2.エントランスドアの修繕見積もりが高すぎる、につては「保険金が下りるはずです」という主張で、管理会社は押し切ろうとした。
原因が昨年の台風なので、保険の対象ということだ。
それならいいか~、という空気もあったが、僕は発言した。
「インターネットで業者を見つけて見積もりをもらったんです。金額は13万円でした」
少しざわめいた。
「管理会社の見積もりは、ドアの交換まで入っています。しかし、壊れているのはフロアヒンジだけです」
色々な意見が出て、結果は「保険金が出るのだから」と、管理会社に任せることになった。
管理会社三葉の担当者は森さん。もう15年くらいブリーズ勝山の担当らしい。
その森さんの常套句は「ウチ以外で修繕されてもかまいません。ただしその場合、ウチは一切責任は取りません」だ。
「ウチに任せてもらえれば、当然、何かあった時はウチが責任を取ります」も常套句だ。
この発言にも言いたいことはあるのだが、今はその時ではないと判断した。
議題が広がりすぎるのは、得策ではない。
僕は、自分の意見を強く言い過ぎることのないようにしよう、と心がけていた。
これからも、ずっと住み続けるマンションなのだ。他の住民に反感を持たれてはならない。
今日のところは、管理会社に任せると高くなるのかな? と思ってもらえるだけでも十分なのだ。
来年に控えている大規模修繕工事について、1人でも多くの組合員が【考える】ようになれば、それで今日のところは充分と思っていた。
古株組合員の一人の油谷さんが発言した。
油谷さんも新築購入者だ。
「全部、三葉さんに任せれば良いんだ」
「最近入った方にはわからんだろうが、古くからの者はみんなそう思っている」
「三葉さんは良くやってくれてる」
「以前TVが映らなかった時も、すぐに動いてくれた」
「200万、300万高かろうが、三葉さんに任せれば良いんだ」
森さんが、満面の笑みを浮かべる。
滝井さんの奥さんが反論する。
「13万円と65万円の差は大きいと思います」
「安く済むなら、それに越したことがないですよね」
滝井さんも古株。ただ新築での購入ではなく1年後ぐらいに中古で購入したらしい。
座間さんが言う。
「三葉さんは、高すぎる」
「おかしくないか?」
また油谷さんが言う。
「少々高くても、三葉さんが良い」
森さんが言う。
「ウチなら、ウチが責任を取りますが、他社が工事をした場合は弊社はノータッチですので」
「この件は、共用部の損害保険がおりますから、100%ではないんですが、まず間違いなく降りるはずですので、管理組合のお金は使いませんので」
「逆に、お見舞金が出るんじゃないかな」
古株の2人の意見が割れ、結局は保険が下りるのならという空気になった。
『保険が下りるのなら』という条件付きで、この件は、管理会社に修繕工事を依頼する結論となった。