『農林水産予算のポイント(その2)』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』 第4回

●農地中間管理機構(いわゆる農地バンク)の新規設立に伴う予算措置

前回、農業における産業政策の重要なポイントとして、農地の集積・集約化の推進を挙げました。
農地の集積・集約化は、細分化され散在する農地を担い手のもとにまとめ、大規模な区画整理等を通じて生産コストを効率化し、農業の生産性や競争力を高めるものです。また、海外への農産物輸出を増加させていく観点からも重要です。

農地の集約化については、以前から「農地保有合理化法人」を中心に進めてきたところですが、
①売買中心で、出し手・受け手・合理化法人とも消極的であったこと
②出し手・受け手の個々の相対協議が前提のため、地域全体で農地の流動化を進めようという機運が十分にできなかったこと
③国の財政支援が不十分であったこと
等から実績は低調でした。

この点、平成24年度から開始した各市町村における「人・農地プラン(地域の農業者の徹底した話合いにより、担い手や農地集約等の人・農地問題の解決方向や地域農業の将来のあり方を明確にしていくもの)」の作成過程等において、「信頼できる農地の中間的受け皿があると、人・農地問題の解決を進めやすくなる」等の現場の農業関係者のご意見を踏まえて整備することにしたのが、今回の農地中間管理機構です。

農地中間管理機構は都道府県ごとに一の機構を設け、
①地域内の分散し錯綜した農地利用を整理し担い手ごとに集約化する必要がある場合や耕作放棄地等について、機構が借受け
②機構は、必要な場合には基盤整備等の条件整備を行い、担い手(農協や生産法人等の法人経営・大規模家族経営・集落営農・企業)がまとまりのある形で農地を利用できるよう配慮して、機構から貸付け
③機構は、借受けた農地について、貸付けるまでの間、農地として管理
④機構は、業務の一部を市町村等に委託し、機構を中心とする農業関係者の総力で農地集積・耕作放棄地解消を推進することとされています。

10年後に目指す姿として平成25年6月に閣議決定された「日本再興戦略」では、前回触れた担い手の問題について、新規就農し定着する農業者を倍増し、40代以下の農業従事者を40万人(現状20万人)にすることのほか、担い手が利用する農地面積を全農地の8割(現状5割)に拡大し、法人経営体を5万法人(現状1.25万法人)に拡大することが目標に掲げられ、これらを達成するためにも、今回の中間管理機構による新制度をいかに円滑に運用させていくかは大変重要な問題です。
この点、農地の集積・集約化を進めていく上で、機構の十分な体制整備のほか、関係者による地域の話合いや農地の出し手及び受け手の双方にメリットがある仕組みの構築に配意が必要です。
現状としては、農地中間管理機構関連予算は705億円(補正と当初予算の合計、以下も同様)を用意し、可能な限りの予算措置に努めていますが、制度の運用状況を見極めながら、必要な場合には柔軟に見直しを図っていきたいと思います。

今回は、農地の受け手への支援が見えにくいとの声を踏まえ、受け手への支援に関係する予算について解説します。
この度の予算案においては、機構への農地の出し手に対する支援(「機構集積協力金事業(253億円)」)が創設されていますが、この事業の中に、「地域集積協力金事業(140億円)」というものがあります。
「地域集積協力金事業」は、まとまった農地を貸し付けた地域に対して交付され、地域の事情に応じて独自の配分をすることが可能です。工夫次第では、まとまった農地を耕作して頂ける受け手に対しても、地域として協力金を配分することが可能な仕組みとなっているため、出し手も受け手も、そして地域としてもメリットがある事業といえるのではないかと思います。

また、協力金の交付単価が27年度までは特別単価になっている点にも留意が必要です。特別単価は、基本単価の2倍か4倍です。例えば、担い手への農地集積・集約に協力する農地の出し手に対する協力金の場合、特別単価は2万円/10aで、基本単価の4倍です。早期に集積・集約化の実績をあげるためのインセンティブが設けられていますので、可能な限り多くの地域で有効活用して頂きたいと思います。

●酪農ヘルパー制度の継続

H25補正予算、H26当初予算における農業予算の主なポイントとして、最後に酪農ヘルパー制度の継続について説明したいと思います。

担い手の人材確保や経営安定化対策が必要とされるのは酪農経営者も同じです。
酪農経営は、毎日の搾乳労働が欠かせないこと等から休日の確保が難しく、家族労働が主体で長時間労働になりがちです。このことが酪農経営の担い手が定着しにくいことの一因になっています。
酪農ヘルパー制度は、酪農経営におけるゆとりの創出や生産性向上を図る目的で、畜産農家が休日を確保する場合や突発事故が発生した場合などに、農家に代わり飼養管理を行う酪農ヘルパーを提供する事業です。これまで基金事業で実施されてきましたが、事業期間が平成25年度末であったため、今回、平成28年度末まで継続されることとなりました。

酪農ヘルパー制度は、平成26年度から「酪農経営安定化支援ヘルパー事業」と名称を変えて、次の改善が施されます。
一つは、傷病時(病気、事故等)の酪農ヘルパー利用が拡充され、「育児サポート」が対象に追加されます。「育児」の範囲は、3月を目途に、農林水産省において決定されますが、個人的には、小学校に上がるまでの乳幼児までは対象範囲に含めるべきと考えます。
もう一つは、「酪農の担い手となる酪農ヘルパー人材育成支援」が、新しく事業に加わります。これにより、酪農ヘルパーが酪農後継者や新規就農希望者の育成・研修プロセスの一つの段階と位置付けられ、ヘルパー人材の生産性向上やヘルパー人材募集のすそ野が広がることが期待されます。

今後とも、若い世代の酪農家をはじめ、畜産関係者の声に耳を傾けながら、制度の適切な運用に努めてまいります。

以上