先日あるところに20分現地教育資料をお持ちしたのですが、そこでのよもやま話で
ワックス管理のポイントを聞かれました。
皆様はワックスを上手く使いこなしているでしょうか?
メンテナンスではワックス管理が一番難しいという声が海外では多いのです。
随分昔に、海外のメーカーの連中とメンテナンスで一番難しいのは何かという議論になり
ワックスメンテナンスに落ち着きました。なんとなれば、(本来は)やるべきことが多いからです。
マット管理(予防メンテナンス)
ダスティング(除塵)
洗剤拭き(主に自動洗浄機を使用)
バフィング
リストレーション(光沢復元)
リコート(ワックス再塗布)
剥離
その他に、部分補修のパッチング、高速バフマシン(バーニッシャー)による部分補修(結構テクニックが要ります=汚れ削りとバフ作業)等もあります。
米国のメンテナンスのプロは自動洗浄機だけでなく、バーニッシャーをバフだけでなく、床を削ったり、光沢復元剤を利用してのバフ掛けなど、さまざまな事をやるのです。
ともあれ、最も大切なことはワックスの性質を知り、その上でメンテナンス計画を練って実施することなのです。
メンテナンスの考え方で
1.素材を知る
2.汚れの種類とターゲティング(汚れの絞り込み)
3.正しいメンテナンス方法を知り、実践する
の3つで行う事が重要だといつも強調していますが、
最初の部分です。
ワックスはもともと50年以上前米国ローム&ハース社で開発された「剥離可能な水溶性アクリル樹脂金属架橋型」
が原型で、この基本構造は今も変わっていません。
しかし、ポリマーとレジンが現在では非常に良くなっているんで、今のワックスは(米国製や高いものであれば)
毎年剥離などの必要はなく5~10年は持つのです。勿論良い管理が前提になるのですが・・・
先ず、ワックスで注意すべきことはアルカリに弱いということです。
「アルカリに弱く、強いアルカリで金属架橋が崩れ、剥離できる(取れてしまう)」と言う事が特徴なので、アルカリには本来弱いのです。
一方、床で使われるアルカリ性万能洗剤は汚れ落ちは良いのですが、使用後にアルカリ分が床に残るのです。このアルカリ分は目で見る事が出来ません。我が日本では殆どの場合、床洗浄後、アルカリ分の残留を起こし勝ちです。その上に新しいワックスを塗ってしまうので、アルカリを挟んだ状態になってしまい、ワックス本来の良さを生かせないのです。
上図は昔のビルクリーニング技能士の教科書のイラストを載せています。
金属が架橋して、強くなりますが、アルカリで架橋が外れる様子が書かれています。
これではいくら努力しても、良いメンテナンスは不可能です。
日本では定期清掃(床洗浄後ワックス再塗布)の値段が競争で下がり過ぎたため、アルカリ分を取るための十分な時間が取れない(ワックスのこの特性の掴み方が甘いせいもありますが)ので、定期清掃をすればするほど、ワックスが痛むと言う皮肉なことが起こるのです。
もう一つは最初にワックスを形成する際に、乾燥時間を十分に取ることが必要であるという理解です。
ワックスは図の左側のイラストの様に、塗布されると、ポリマーが下に並び、乾燥する事で可塑剤の濃度が上がって、
ポリマーを溶かし、お餅のようにくっつけあって、最後に一枚の綺麗なフィルムになります。
強制乾燥させようとすると、この自然なメカニズムを阻害し、フィルム形成が不十分になってしまします。
従って、床に向かって扇風機を掛けるのは厳禁です。このメカニズムを熟知しながら、ワックス形成をする必要があります。
そして、日々のダスティングと中性洗剤による床洗浄はワックスメンテナンスには欠かせません。
これらをトータルで出来るようになって初めて、いつも床が綺麗で、定期清掃も簡単で、剥離清掃の時期も長くできる
(要するに相当な時間短縮ができる)のです。
理論の習得とそれに立脚した技術こそが重要なのです。
定期清掃の欠点だけを述べて、何も言わないのは無責任です。
上記のように定期清掃で金額が安く、十分なリンス時間が取れない場合(実はこの時間がかなり掛かるのです=定期清掃をしている方は皆さん良くご存知です)、ワックス再塗布をやめ、光沢復元に切り替えてしまう事です。最初のワックス形成は上記のようにしっかり作る事が必須ですが、予算の無い定期より、光沢復元(リストレーション)の方が数段に良い結果をもたらすでしょう(ご希望の方は弊社HPにご連絡ください)。