
朝起きた時、汗をぐっしょりかいていた。体がしびれるように痛い。
今運動会の練習でハードな毎日を過ごしている僕だけど、組み立て体操とかけっこだけじゃこんなに疲れないと思う。夢のせいだ。
夢は本当にはっきりしていて、ハートマンは僕自身だった。
戦いの場面では攻撃を受けると僕の体が本当に痛んだ。夢を「見ている」のではなく「体験している」のだった。
スペースギアを操縦しているときは気持ちよかったけど、悪い奴と戦うときはドキドキして心臓が2倍に膨らんでしまったようだった。
ハンディウェポンで敵を丸焦げにした時はヤッターって思ったけど、そばによって死体を確認した時はおなかがきゅーっと縮んで、泣きそうになってしまった。
それからお酒の味も女の人とのキスも体験した。
あまりにも急にいろいろな経験をした気がする。僕一人ではとっても耐えられないと感じ始めていた。夜中、夢のショックで目覚めることもあった。
「ねえトント、誰にも話しちゃダメなの?」
虫と言うより教師の存在になったカメムシのトント。その背中のハートに触れながら宇宙は話しかけた。
「今は我慢しなさい、宇宙くん。君は選ばれた子供だ。きっと耐えられる。」
「ホントなの?誰が僕を選んだの?どうしてボクなの?もうやめてもいい?」
「答えはやがてわかります。今は頑張りましょう。このバイオリストコンピュータが神経組織の組み替えを終えさえすれば、実際の経験と知識を分離できると思います。さあお休みなさい、ひろし君。」 つづく