10月11日に東京ビルメンテナンス協会の「労働安全衛生大会」で今年度から実施された労働安全衛生法について話をするように依頼され、その準備を進めています。化学物質に対する取り扱い方が大きく変更されましたので、事業者としてはその実施が求められるようになりました。そうした中で、プロとしての洗剤の取り扱い方が問題になりますので、今回はそれについて、書いていこうと思います。
各事業所には化学物質管理者が必要になり、また保護具着用管理責任者も必要になります。そして、事業者はリスクアセスメントをする必要があるのです。これについては、厚労省のHPに多くの参考資料がありますので、それを参考に実施されるのが一番です。
私達メンテナンスのプロにとっては洗剤の使用は必須事項になります。そうした中で、先ず大切な事は洗剤を使う事がどういう事なのかを正しく理解し、実践する事だと考えています。法律の変更により、洗剤を使う事を恐れたり、躊躇するようですとプロとしてのパフォーマンスを上げる事が叶いませんので、それは望ましくありません。そもそも水で落ちる汚れに対処するだけなら、プロに頼む必要がありません。
先ず理解すべきことは「洗剤の必要性」でしょう。ここから説明していくことにします。
汚れを落とすには「物理的力」(ゴシゴシ擦る事)と「化学的力」(洗剤の力でストンと落とす事)が必要になります。
私達の身の回りの汚れの80%は親水性と言われています。多くの汚れは水で落とす事が可能です。しかし、残りの20%は水で落とす事は出来ませんので、これの排除には(水だけでは)物理的力が多く必要になる事になります。即ち時間を掛けてゴシゴシとこすり取る事になります。しかし、メンテナンスで最も大切なのは作業時間です。メンテナンスの支出の80%~90%が人件費とその関連費と言われていますので、作業時間はコストに直結するからです。生産性の高いメンテナンスを実践するためには作業時間を無駄に掛ける事は大きなマイナスになってしまいます。洗剤を使えば簡単に・短時間で・100%落とす事が出来ますので、洗剤が絶対的に必要になる訳です。こうした事は欧米ではそもそも議論にもなりません。洗剤を使用する事は当たり前の事だからです。洗剤(石鹸)使用の歴史が長く、水が少なく、油を多く使用し、住居は土足と言った生活習慣があるからです。一方、我が日本は石鹸使用は明治維新後ですので、1世紀半程です。また、肉食も同程度で、住居も下足です。水も豊富で、綺麗であることから、日本には水神話があり、水で奇麗にする事が一番だという信仰が定着しています。その所為もあって、日本のメンテナンスでは細かな汚れに対する技術が甘くなりがちです。高級ホテル等で、欧米では陶器や金属がピカピカですが、日本ではなかなかそうなっていません。ファインミスト(細かな汚れ)の除去の技術は中性洗剤の日常的活用によってはじめてもたらされるのですが、ここを水で済ましてしまうために、陶器や金属の光沢がパッとしないのです。除菌清掃に対しても同じことが言えます。この分野(微生物)は決定的に洗剤が必要になるのですが、その徹底事項が甘くなってしまいがちです。プロとして、最初にすべきことは「洗剤を使用する覚悟」をしっかり持つことだと考えます。