定期総会の議事録をチェックした。
なぜ、森は「了承だった」というウソを言いきれるのだろうか?
人はそう、ウソを言いきれはしないと思う。
何か、言い切れる準備がされているはずだ。そう考えての議事録チェックだ。
・・・あった。
230万円オーバーという高額な、しかも5年に1度のことなのに、単独の議題になっていない。
第5号議題の予算案の中に、隠すように入れている。
第5号議題には、このほかに「宅内及び共用部雑排水管洗浄」、「エントランス風除室扉取替」「各戸水道メーター取替」「一般会計余剰金を修繕積立金に振替」などがあった。
おそらく、定期総会で司会進行する前期理事長の小谷さんに指示し、第5号議題の決を採ったのだろう。
参加者は、その時の挙手に、保険の更新は入っている自覚はない。
なぜなら、保険は保険で挙手をしたのだ。
保留か継続かで決を採ったのだ。
まずいと思った森は、第5号議題をまとめて決を採らせて、ウソではないという逃げ道をとっさに作ったのだろう。
そんな分析をしていたなら、僕のスマホが鳴った。
表示には「管理会社」となっている。
「はい」
「あの~。今日19時から、緊急ですが理事会を行ないたいのです」
「は?」
「あ、あの、やはり無保険期間は危険だと思うのです。皆さんにお話しした方が良いと思うのです」
「なるほど」
「19時から、エレベーター前でよろしいでしょうか?」
「私は大丈夫です。参加者は、なるべく総会出席者全員にしていただきたいのですが」
「はい、承知しました。では19時に」
やはり、森さんからの電話だった。
保険比較サイトの関さんから届いている、共用部の損害保険の比較表をプリントアウトして持って行こう。
19時なら妻も帰っているだろう。
lineしとくか。