パレスチナの教育問題と支援~補習クラス・子どもセンター・ろう学校
毎日エデュケーションが支援するNGO団体の1つ、
パレスチナ子どものキャンペーン(CCP)
が、
3月11日(木)19:00から「グローバルひろば」で
「パレスチナの教育問題と支援」についての勉強会
を開催し、
会社員や学生など19名が参加。
講師は、同団体事務局長の田中好子さんだが、
インターンやボランティアの方がたも、それぞれが担当する
プロジェクトに関して報告をしてくださった。
田中好子さん(中央)の説明に聞き入るさまざまな年齢層の参加者
<「パレスチナの教育問題と支援」勉強会概要>
◆2008年12月のガザ侵攻から1年+封鎖から3年:
・経済封鎖が続き重機が入らないため、瓦礫の撤去が進まない。
そんな厳しい状況の中、瓦礫を砕いて少量のセメントと混ぜて
日に干した「ブロック」を作ったり、瓦礫から鉄筋を取り出して
再利用するなど、廃材利用している(せざるを得ない状況だ)。
・廃材利用⇒回収を支えているのが、子どもたちだ。
プラスチックや金属を回収して業者に売り、家計を支えるため、
学校に行かずに、生活費を稼がざるを得ない子どもが増えている。
大きな袋を担いで廃品回収をする子どもたち
詳しくは、コチラ
・窓ガラスが割れたままの状態の小児病院もあり、復興は進まない。
◆アトファルナろう学校の子どもたち:
・08年12月の攻撃で、家を破壊された子どもたちの中に、
アトファルナろう学校の生徒もいる。
1年以上たった今も、半壊された家の中の瓦礫を
そのまま放置しているケースも多い。
半壊した家の中の瓦礫の中に教科書やノートが散らばっている
・同団体の最新ニュースレター「サラーム」(10年2月13日発行)によると
家を破壊され途方にくれていたアリくん(7才)とタスニーンさん(14才)
の姉弟は今も仮住まいをしているが、元気を取り戻していた。しかし、
侵攻の間は、周りに手話で話ができる人もいない避難生活で、
非常に怖い思いをして孤立していたそうだ。また、ろう学校で、
戦闘機や戦車による爆撃の絵を描き続けている子どももいるそうだ。
・以前アトファルナろう学校でボランティアをしていた土井幸美さんが、
現地の学校(ろう学校、国連系UNRWA学校、政府系女子中・高校)の
状況について お話してくださった。
ちなみに土井さんは、日本でも、ろう学校の教師をしているので手話を
使って図工などを教えていたそうだ。日本とパレスチナの手話は違うが、
基本の500型くらいは似ているので、その基本の共通手話をかなり
活用したそうだ。
◆難民キャンプの教育問題と補習クラス:
「基本的な学習ができてないことを、誰も気にしていなかった」
・2003年、パレスチナ子どものキャンペーン(CCP)は、
レバノンにあるパレスチナ難民キャンプで補習クラスを開始。
現在8箇所の難民キャンプで実施し、参加する子どもの数は約700人。
・パレスチナ難民の子どもは、国連の小中学校に通うが、2部制授業、
人数の多いクラスなどの問題があるといわれている。
・また小学校1年から英語とアラビア語の2言語教育をするレバノンの
カリキュラムが適用されているが、難民キャンプの生活環境が
厳しいため、子どもが勉強に集中するのが難しいのが現状だ。
小学校では2割、中学校では3割の子どもが授業についていけないと
いわれている。だから、CCPは、補習クラス支援に、力をいれている。
★レバノン・バダウィ難民キャンプの指導員たちへのインタビュー記事
(CCP「サラーム」最新号)を要約・編集・一部抜粋。
・小学校1年生から英語が導入されたカリキュラムが非常に不評。
理由は、子どもたちはアルファベットのA~Zまでを暗記しているだけで
文字と文字の区別がついていない。罫線と罫線の間にどうやって
アルファベットを書けばよいかも習っていない。
それなのに、つまり基礎的なアルファベットを理解していないのに、
小学1年生から、いきなり、英語の文章が出てくる。
当然、小学校で落第する子が多数でてくる。
・小学校に入ってすぐ、国語(アラビア語)だけでなく、
英語も勉強しなければならず、その上、英語もアラビア語も教科書には、
文字を学ぶページがなくて、いきなり文章から始まっている。
・今のカリキュラムでは、算数も問題。数について教えた後、
すぐに足し算と引き算が出てきて、子どもたちがプラスとマイナスの
違いをまだ理解していない内に、試験に足し算と引き算が出題される。
・本来は、小学1年から3年の間に基礎的教育をすることになっているが、
実際にはそれができていないことが多い。教師も、生徒達が
基本的な学習を理解しているか、確認していないことも問題。
・その上、小学4年から算数と理科の授業は英語で行われるようになり、
これは子どもにとって全く新しい状況であり、いつドロップアウトしても
おかしくない状況だ。だからこそ、授業を理解するために誰かの助けが
必要、つまり、補習が必要となってくる。
・パレスチナ子どものキャンペーン「補習クラス」の存在を知らせる方法は、
主にパンフレットを小学校で配布すること。
あるいは、口コミでやってくる子どももいる。
親が連れてくる場合と子どもが望んでくる場合の両方があるが、
親も子も補習クラスを待ち望んでいる。
◆ガザと日本、子どもたちの「絵手紙」交流プロジェクト:
・パレスチナ子どものキャンペーンのボランティアの1人が、
日本の子どもたちとガザの子どもたちを結び付けたいという願いが
実現したプロジェクトの一つ。
2009年12月に横浜市立相沢小学校の6年生と
ガザのアトファルナろう学校の子どもたちが、絵手紙を交換!
同様に、東京と長野のろう学校でも、ガザの子どもとの交流が実現!
・前述の「アルファルナろう学校の子どもたち」で登場した
姉のタスニーンさんは日本の子どもとの絵手紙交換プログラムに参加し
「大人になったらアトファルナのカフェテリアで働きたい」という絵を描いた。
◆ボランティア募集:
・パレスチナ子どものキャンペーンは、
イベントスタッフ、発送作業、事務作業、販売協力、レイアウト、
ビデオ編集、翻訳などを手伝ってくれる方を募集中!
問い合わせは、コチラ
【記録者の感想】
・毎日エデュケーションは、「1%エデュケーション基金
」を通じて
「パレスチナ子どものキャンペーン」のガザ地区のろう学校での
子どもの教育支援をサポートしているが、
同団体WEBサイトの「海外プロジェクト
」の中に
「心理サポートと補習クラス(レバノン)」があり、
何故、補習クラスなんだろう、と思っていたが、
今回の勉強会で、補習クラスが必要な理由がよ~くわかった。
・勉強会でレバノンの小学校の英語と算数の教科書を見せてもらったが
驚いた。 参加者の中に塾講師の方がいて、配布されたレバノンの
小学校3年の英語の教科書のコピーをみて、
「これは、日本の中学3年か高校1年生レベルだ」とコメント。
・今日の勉強会では、事務局長の田中さんだけではなく、
インターンやボランティアの方がたが実際にかかわったプロジェクトを
発表していたのは、印象的だった。
こういった事例をみて、「私にもできる」「私もやりたい」という
ボランティアが増えると思う。
関心がある人、是非、ご参加を!