11 pH(水素イオン濃度)について
今日は講習内容のpHについての説明を書いていきます。
pH(ピーエッチ/ペーハー)について説明しましょう。これを覚えると洗剤が非常に使いやすくなります。是非覚えてください。
pHは図の上の様に0~14の値で示されます。7が中性で、数字が増えるとアルカリが強くなり(青い色が濃くなっていきます)、数字が少なくなると酸が強くなります(赤い色が強くなっていきます)。一単位で10倍ずつ区切っています。pHとはそもそも何なのでしょう。
真ん中にコップの中に水が入っています(図)。水は化学式ではH2Oと書くことは皆さんご存知です。こう書くと、何か固まって、カッチリしているとものと思われがちですが、実際には水はH+(水素イオン)とOH-(水酸物イオン)が緩やかに結合したものなのです。両方と足すとH2Oになる訳です。コップ内の水に何も混ざり物が無ければ、H+とOH-の数は均しくなり、pH値は7になります(中性)。
しかし、我々の接する水にはいつも何かが混ざっています。混ざりけのない純水(じゅんすい)は工業的にしか作る事は出来ません(完全なpH7です)。そうすると、中に入っている混ざり物によって、H+が増えたり、OH-が増えたりするのです。H+が増えると酸に傾きます。OH-が増えるとアルカリに傾くのです。そのイオンの濃度を10倍ずつ区切って表(あらわ)したのがpH値になります。科学の世界ではこうした区切り方はよくあります。濃度が倍や3倍では実生活上大した違いがないため、10倍と言う大きな単位で区切った方が違いが分かり便利だからです。地震のマグニチュードも30倍チョットずつで区切っていますね。
そこで、pH8は(コップの中に)OH-が余分に入っている事になり、pH9はそのOH-の数がpH8の10倍入っている事になります。pH10では100倍(10倍の10倍=10×10)になります。逆の言い方をすれば、pH10の洗剤を水で10倍に薄めればpH9になり、100倍に薄めればpH8になる訳です。ですので、先日も書きましたが、例えば床ワックスの上に付く靴底のゴム(ブラック・ヒール・マーク)が除去にpH10位必要と言う事が分かっていれば、pH11の洗剤であれば落ちますし、その洗剤を10倍に薄めても落ちる事が分かります。
酸で落ちる汚れとアルカリで落ちる汚れがありますが、アルカリを例に取れば、アルカリ度を強めていけば汚れが落ちやすくなります(酸も理屈は同じです)。同時に素材も傷める可能性が増えます。対象となる汚れに適正なpH値の洗剤を使用する事が重要なのです。
プロ用の洗剤は殆どのものが薄めて使いますので、この原理を知っておけば、今自分が使用している洗剤の強さが容易に計算出来、どの汚れに対処できるかも簡単に想像がつきます。水で薄める事で10倍毎に一単位違う事を覚えましょう。そうすれば、洗剤使用がグッと楽になります。
さて、いつも10倍、100倍なら良いのですが、20倍とか50倍とか、或は米国の洗剤を使用する際に出てくる1:64稀釈など、端数が出てきたときにどう考えるかは次回にしましょう。