朝 5:00。チャンディガールに着いた。


6時間立ちっぱなしだったバスを降りられた喜びに浸る間もなく


今日の宿探しをはじめる。


しかし、リキシャーで回るも、どこも満室。


(どうやらドクター会議?の日だったらしく、


インド各地から人が集まっていのが原因らしい。)


30分で4,5件、宿を探したが、空室は見つからず


宿探しにこれ以上時間を使いたくなかったので


チャンディガールでの宿泊は諦めることにした。




予定変更だ。


今、朝6時だから、11時までチャンディガールを観光して、それからバスで


デリーに帰ろう。


デリーなら空き宿も沢山あるだろう。




しかし、リキシャのおじさんは必死だった。


「あともう一件、回ろう。


 俺のお薦めのホテルがあって、絶対に空室もあるから。」と言うが


それを聞くのも既に3度目だ。


(運転手は、客をホテルに連れて行くと、ホテル側から手数料を貰える。)


しかし、沢山の観光客が、路上で寝袋で寝ているところを目にしたので


宿探しは絶望的に思えた。



私は運転手の申し出を断り、お金を払ってリキシャーを後にした。





AM7:00になる頃には、帰りのバスの確保に向かった。



バスチケット購入のため、チケット売り場へ行くが混んでいる。


並んで、やっと私達の順番になり


11時発のチケットが欲しい。


今すぐのバスでは無い。」と念を押すように


係員に伝えると、


「分かった」と言って


今すぐ発車のバスチケットをくれた。




間違っている。


あまりにテンポ良く間えていたので、


このおじさんは、もしや


お茶目でボケただけなんじゃないか?


それとも、突っ込み待ちなんだろうか・・?



とも疑ったが


真顔なその人は、真剣そのものだった。



「このチケットは間違っています。11時のバスのチケットを下さい。」と


何度も説明すると


何かが癇に障ったのか、


おじさんは、さっき支払ったお金を、乱暴に返金し


「お金は返したんだから、もう良いだろう」と


話すらもしてくれなくなってしまった。


何故おじさんが怒っているのか分からなかったが


仕方なく、チケットは予約せず、観光から戻ったらその時に買うことにした。




チケット紛争で疲れて、ベンチで一休みした。


私がウトウトしている間、Mはインド人と話をしていた。


その人いわく、私達の目的の観光名所が開くのが8時らしい。


まだ一時間以上も有るので、少し眠る事にした。



ベンチで横になっていた。


10分くらい寝たようだけれど、何故か、はっとして目が覚めた。


足元に蝿が沢山いた。


なんだか落ち着いて寝る事が出来ず


トイレに行ったり、チョコレートを買ったり、


なんだかんだで時間を潰していた。





ちなみに、通常、トイレは無料で使用できるのだが


ここのバス停のトイレは10ルピーのチップ制だった。


お金を取るくらいだから、さぞ綺麗なトイレなんだろうと入ったが


個室のドアが無かった


便器が丸見え。


どうしてなの、インド・・・。



幸い、何個かはドア有りだったので、それを使ったが


混雑時には、ドア無しのトイレも使用されるんだろうか?、


また、消えたトイレのドアは何所に行ったんだろうか?、


とても気になった。


盗まれたんだとしたら、ドアは何処かの民家で平然と使用されているんだろうか・・・。


トイレのドアとして産まれたのに、民家のドアになるなんて


なんだか、昇級した感じかな。


良かったね、ドア。



そんなこんなで、良い時間になり


出発しよう・・・というとき事件発生。


M 「財布が無い。」




財布を紛失したらしい。


周辺や、私のバックの中も探したけど無かった。


寝てるときに取られたのか、落としたのか分からないけど


インドじゃもう見つかる可能性は無いんだろう。


幸いカード類は入っていなかったらしく


無くなったのは現金と財布本体のみ。



Mは


「財布はネパールで買ったものだ。」


と非常に悔しがっていた。


それは一個50円もしないものだったらしいが


旅行先で買ったもので、思い出はプライスレスだろう。



気持ちは分かるが、でも、やはり現金が心配だ。




いくら入ってたのか聞くと、「1000ルピーとちょっと。」 と答えた。


日本円にして2000円くらいだ。


インドでは大金ではあるけれど、それくらいで済んだのならまだ良かった。



諦めよう・・と言いかけて、気が付いてしまった。





その1000ルピーって、私のだよね?(涙)



さっきバスチケットを2人分まとめて買うために、Mに預けてた私のお金。


結局バスチケットは買えなかったけれど


観光後に、再度購入を試みるとして、Mに渡しておいたんだ。


Mは


「あの財布、友達にあげようと思っていたのに。」と残念がっていたが



私は


その財布が40個以上買えるお金を失くした。


ははは・・・。




ただ、嘆いても財布は出てこないので、気を取り直して


観光に出かけた。




目指すは、ロックガーデン。


バスで10分ほどで目的地にたどり着いた。


8時過ぎに庭につき、入ろうとすると、開園が9時と書かれていた。


一時間、早かった。というか、さっき教えてくれた人が間違えていた。



でも、これは、間違えた人が悪いのではなく


間違えた情報を信じた方が悪いのかもしれない。



余談ですが


インド人に物を訪ねるときは、最低3人には聞かなくてはならないという


暗黙のルールがある。


インド人は、適当な返事をすることが多いからだ。


ただ、これはインド人も悪意が有っての事ではないらしい。


彼らは、遠路はるばるやってきた観光客に対して


「知らない。」という返事で、会話を終えることに抵抗があるらしく


少しでも情報提供しようと、知らないことでも


知っているかのように返事をするらしい。


言ってしまえば、インド人の嘘や間違った情報は、


彼らの優しい心から産まれているという事だ。


ありがとうインド人。


一人旅で不安な旅行者に、優しさをありがとう。






・・・なんて、




納得出来ないよね ・°・(ノД`)・°・


何度、この誤情報に惑わされた事か。



今回も、この炎天下のなか、一時間待たなくてはならない。


悲しいことに周囲に店が無く、かなり強い日差しにさらされていた。


久しぶりに日焼け止めを塗ることにした。


ちなみに私は、インドに来て、初日以降、日焼け止めをつけていない。


それは、”思ったよりもインド゙の日差しが弱かったから”ではなく


”思った以上に自分の生活が堕落していた”からだ。




買ったばかりのミネラルウォーターが、十分後には沸騰しそうなこの日差しの中で


日焼け止め無しで過ごすなんて、無謀だったな・・・。



とりあえず暇だったので、塗ることにした。


バックの中で日焼け止めを探してゴソゴソすると


ビクっと人差し指に、衝撃が走った。


昨夜、慌てて荷造りをしたので、シェーバーの刃を丸出しで


リュックに入れてしまい、それで指をザックリ切ったようだ。


傷自体はたいした事はなかったのだけど、


指先から血が溢れて、地面にボタボタ落ちていった。



向こう側からインド人のおばさんが


「一体なんてトラブル!?」と驚いていた。



そのおばさんは、6人くらいの家族連れの


お母さんらしい。


14歳くらいの女の子もまた、「どうしたの?」と聞いてきた。


私は


「バックの中の物を取ろうとして、シェーバーで切ったんだ」と答えた。



女の子が


「パパ、助けてあげて!」 とお願いし


「よし!パパはお医者さんだ。まかせておけ!」と


絆創膏を取り出すパパ。



そしてママがやさしく私の指に、絆創膏を巻いてくれた。


アットホームだなぁ。



私は、人に絆創膏を巻いてもらうなんて子供の時以来で


なんだか懐かしかったし、


久しぶりに触れるインドでの優しさにも、ちょっと感動していた。



が、横から


「先に止血してから貼ったほうが良いんじゃない?」


と、冷静にMが言う。


確かに。。。。


案の定、絆創膏は、流れ出る血で赤く染まっていった。



でも、言えない。この状況で、


せっかく貼ってもらった絆創膏をはがすなんて出来ない。


まぁ、いいや。


インド人一家に厚くお礼を言うと、


彼らはニコニコしながら去っていった。


私はその場にほうり投げられた、絆創膏のゴミを見ていた。


インド人にはゴミを持ち帰るとか、


ゴミ箱に捨てるって言う概念は無いんだなぁ・・。




それから、やっと開園時間になったので中に入った。




中は岩だらけだった。


ちなみに、ロックガーデンの簡単な解説。


『ネック・チャンドという交通局員の男性が1人で作った庭。


彼は、仕事が終わると、30年の間、毎日一つずつ岩を持ち帰り、


空き地に集め、それで人形や置物を作り続けた。


↓こんなのとか。

インド旅行記 M子の一人旅 -岩



それが、政府に見つかり、空き地を勝手に使った事で騒動になるも


最終的には認められて、政府公認の観光スポットになった。』


ちなみに、彼が集めた岩というのは、チャンディガールの街の開拓時に出た


廃棄物や石で、リサイクルやエコという意味でも、この庭は注目されているらしい。



しかし、私がそいういった背景を知ったのは帰国後。


その場では私はこの庭の事を何も知らなかった。


当時の日記。

『 岩ばかりだ。説明書きが無く、よくわからない。


「ゴミを捨てないで。違反者は罰金100ルピー。」という


看板を何度も目にした。


インドにも一応、ゴミ捨てのルールはあるんだ。 』




私は何を見ていたんだろう。


すばらしいよ、ネックさん。



ロックガーデンは結構広く、急いで回っても40分くらいかかった。


インド旅行記 M子の一人旅 -岩2

↑どーん、と置かれた岩。


何を意味しているのかは分からない・・・。



インド旅行記 M子の一人旅 

↑噴水もあって、涼しげ。




インド旅行記 M子の一人旅 -いわ

↑沢山の人形達。



インド旅行記 M子の一人旅 -岩4

↑人形の拡大写真。ちょっと怖い?


これを30年も作り続けてたネックさんも凄いけど


夫の趣味を黙って見守っていた奥さんも凄いと思った。


なにはともあれ、認められて良かったね。チャンド夫妻。





そして、ロックガーデンを出てから、最高裁判所に行く。


ここの観光は事前予約制なので、私達は中には入れない。


でも建築的に特徴があるらしく、外観を見るだけでも価値があるらしい。



裁判所の入り口には、銃を構えた門番が居てビックリした。


いつでも撃てるぞ!という構えだ。



そして、Mが 


「一応、中に入れるか聞いてみる。」


と言って、


銃を構えた門番の前を、断りも無く通過し


受付に進んでいった。



私はビックリして、


まさか撃たれはしないだろうか、とヒヤヒヤしていたが


門番は撃たなかったし、特に注意もしなかった。



結構あっさり入れるんだね・・・。




私も後に付いていったけれど


結局予約がないと、これ以上は入れないという事で


諦めることになった。




とりあえず、目的の物は見れたし、


チャンディガールの観光を終えることにした。


私の白い布製のスニーカーを磨くという靴磨き屋を断り


鳥の死骸や牛糞の道を抜けてバス停に戻った。



それから、また同じくあの


バスのチケット売り場に戻ったけれど


朝と同じおじさんがいて、


やっぱりチケットを売ってくれなかった。


しかし、ここで諦めるわけにも行かない。


なんとしてもデリーに帰られなければ


今夜ここで野宿になってしまう。



近くにツアー会社の看板があったので


行って見た。


割高になってもいいので、ここで持っているチケットが有ったら


売ってもらおう。


ツアー会社の中に入ると


優しそうなお爺さんが居た。


「デリー行きのバスチケットが欲しい」と話すと


「それなら、バス停で買えるよ。」と返される。



「それが、バス停の係員が怒ってチケットを売ってくれない。」と


説明するも


そんな馬鹿な話は無いよ。チケットはバス停で買えるよ。」と


ニコニコと返すおじさん。


私は、



その馬鹿な話がまかり通ってるんだよ!


という言葉を、やっとのことで飲み込んだ。


結局、バスの発車時間ぎりぎりに、


安いエアコン無しのバスに乗ることが出来た。


というか、こういうローカルバスはチケットが不要だった。


(乗車中に、車掌さんが回ってくるので、直接支払う。)


今まで何のための奮闘だったんだろう・・・。



バスに乗り込み、発車まで一息ついていると


窓の外に、ターバンを巻いた謎のインド人が現れた。


何故か、赤いお花を一厘くれた。

そして、私に白い紙を差し出し、


「日本語で私の良い所を書いてくれ。」という。


良いところ、と言われても、今会ったばかりの人の


何を書けばいいのだろう。


意図がわからないうえに、ちょっと怖い。


私は、紙に日本語で、”お花”とだけ書いて返した。


彼はすごく嬉しそうに、意味も聞かずに帰っていった。


なんだったのか、いまだ謎。

オチも何も無く、シュールとしか言いようが無いインド人。



そうして、バスは定刻に発車し、揺れること数時間、

16:00頃デリーに付いた。


ちなみにバスの中でMは爆睡していた。


座りながらに両手を広げて、大の字で寝ていた。


椅子は三人がけの長椅子だったのだけれど


真ん中に座っていたMは、隣のインド人の領地にまで進入し


かわいそうなインド人は小さく丸まっていた。


インド人を丸め込むって、ある意味凄いな。



それから宿を探した。


デリーの町は、数日前より観光客が増えたのか、

私のお気に入りのホテルは満室になっていた。


フロントで、別の宿を紹介してもらい、そこに決めた。



時間があったので夜はバーに行ってみた。


インド人たちがテレビでスポーツ観戦をしていた。


ちなみにインドで盛んなスポーツといえば


クリケット(野球に似ている)だが


これは1プレーに、短くても7時間ほどかかるらしい。


長い。


やっている方はもちろんだけど


観戦するほうも大変そう・・・。


公園などに行くと、


クリケットをやっている大人を毎日目にしたが


1プレーがこんなに長いって・・・仕事、どうしてるんだろうね・・・。




そんなインド人を尻目に、お酒も早々に切り上げて宿に帰った。


ちなみに、お会計はやっぱり間違っていた(゚_゚i)


細かくても、毎回計算しないと、ぼられてます。


ずぼらなO型には辛いところです。



なにはともあれ無事、デリーに帰ってこれて良かった。


そして明日、Mはインドを出国する。


私は、今後の予定について考えながら眠った。

昨日、記事を投稿したところ、消えてしまいました。


バックアップ取っていなくて、全部書きなおし・・・。すみません。


とりあえず、先に小話をアップします。


一応、怖い話ネタなので、苦手な人は読まないほうが良いと思います。



それは、16日目のダラムシャーラでの出来事。


Mと宿の屋上で、夜空を見ながら、ぼんやりしていたとき、


ふと、彼が言いました。


「俺、インドで変な現象を見たんだよね。」



こういう話の切り出しをする時って、


なんとなく幽霊や心霊現象の話だと推測できる。


私は、その手の話が苦手なので


「怖い話?」


と聞きましたが


Mは 「う~ん、どうだろう。」 と考えていた。


確かに、怖いかどうかは、人それぞれ、主観の問題なので


訊ねても意味が無い事かもしれない。



とりあえず、インドで起こった出来事には興味が有ったので


聞いてみる事にした。


ただ、『これはヤバイ(怖い)な』と 思った時点で


話をストップしてもらう事にした。


そういう防衛線を貼っておかなければ、


夜1人でトイレに行けない26歳の哀れな夏 2009年ヴァージョン


始動してしまうからだ。



そうしてMは話し始めた。


「俺、インドで以前、友達と2人で1つの部屋を借りていたんだけど」


「うん。」


「外出するときにさ」


「うん。」


「部屋の電気って、消すじゃん?」


「あ、やっぱ止めて。」



数秒たりとも聞けない。


怖い。




何度も言うが、私は


1998年に見たホラー映画、リングが 今だに怖い。


呪いのビデオの内容が、頭をフラッシュバックする。


これ以上怖い話を聞いたら、眠れなくなるどころか


明日にでも親元に帰国してしまう




結局、その話は数秒しか聞かなかったが、そこで打ち切りにしてもらった。


そして時間も遅かったので、私達は、それぞれの部屋に帰って寝ることにした。



何も聞かなくて良かった。これでぐっすり眠れる。



そう思って、自分の部屋に入ろうとした。



ちなみに、部屋のドアは、大きな南京錠がかけてあるタイプ。


インド旅行記 M子の一人旅 -鍵


↑ちょっと違うけど、イメージとしてはこんな感じ。


これの南京錠を、もっと大きくした感じ。




眠かったので、ささっと


鍵を、南京錠に差し込もうとしたら





南京錠が、独りでに動いた。



触っていないのに、左に一回、右に一回、カクッ、カクッと揺れた。
インド旅行記 M子の一人旅 -鍵
<①、②の順番に、一回ずつ動いた絵>



何が起こったのか分からなかった。


地震じゃない。インドに地震は滅多にないし


第一、地震だったら、左右に小刻みに震えると思う。



ハッキリと、左に一回動き、一秒ほど停止したあと、右に動いたんだ。



私は、パニックになり


それでも、ぎゃぁ!と叫べるほどの度胸もなく


一刻も早くドアを開けて、部屋の中に入らねば!!と思った。


半分パニックになっていて、


その怖い対象であるはずの南京錠を、むんずと掴み


鍵をガチャガチャ回した。


早く部屋に入らねば!


そして部屋に入ると、内側からしっかりと鍵をかけた。


助かった・・・。



なんだったんだ?


南京錠のお化け?


というか、その南京錠をガッチリ握ってしまったが、大丈夫だったんだろうか・・・。



怖い・・・。


しかし、Mや宿のおじさんを起こすのも気が引ける。


どうしよう。



どうしよう、と思いながらベットに横たわると



つい朝まで、寝てしまった。




次の日、そういえば・・・と思い出し、


Mに昨夜の鍵の話をすると


へぇ・・と言って、

彼も、昨夜の話の続きをし始めた。


「俺は、以前


誰も消してない部屋の電気が、


勝手に消されたことがあったんだよ。



なんか、どこからともなく


見知らぬ手が出て来て、


部屋のスイッチを押して、電気を消していったんだ。」





うぎゃああああああああああ。


こわぃ。


インド怖い。


霊感が全く無い私ですから


あれが見間違いか、夢であるように祈っています。

<日付のカウントがずれて、全部で19・20日になります。


あと数日あります。m( )m>



ダラムシャーラ2日目の朝。


朝食をとるため、ガイドブックを頼りに店を探索。


ちなみにMと私は同じガイドブックを持っていたが


Mのは2008年版、私のは2009年版。



Mが、とあるレストランの前で説明を始めた。


「ここの店、有名らしい。


『地元の人が、ダラムシャーラで一番有名な店はこの店だと言っている』


って書いてあるよ。」



しかし、それに反して、その店は薄暗く、観光客が入っている様子は無かった。


そして最新版の私のガイドブックには、その店の名前は載っていなかった。


去年、街で一番の評判だった店が、今年は閑古鳥になっているが、


この1年でこの店に一体何が起こったんだろう。



「なんか事件でも起こしたのかねぇ」と冗談で言ってみるも


あながち冗談だと思えないのが怖い。



そしてまた朝食探しにフラフラしていると


インド人と日本人女性(観光客)が仲良さげに歩いているのを目撃した。


私はふとMに尋ねた。


「インド人って日本人女性の事ってどう思ってるのかな?」


M 「お金目当ての人もいるだろうけど、


 日本人は小柄だし本当に可愛いと思ってる人もいるんじゃない?」



実際、どうなんだろう。


インド人男性に結婚詐欺をされて、泣いている日本人女性が大勢居ると聞く。


ただ、ネット等を見ると、そういう人を批判する意見もあるけれど、


”騙されるのは軽率。男を見る目が無い”という言葉で


片付けるのも酷な気がする。



インド人男性は、大きな目、通った鼻筋、


筋肉質な体を持ち、ルックス的には完璧だ。


例えるなら、褐色の木村拓哉のようなもので


(もしくは福山雅治・山下智久)


それが、インドにはワンサカしていて、各地で口説いてくる。


しかも優しく、話しも上手い。


さらには、断っても断っても、次々と木村A、木村B、木村Cが登場し、


あまりの美形の多さに、


ここはジャニーズのイベント会場ですか?と突っ込みたくなる。



そんなインドで、恋に落ちる乙女が居ても、仕方無い気もするし


実際、本当に幸せになっている夫婦も居るので


詐欺男との見分けはなかなか、つけられないと思う。



そんなことを考え、


特にファンでもないのに頭の中が木村ABCだらけになりながら


また朝食を探しに歩いた。



結局、朝は空いている店が少なく、カフェで軽く済ませた。



その後、インターネットショップに行った。


私の用事はすぐに終わり、


Mはしばらくネット屋に居るようだったので


私は一人、外に出て観光する事にした。



街をフラフラしていると1件の服屋があり、


可愛い感じだったので入った。


2階建ての2階部分に店が有り、


私があがると、すぐ後から店員が入ってきた。



で、入ってから気づいたのだけど、ここは服屋ではなく絨毯屋だった。


ファッションセンスにはもともと自信が無かったけれど


服とカーペットの見分けも出来ない自分にも


驚いた。


高そうなので早々に退散しようとするとやっぱり店員に話しかけられた。


国籍を聞かれ、インドの何所から来たのか、年はいくつなのか。


というか、絨毯の話は全く出ない。



商売する気は無いんだ・・・。



そのまま出てきても良かったけど私も時間は沢山有ったので


インドについて聞いてみることにした。


インドの観光地の写真を見せてもらっていると


彼がお茶を出してくれると言う。


私は、人の出してくれるものは飲まないと決めていたので


申し訳ないけれど断った。


彼は、「ここでは沢山の観光客がお茶を飲んでいくんだよ。


心配なら、僕がお茶を作る過程を全部見てて良いから。」


と熱弁する。


分かったと了解して、彼のお茶の沸かす手元を見ていた。


注いでくれたって、嫌なら飲まなきゃ良いんだし。


結局そのお茶には変なものは何も入っていなかったようだ。



彼は22歳、爽やかボーイで小池徹平を地黒にした感じだった。


「韓国の観光客はよく僕とSEXをしたがるんだけど、断っているんだよ。


ついこの間もさ・・・(略) 。 彼女達はクレイジーだよ。」


と、さも嫌そうな顔をする。


唐突で驚いたけれど、悩み相談のようだ。


商売相手に迫られるのも大変だろうと思うが


私も「困ったね」としか言いようが無く、後に続く言葉を捜し、苦戦していると


彼がさっさっと別の話題を持ってきて、また喋り始めた。



あれは悩み相談ではなく、武勇伝(短編)だったらしい。



それから彼は、私の身につけているものに興味を示し


指輪がえらく気に入ったみたいなので、あげた。


それはハワイで買ったもので、思い出は有ったけど


かなり安く買ったものだったので、そんなに気に入ったなら


あげても良かった。



それから、彼は、今後の私の予定を聞いてきたけれど


実はこの時、今後の事は何も決めていなかった。


北部まで来たので目的は達成したし


デリーより気温も人柄も過ごしやすいこの街で


フライトの日まで数日過ごすのも良いかも知れない。



ただ彼には「今日か明日にはここを発つつもりだよ。」と伝えた。


彼は「今日?そんなの早すぎるよ。」 と言うが


「でもこのあとチャンディガールという街に行くんだ。」と返した。



正直今後、私はMに同行するか迷ってたけれど、そう言った方が賢明だと思った。



しかし彼は


「チャンディガールはとても危険な街なんだ。


君は絶対行くべきじゃない。君はダラムシャーラに居るべきだ。」と言う。


そしてインドがいかに危険な場所か話だした。


彼と友達になったオーストラリア人がその後、


20人のインド人に襲われた話や


銃を持っているインド人も沢山いるという話。


銃と聞いて少しヒヤッとした。


「あなたも、銃を持っているの?」と聞くと


「あぁ、持っているよ。だってズボンの中に隠していたら、


誰も気づかないでしょ?」と言う。



彼が「銃、見たい?」と言うので


銃自体に興味は全く無いけれど、


インドで”一般人が簡単に銃を所持できるのかどうか”は確かめたい。


「うん。銃を見せて下さい。」と言うと


彼は、よし来た、とばかりに


ニヤニヤしながら、チャックを下ろし始めた。



銃って、



そっちの銃か。



とんだエロオヤジだ・・・。


丁重にお断りしたが


ただ、インドの危険性については彼はその後も話しつづけ


怖くなった私は、次の街、チャンディガールに行くのを止めようと思った。



その後、彼が、


夜は一緒にビールを飲みに行こうと言った。



「僕は安全な人だから、もし君が酔っ払ってもホテルまで届けるし


 一切何もしないって言える。だから今日飲みに行こうよ。」


何度か断っても、ビールビールと言うので


考えた末、Mも一緒だったら良いよと答えた。


が「それは良くないよ。その人とは別々の部屋なんでしょ? 


 その人が寝た後にこっそり出てくればバレないじゃない。」と言う。



そうだ。それは名案だ。Mが寝た後なら、バレナイから大丈夫だ。




というか、違う。


話の論点がずれている。


結局ちゃんと断った。



気がつけば一時間以上も話をしていたようでお腹もすいてきたので、


私はその店を出た。


店員は「今日、ビールね!」と言っていた。


だから、さっき断ったのに。



昼食をしたかったので、さっきのネットショップに戻ったがMは居なかった。


次に、宿に帰るがやはり居ない。


少し宿で待ってみたけど帰って来ないので


一人で食事に行く事にした。



ちなみに宿のおじさん数人に


「チャンディガールは危険な街?」と聞いてみたけど


「全然!むしろ安全な街だよ。」と言われた。


あれー。やっぱり彼は嘘をついていたんだ。



道々、Mを探しながら歩いた。お店や通行人、観光客に聞いて回ったけど


「知らないなぁ」といわれた。


昨日私がバックを買った店に再度通りかかり


店員にも聞いてみた。


ただ、私の英語もつたないので


「友達(男)を失ったんだけど、見つけられない。」


と話すと


「ボーイフレンドを無くしたの?


 泣かなくても良いんだよ。ほらそこに別の男が三人ほど居るから


 どれでも好きな人を選びなよ。」


と言われた。


周囲の人が笑っていて、私も笑ってしまった。




その後、ケーキを買い、路上で食べながら、道行く人を見ていた。


と、そこに日本人が通りかかった。


昨日も会った人で、知っている人だったので


食べかけのケーキの皿を持ちながら


喜んで話し掛けたが、


なんと別人だった


というか、日本人ですらなく、チベット人だった。



私は顔の認識能力が低いらしく


よく人間違いをしてしまう。


特にインド人は、皆同じ顔に見えてしまうので


4日目のジャイプル滞在中も、


自分の運転手と間違え


見知らぬインド人男性に声をかけてしまった。


後ろ姿で人違いするならまだしも


真正面から間違えてしまい、収集がつかなくなる。


正面から堂々と、


「ハロー。」と声をかけるも、相手の様子がおかしいので


念のため、「あなた、K(運転手)だよね?」と確認すると


「違います。」と、言われた。


間違えた。


そのまま謝って退散すれば良かったものの、


焦ってしまい、では、あなたは誰ですか?」と、


更に突っ込んで聞いてしまった。


そして「私はラジャです。」と返された。



人間違いをした上に、相手の名前を聞いてしまい、


退散するタイミングを完璧に逃してしまった。



気まずい空気が流れる。

私も焦ったが、相手も急にそんな事を言われ、とても混乱していたらしく


それから彼が言った台詞は


「あなたは、幸せですか?」だった。


私は、それを聞いてかなり驚いたし、こんな状況を作ってしまった今、幸せでは無かったが


「はい。幸せです。あなたはどうですか?」と答えると


相手も 「はい。幸せです。」と言っていた。



そして、バーイと言って私達は別れた。




そんな事もあり、また人違いをしてしまったけれど


今度は焦らず、きちんと状況を説明し、


日本人の友達を探していることを伝えた。




彼は、「そういえば、●●という店で、さっき日本人を見たよ。」


と教えてくれたので


私はお礼を言って、その店に行ってみた。


しかしMは居なかった。


代わりに、店でサンタクロースのシールを見つけた。


インドにもサンタっているんだ。



その後、どこからともなくMが現れた。


指輪をインド人にあげてしまった事、


チャンディガールには行くなと言われた事などを話すと


「指輪、取り返してきたら?思い出あったんでしょ?」


と言われた。


確かに思い出はあったけど、一度あげてしまったものを


返せというのも、微妙だ。


迷ったものの、思い出の品を、嘘つきインド人にあげるのは嫌だったので


やっぱり取り返しに行った。


Mが行って指輪を取ってきてくれると言ってくれたけど


日本人女性は弱い


というイメージを持たれるのも嫌だったので


ここは自分で行かなきゃと思って、再度あの服屋、もといカーペット屋に行った。


Mに表で待っててもらって、一人で中に入った。



店に入ると、やはり彼がいて「こんにちは」と言った。


「やっぱり指輪返してくれる?」と聞くと


彼は「あれ、400ルピーで売れたよ。」と笑う。


私は悲しくなり、彼の右手を掴んで確認すると


私の指輪は、ちゃんと薬指にはまっていた。



彼は「冗談だよ。」と笑っていたけど


私はそれが冗談にも思えなく


「指輪、返して。売るんでしょ。」と外そうとした。


彼は慌てて


「冗談だって。売らないよ。


他の人からもらった指輪だって、ほら大事にしてるんだから。」


と、他の指の指輪を見せた。


彼の手にはその他にも指輪が有って、全て観光客から貰ったものだという。


ただ私はもう、そんな事はどうでも良く

自分の指輪を返して欲しいだけだった。



「分かった。返すから。 明日またここに来たら、返す。」


「嫌だ。今夜、ここを発つから、今返して。」


しばらくもめて、彼はやっと返してくれた。


「本当に売る気なんて無かったんだからね。」と言っていた。


最後に「今日、ビールね!約束ね!」と言っていたけど聞かない振りをした。



それより、私が中指にはめていた指輪が、インド人男性の薬指に収まっていた。

ショック・・・。指ってどうやったら細くなるんだろう・・・。



それから、ご飯を食べに行った。


ダラムシャーラにある日本食レストランは本当に美味しくて


久々に飲むお味噌汁にちょっと感動した。


店内には日本人らしき人が多かったけれど


海外の人も沢山いた。



隣の席はイギリス人青年で、

日本食が好きらしい。ほのぼのしていた。


蚊を殺して得意げな顔をしていた。



ちなみに、ここには、アメンボに似た、足が異常に長い虫が飛んでいる。


ガガンボという名前らしいが、私はそれが大嫌いだった。


ある日本人バックパッカーが


「この虫は、自分の足同士が絡まって、身動きが出来なくなって死んじゃうんだ。


けっこう可哀想な奴なんだよ。」


と説明してくれた。


もしガガンボが、人間だったなら、間違いなく美男美女だったと思う。


12頭身以上あり、細く長い手足を持つ、そんなガガンボさんの足が絡まっていたら、


きっと周囲の誰もが手を差し伸べると思う。けれど、残念ながら彼らは虫なので


私には同情すら出来なかった。


また、その日本人バックパッカーは


チャンディガールに行った事があるというので色々聞いてみた。



チャンディガールは、インドの高級街。


一泊3万円の日本顔負けのホテルが立ち並び


彼も宿代の高さに宿泊できず、ダラムシャーラに来たそうだ。


危ないどころか、高級で綺麗な街なんだ。


利害関係の無い日本人から聞く情報が、一番信用出来るので


これが本当のところなんだろう。



話を聞き、ご飯を食べ終わると、そろそろバスの時間だ。


Mはチャンティガールに向けて発つらしい。



正直、ダラムシャーラはいい街だけど


あの店員に出くわすのも嫌だし


チャンティーガールの話を聞いて興味も沸いたので


一緒に行くことにした。



バス停までタクシーで行った。


しかしバス停に着くと係員が


「君達のバスはもう行っちゃったよ。」


という。


そんなはずは無い。


私達のバスは22時発で、今はまだ21時45分だ。


そういうと


係員に「君達のバスは21:30発だ。」と返された。


そんな・・・。


昼間に、別のバスの係員に確認したら、確かに22時発だって言ってたのに・・・。


一日一本しかないこのバスを逃したら


明日まで待たなくてはならない。


私はそれでも良かったのだけれど、Mは今後の予定の関係で


なんとしても今日移動したいようだった。



タクシーのおじさんは


「一つ先のバス停まで連れて行ってあげるよ。


バスを追い抜いて、22:30までに次のバス停に着けば間に合うよ」


と言う。


なんか胡散臭い気もしたけど、確かに人っ子一人居ないこのバス停からは

バスは行ってしまったんだろう。




次のバス停までタクシーでとばして貰った。


おっちゃんは、本当に急いでるらしく、山道を豪速で走っていった。



それから22:15、次のバス停に到着した。


そこにはさっきのバス停と違って、沢山の人が居たので

ちょっと安心した。


周辺の人に、チャンティーガール行きのバスをたずねると


もうすぐ来るよと言われ、暗いバス停で、待っていた。




何分か遅れて、バスがやってきたけど、それを見て嫌な予感。




中を見ると、やっぱり満席だ。


ここからチャンティガールまでは6時間ほどあるけど


席が無ければ、このバスでずっと立ってる事になる。


幸い、ドアからはみ出してる人が居なかったことと


屋根に乗ってる人も居なかったので


それだけでも良かったかもしれない。



ただ、山道はバスが半端なく揺れた。


ディズニーシーのアトラクションの


インディージョーンズに似た感覚だった。


ただ、こちらは、遊びで揺れている訳ではないので


私は青ざめていた。


このバスがいつ転倒するのかヒヤヒヤした。


飛行機以外では滅多に酔わないのだけど酔い止めを飲んだ。


飲まなかったら悲惨な事になっていたと思う。


結局夜22:30に乗車し、朝5:00まで通路で立っていた。


中に居たインド人は


座席に座っていいよと言ってくれたり親切にしてくれたが


流石に自分の席ではないので


御礼を言って、断った。



途中、パーキングエリアで降りて休憩した。


チャイを飲みながら、ふと疑問に思う。


このチャイはとても熱いのだけれど


入れてある容器が、薄いプラスティックで


溶けはしないが、素手で持てないくらいに熱い。


インド人達は、この熱さを何とも思っていないのだろうか。



と、思って、横のテーブルを見ると、


机にチャイがぶちまけられていた。


こぼしたんだ。やっぱり熱かったんだ・・・・。


しかし、誰も拭かない。




あとはカナブンがやたら多かった。机の上にゴロゴロ転がっていた。




またバスに乗り、しばらくして

気がつくと、私の肩にカナブンが止まっていた。


さっきまで、居なかったのに。



私はこのカナブンが


どうして私に止まっているのか


分からなかった。



横には、私の2倍、体積があるオジサンが居て、


周囲にも沢山の大きな人が居るのに


何で私に止まるんだ。



緑色に光るカナブンは、不気味だった。


しかし、ほとんどの人が寝ているバス内で


騒ぐわけにもいかず、


Mに助けを請うべく後ろを見ると、


彼は



立ちながら寝ていた。





両腕を延ばし、手すりに捕まりながら寝ている。


それは、


まるで十字架に貼り付けられたキリストのようだった。



神々しい姿に恐れ入っていたが、


私はその神を起こし、カナブンを窓からつまみ出してもらった。