
「宇宙(ひろし)君、大丈夫か?しっかりしろ!」
誰かが僕の名を呼んでいる。誰かが肩を揺すっている。真っ暗の空にただ一人放り出されたような感じだ。
コンソールのモニターは冷静さを取り戻し、バイオリストコンピュータのログオフを要求している。要求に応じると、ホストコンピュータは戦闘モードからバイオリストコンピュータの接続を解除した。
包み込んでいたシートが左右にゆっくりと開きながら起き上がり、コックピットから宇宙を解放した。3Dモニターは格納され、マニュアル通り記録の分析が始められた。
ヘッドセットをはずしてもまだ視覚がはっきりしない。吐き気も感じる。何度も経験しているがこの時間だけ慣れることができない。
訓練終了の文字の横を戦闘の分析リストがスクロールしていく。
2-3度首を回し、深呼吸すると感覚が戻ってきた。
「ずいぶん上達したじゃないか。最後は残念だったな。」
教官の声でやっと現実の世界を思い出した。
「あっ、教官、またやられちゃいました。くやしいです。」
最後の攻撃を受けるまでに宇宙が取るべき選択肢はいくつかあったが、それより宇宙が今一番気になっていることは、接近戦を挑んできた敵が使用した武器のことだった。
「防御はきちんとしてたと思うんですけど、最後は何が原因だったんですか。」
つづく