前々回まで、科学的手法メンテナンスが米国で発生し、それが世界へ広まった経緯を書きました。それでは、日本とどう違うのかを以下の表にまとめました。
表)
また、日常清掃の作業時間の時間の掛かり方は以下の様になっています(但し、この図はトイレメンテナンスを合理化したものになっており、そうでない場合はトイレの作業時間は更に多くなる事があります)。
定期清掃を含めば、ワックスメンテナンスも事業者には大きな問題ですので、今回はワックスメンテナンスについて述べましょう。
日本でのワックスについての教育はどうなっているでしょう?ビルクリーニング技能士の試験では実践に重きを置かれます。先ず床洗浄し、半乾きのモップで2回拭き上げ作業を行い、乾燥後隅々までワックスをムラなく塗布する事が求められます。昔と違って、机を置き、作業をする際の障害物も上手くクリアする事が求められます。扇風機を回し、乾燥作業を行い、資機材を収納し、安全サインの収納迄を時間内にする事が求められるのです。
即ち、日本のシステムは作業のやり方や正確性を中心に教育をする事になります。
一方、米国のメンテナンスの教育方法は以下の様な手順になります。
- 樹脂ワックスとはどういう物か(成分と特徴)
- 皮膜形成の方法
- 上記を理解した上での、取り扱い方
これを理解する事がワックス管理のスタートになります。
1. 現在の床用の「樹脂ワックス」は60年以上前に米国ローム&ハース社が開発した「剥離可能な水溶性アクリル樹脂金属架橋型」のものです。金属(主に亜鉛)で架橋し、アルカリに弱く、強いアルカリで架橋が崩れ、簡単に剥離が出来る構造になっています。成分を大まかに書くと以下の様になっています。
90%はポリマー(高分子樹脂=ワックスの元と考えましょう)で5%がレジン(正確ではありませんが、考え方としては接着剤の様な物と覚えましょう)、その他が5%です。レジンは黄ばみ易い要素を持っています。レジンを増やせば、ワックスは高度を増します。しかし、黄ばみ易くなります。逆にポリマーを増やせば、ワックスの透明度は増しますが、柔らかくなり、傷つきやすくなります。現在は各メーカーの改良が進み、レジンの黄ばみも殆どなくなりましたので、経年変化による黄ばみは高級なワックスでは殆ど見られなくなりました。初期のものは黄ばみ易かったので、毎年の剥離が必要でしたが、今のものは正しいメンテナンスを続ければ、10年以上黄ばむことはありません。経年変化による剥離は過去のものになっています(ある程度の値段以上のものですが)。毎年の剥離が必要なケースは他に要員がある事になります。
このタイプの水溶性樹脂は有効成分17%のものが最も適しています。20%以上のものを高濃度ワックスと言い、25%程度が最大限です。
2. 皮膜形成は以下の図の様な工程になります。ワックスを塗布すると、ポリマーが下に並びます。その後、水分の蒸発によって、その他の5%に含まれる可塑剤(プラスチックを溶かすもの=通常はアルコールの一種)の濃度が上がり、樹脂に作用し、溶かし始め、お餅が並んだような形状にしていきます。その後更に溶解と平準が進み、1枚のフィルムになります。
通常の室温と通常の湿度では概ね30分程度で以上の工程が行われます。この手で触って乾いた状態を触手乾燥と言います。17%のワックスであれば、図)の様なものとすると25%濃度のものはもう一段増える事になります。この状態はその分液体が少なくなることを意味し、それは乾燥時間が短くなることになる訳です。即ち、多くの物を短時間で処理するという事でので、条件としては難しい物になります。即ち、寒冷地や高温・多湿の場所は高濃度
ワックスは不向きの場合がある事を理解しておく必要があります。