子どもの頃から、あまり出産に興味が持てませんでした。
女の子は、将来の夢はお嫁さん、などとお話や漫画に書かれることのあった世代ですが、そんなこと一度も思ったことがありません。
お嫁さんはともかく、出産に関しては、子どもだからピンと来なかったということもあるとは思いますが。
大きくなれば、自然に結婚して、子どもを何人か産んで、というふうになるのが普通なのでしょうが、私の場合、それに水を差す決定的なできごとがありました。
中学生のころです。
身内が、赤ちゃんを産みました。
私は別に子ども好きではないのですが、身近で赤ちゃんが生まれるのは初めてだったので、物珍しく、興味もありました。
出産に関する話を、母も交えて、女だけで話していたときのことです。
「分娩の前に、浣腸をするのよ」
と、赤ちゃんを産んだばかりのお姉さんが言いました。
か、浣腸??
出産と浣腸がどう結びつくか思いもよらずびっくりして固まっていると、
「お産でいきむときに出るから、予め出しておくの」
と、話が続きます。
「病院によっては、出るのは自然なことだから、浣腸しないところもあるみたい」
陣痛だけでも恐ろしいのに、浣腸!
しかも、陣痛で大変なときに、浣腸!!
陣痛ですら、死ぬほど痛いと聞いていて、考えるだけで耐えられなさそうで恐ろしいのに、その上まで浣腸があるとは・・・。
しかも、浣腸しない病院もあるって・・・それって、お医者さんや看護婦さんの見ている前で排泄するということ・・・。
汚いという嫌悪感もありましたが、それよりも、お産という行為の生々しさに、言葉を失いました。
なんたって、まだ初々しい中学生でしたから。
30年以上も前に、このようなお産のリアルな様子を聞いてしまったせいか、出産について、抵抗感ができたのは間違いありません。
さて、いざ妊婦になってみると、やはり陣痛は怖いのですが(痛いの嫌い)、浣腸についてはどうとも思わなくなりました。
しなければならないものならするか、と程度のものです。
もう45歳、浣腸ごときでは気持ちが揺れなくなっています。