早速トントにそのことを話すと
「宇宙(ひろし)君、本当にそうですね。点々といえばこんな事もあるんですよ。」
といって教えてくれたことがある。


あの頃のトントとの学習は何もかも本当に面白かった。
ほとんどが物理の法則や化学の基礎知識だ。
とりわけ興味深かったのはあの時の「生命」についての授業だ。

ある日トントは突然ぼくにこう問いかけた。

「宇宙君、生命って何だと思いますか?」

僕は以前トントから教えてもらっていたDNAのことを思い出して
「自己複製のシステムを持っていること、でもウイルスみたいなヤツは違う。」
と答えた。

「そうですね、ウイルスは他人の細胞に入り込んで無理やり複製を作らせるシステムなので生命があるとは言いきれないですね。でももう少し別の見方もあるんですよ。」
「そうなの?別の見方?生命って、生きてるってどうゆう事なの?」

トントは僕に玩具を見せながら言った。
直径が2㎝くらいのステンレス球が6個ブランコのようにフレームからぶら下がっている卓上の玩具だ。
オシャレなオフィスの家具コーナーでよく見かけるアレだ。
「今玉は全部止まっていますね、それじゃ宇宙君一番右にある球を1個だけ揺らして残りの球にぶつけてみてください。」

カチッカチッと球のぶつかる音がして、ブランコは左右に揺れる。
正確には揺れているように見える右の球が隣の球にぶつかった時、
一番左の球が弾かれて左に飛び出す。
左の球が戻った時、今度は右の球が弾かれる。
その繰り返しがしばらく続く。

真ん中にある4個の球は全く動かない。
不思議な感じがする魅力的な玩具だが、
物理の原則をはっきりとそこに示している。