パンッと短い破裂音を発して細かい金属片が花火のように広がった。
センサーを攪乱するチャフだ。モニター一面に障害物の表示が広がる。

すり抜けていく敵をロックオンし、その推進装置に衝撃ビームを叩きつけるまで正確に2秒かかった。ビームは狙い通り推進装置を破壊し、航行不能になった船体は激しく回転しながら弾き飛ばされたように遠ざかっていく。

おかしい。空き箱のような軽い手応えだ。
デコイ(囮)か!
しまった。バックを取られた。

チャフの影が消えたモニターが短い警告音を発した。ブルーの座標ラインの中にオレンジの特別色に明滅する敵機マーカーが異常な速さで接近する。
トップスピードで方向転換を繰り返すが振り切れない。ぴたりと追従する新型攻撃機の姿が3Dモニターにもくっきりと浮かび上がった。
ロックオンされたことを示す警告ランプが赤色に光り出した。コンソールはエスケープモードのタイミング計算に結論を出せず、モニターのカウントダウン数値は「3」のまま動かない。

防御バリアーの出力を最大に上げる。これでビーム攻撃にはとりあえず耐えられるはずだ。

意に反して敵は攻撃を仕掛けてこなかった。いつでも打ち落とせるという余裕を示しているのだろうか。逃げられるものなら逃げてみろという挑戦なのか。

実際ワープのタイミングを探しながら逃げ回る30秒はとても長く感じた。やっとの事でコンソールが答えを見つけ出し、エスケープモードへの突入を知らせるタイミングモニターのカウントダウンが「2」「1」と変わるのを確認する。

だが「0」を表示するわずか前、ドンッという衝撃が背後から襲いコックピットの明かりが一瞬で消えた。間をおかず襲ってきた、引きちぎられるような激しい爆風に宇宙(ひろし)は全ての感覚を失った。     つづく