EPA登録と感染防止洗剤-①少し掘り下げディスインフェクタントとアンチゼプティクス)
病院清掃ではEPA登録洗剤を使用すべきです。病院清掃では水拭きは基本的に不向きです。微生物を除去ではなく、撒き散らかしてしまう可能性があるからです。EPA登録洗剤については前回(正確には前々回)述べました。
先ず、消毒に関してですが、日本では言葉が1つなので分かり難いのですが、医療施設でのメンテナンスに関しては、消毒には2種類ある事を知っておくべきです。私達メンテナンスサイドが扱う環境消毒と医療関係者が扱う人体や動物に対する消毒です。環境消毒はDisinfection(ディスインフェクション)と言います。Disはしないと言う意味です。Infectionは感染・汚染と言う意味ですので、Disinfectionは「感染しない・汚染しない」という事になり環境消毒を意味します。一方、人体や動物に対する消毒はAntiseptics(アンチゼプティクス)と言います。Antiはアンチ・ジャイアンツ(最近は巨人も弱くなり減りましたね)と同じで「しない・反」と言う事、septicは敗血症(傷口が膿む事)を意味しますので「膿まない」と言う意味で上記の通り、人体等の消毒を指します。
何故こうした事にこだわるかと言えば、同じ消毒剤を使用しても効果が異なるからです。私達が扱うのは基本的には非行性(穴の開いていない)で硬質の表面に対しての環境消毒になります。英語で言えば(Non porous/Hard surface)になります。具体的にはドアノブ・手摺、テーブル、スイッチ、電話・・・等のコンタクトポイントです。以下例をあげましょう。
※コンタクトポイント(例)
1.ベッド手摺 2.ベッドサイドテーブル・引き出し 3.電話
4.患者コード5.リモート・コールボタン 6.照明スイッチ
7.シンク蛇口8・ドアノブ9.取れハンドル 10.ベッドテーブル
11.患者椅子アームレスト12.トイレ内手摺 13.IVポール
14.ベッドコントロールボタン
こうした接触場所から感染が起きますので、それを防ぐのが感染防止清掃であり、感染防止洗剤です。
この場所をDisinfectant(環境消毒)をするという事は、清掃後、対象微生物の完全不活性化を達成するという事を指します。従って、使用する洗剤は心配される、或は懸念される対象微生物を完全に取り去る洗剤を使用する必要があるのです。前回書いたEPA登録洗剤を使用する際には、ラベルやボトルに対象となる微生物が載っているかどうかを確認し、使用する様にしましょう。正しく使用すれば、上記の様な非行性・硬質表面では対象微生物の完全不活性化が可能になります。その場所からは感染が起きません(但し、言うまでも無く、誰かが触るまでですが・・・)。
一方、人体や動物を消毒する場合には、表面が複雑ですので、同じ消毒剤でも効果が異なります。感染防止洗剤では第四級アンモニウム塩で数多くのウィルスに有効なのですが、人体や動物表面ではそうはいかないのです。従って、この二つでは効果が異なる事を認識しておく必要があります。特に医療関係の方に説明するには必須の知識です(尤も最近の医療関係者はこのことを良く知っていますが・・)。
さて、もう一つ覚えておく必要があるのがSanitize(サニタイズ)です。これは上記のディスインフェクタントより少し弱く、対象表面上の総微生物の99.99%除去できる力のあるものを指します。完全不活性化ではないので効果は少し落ちます。
使い方は次回にしましょう。