色々嫌になっちまった
そう思ったところで彼には今夜行く宛てもなかった
ウミウシは思った
シャドーマルゴーなんて知らねえ
でも彼は知らないなんて言えなかった
知らない、とあっけらかんと言えることが金持ちなんだって
ウミウシは海の底で思った
ウミウシは知らなかった
他にどんな世界が広がってるかなんて
想像したことさえなかった
ある夜 ウミウシは豪華客船に潜り込んだ
そこでは毎夜舞踏会が開かれていた
生まれて初めて見る景色だった
けれどそれは、参加者達にとっては
よくある夕食の席だった
ウミウシは知らなかった
誰も教えてはくれなかった
選択できることが
富を持つ者の最大の利点なんだって
ウミウシは知らぬまま生きてきた
彼は知らなかったんだ
何が選択できたかさえも