人にとどまっています。

 全体で68ある職種のうち、受入れ人数の多い職種は、機械・金属関係と繊維・衣服関係で、各々1万余人を受け入れています(H24年度、公財・国際研修協力機構(JITCO)データ)。次いで、食品製造関係と農業関係が続きます。漁業関係の受入れは600人足らずの状況です。

 また、受入れ企業の規模(従業員ベース)をみると、300人以上の中堅企業は約2%、100~300人未満の中小企業は約7%しかなく、9割以上は100人未満の小規模事業者です(H24年度、JITCOデータ)。なかでも、従業員規模10人未満の零細企業が全体の5割を占めます。

 こうしてみると、技能移転は、零細企業の現場でOJTを通じて習得されている実情が見えてきます。そして、実習生受入れにより、企業としては死活的に必要な人手の確保(しかも、若い)と、低廉な実習手当の負担という“実益”を享受しています。

● 農業や水産加工業での受入れ状況

 農業分野や水産加工業での実習生受入れ状況はどうでしょうか。

農林水産省によると、H23年度の新規受入れ人数は約1万人で、実習生の在留人数は約2万人です。受入れ地域でみると、関東や九州、北海道が多く、県別では茨城県が2千人を超えてダントツのトップの状況です。次いで長野県(約1,500人)、北海道、熊本県となっています。

私の地元の鳥取県の受入れ人数は19人です。ハウスでの野菜栽培・収穫作業や露地のレタス等の収穫作業に若い実習生の労働力が期待されているようです。

 一方、水産加工業での実習生受入れ人数は毎年5千人程度で、H23年度の在留人数は概ね1万5,000人と推測されます。我が国の水産加工業の従業員数(常勤)は約15万人ですから、実習生は同産業の労働力の約1割を支える貴重な存在となっています。受入れ企業の多くは北海道や東北の漁港隣接地域にある零細企業であるため、日本人の若年労働者の採用は望めず、若い実習生は高齢従業員のなかで、事実上工場操業に欠かせぬ労働力となっているのが実情のようです。

 ところで、実習制度の見直し状況や見通しを説明する前に、外国人労働者の受入れ問題について少し説明します。「外国人実習生」と「外国人労働者」とでは、言葉のうえで大して違いがないように思えますが、政策の考え方では非常に大きな違いがあることに留意が必要です。

● 外国人の受入れ問題

 現在、外国人労働者の受入れについて、政府は専門的、技術的分野の外国人は、我が国の経済社会の活性化に資するという観点から、積極的に受け入れることとしています。つまり、我が国にメリットが期待できる高度な人材は歓迎するという姿勢です。途上国への貢献という相手国側を配慮した実習制度の考え方とは発想がまったく違うことに注意が必要です。

 他方、専門的、技術的分野以外の受入れ範囲の拡大については、政府全体で検討していく必要がある、と慎重な姿勢です。というのは、受入れ範囲の拡大は、我が国の産業だけでなく、治安や労働市場への影響など、国民生活全体に関する問題だからです。政府は、様々な分野における影響を総合的に検討し、国民的コンセンサスを考えつつ、適切に判断する必要があるのです。つまり、実習生の場合、生活の場は母国であり、日本は技能習得の場ですが、外国人労働者の場合は、生活そのものを日本社会に移すことになるので、国民生活全体への影響を慎重に検討する必要があるのです。

 それでは、最後に技能実習制度の見直し状況について説明します。

● 実習制度の見直し状況

 技能実習制度については、昨年11月から、法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会の分科会において、制度の見直しが検討されています。

農業生産法人をはじめ受入れ企業等の現場からは、①在留期間に制限があるため、技術や技能を習得しても継続して雇用できない、②出入国を繰り返し行うことができないので、農繁期等の限定雇用など、柔軟な活用ができない、との指摘のほか、③受入れ人数枠の拡大(現状:従業員50人以下は3人まで)、④対象職種の追加(介護等)、⑤東京五輪等に向けた労働力不足への対応、といった要望があがっています。

分科会では、実習生の不適正な受入れ防止や制度の適正化措置の導入とセットで、例えば、優良な受け入れ先については実習期間を延長(3年⇒5年)することや、再技能実習を認める、といったようなことも検討されています。

今後、6月中に予定される政府による成長戦略の改訂にむけて、分科会において一定の方向性が示される予定です。

私は、外国人実習生を地域で責任をもって受け入れる体制ができていて、かつ、実習生を必要としているところには、柔軟に対応してもよいと思います。            

それにより、例えば農業分野でいえば、日本型農業の経営ノウハウが移転でき、農業生産法人の生産も拡大し、生産性が向上すれば、日本にとっても、途上国にとってもいいことだと思うのです。現行の実習制度が、実習生を必要とする地域の皆さんにとって、一歩でも二歩でも利用しやすい制度になるよう、6月の成長戦略に期待するとともに、引き続き、より良い制度の構築に向けて取り組んでいきたいと思います。