ミリンダはぴくりとも動かない。
生命維持装置につながれてはいるが、動作の度にバフーバフーと音を立てる呼吸補助装置と、常にカタカタと震えている血液循環装置だけの旧式のものだ。モニターは力なく不規則な心臓のパルスだけを表示している。

喉に巻かれた包帯らしき物はどす黒く変色した血液で半ば固まり、なおシーツを赤く濡らし続けている。出血は続いている。この状態が続けばあと数時間で致死量の血液が流れ出てしまうだろう。

突然荒々しくドアが開けられ、数人のコマンダーがストレッチャーを押して飛び込んできた。医師らしき一人が瞳孔と首の様子を手早くチェックし、コマンダーにてきぱきと指示を出す。数本の薬剤が体内に注入され、包帯を切り取られむき出しになった喉の傷に止血剤がスプレーされた。

ストレッチャーの左右から透明なカバーが迫り出してきてミリンダの体を閉じこめると、コマンダーはニヤリと笑い数個のボタンを操作した。
小さな数字が光電管に表示され、カウントを始めると、足元から吹き出した乳白色のガスがミリンダの全身を包んだ。  つづく