去年の
私の誕生日の数日後



天からもらった贈り物は
相棒が
癌という現実でした



自分の誕生日が近づくにつれて
辛くて
堪らなく苦しくて

正直
どうしようもない気持ちで
一杯になっていました




誕生日の日
アクロス福岡の
シンフォニーホールで
【ゲルハルト・オピッツ氏】の
ピアノリサイタルが
開催されるので


ずいぶん迷いましたが
行ってみる事にしました


【ゲルハルト・オピッツ氏】とは
ドイツ、ピアノ界の正統派代表の演奏家
音楽解釈の楽派の流れは
オピッツ氏の師「ヴィルヘルム・ケンプ」から受け継がれる
その源流はベートーベンやリストにまで直接遡る



随分前に封印していた
クラシック音楽

聴きに行くからには
リサイタル曲の予習をしなくてはね




「三大B」
ベートーベン/バッハ/ブラームス
の楽譜を探す

同じ曲の楽譜で
全音や音楽之友社、
春秋社版の物は
ボロボロになるまで使い倒し

鑑賞用や特別師事し
書き込んでもらえる時用に
ヘンレ版
そして
ショパンはパデレフスキ版
持ってたらそれだけで
なんか格好いい

なんて
当時思っていた


ヘンレ版
ページめくりやすいけど
ボロボロになるのが早いから
なるべく使わないように
大事にしてた(笑)





今回のリサイタル曲には
関係無い楽譜だけど
JS.BACH(バッハ)の
インヴェンションとシンフォニアに
びっしりと
曲の分析の跡を見つける


懐かしいな
そう言えば
バッハの綿密な音の並びに
魅了され
黙々と分析していた事を思い出す

どんな本を元に
どうやって
調べていたかな?
本を探す…

初見演奏や
聴音のテキスト…
聴音、大得意だったな


なんかどんどん色んな物が
気になりだした


…キリがない
まずはリサイタル曲だね




さて
着物の準備も


座席に座るコンサートで
着物で出掛ける時の
髪型は
高さや横を盛らず
コンパクトにまとめる
後ろの席の方や
隣の席の方の視界に配慮して


アクセサリーも
チャラチャラと音のする物は
道中だけ
会場では外す



そして
座席で前のめりに座らないよう
帯は半幅帯で
「貝ノ口」に結ぶ
これだと肩胛骨まで
椅子の背にペッタリ付けられ
自分も楽

「貝ノ口」の結びが
いかがなものかと
眉を潜められないよう
羽織をはおる

「お太鼓」結びで
背もたれから浮いて
周りから
眉をひそめられないよう

両方どちらにも配慮

そして
静寂を旨とする
特に茶事やクラシック演奏会には
適さないと言われている

「博多織りの帯」

締める時に
「きゅっきゅっ」という
絹鳴りがあるように
動く度に衣擦れの音がすると
呼吸だけで絹鳴りがすると

絶対にNGという訳ではないが
嫌煙されている

私の場合
締めすぎると
絹鳴りがしてしまうので
ユルめに結ぶ
あまりユル過ぎると
着崩れするし
この難しい帯を身につける

締め具合と
微動だに動かずとも
寛げるタイプなので

演奏中は
絹鳴りさせない自信がある



絶対に…







準備完了!!

さぁ出掛けようとした時
羽織のヒモが「パンッ」と
はじけて
ゴロゴロと床に転がり落ちた


そして
ミサンガの様に編んで
足首に身に付けていた
竈門神社の御守りの
赤い糸も切れた


この意味するものは
何か分からないけど



とりあえず
無事
アクロス福岡に到着



シンフォニーホールの
懐かしい空気を感じ


オピッツ氏の年期の入った
心地よい音が
心の中にスッと入ってくる

なりやまない拍手と
アンコールの「テンペスト」

帰りに
穏やかにニコニコした
オピッツ氏のサインを頂き


何事もなく
コンサートを終えました


相棒の病気や死で
私の周囲の人間関係は
脆くも崩れ

この1年振り返ると

疎遠になった人
意地悪をいまだに重ねてくる人
逆に
ただただ
暖かい気持ちを下さった人


あの羽織のヒモが
「パンッ」とはじけて
切れた様に

1度リセットして


これからは
頂いた暖かい気持ちを
大事に
心に抱き締めながら
新たな1歩を歩んでいきたい



相棒の突然の癌と死の
試練は

本当の味方と
味方のふりをする偽者を
ちゃんと
見極めにゃさいと

相棒が私にくれた
贈り物なのかもしれません