「ううん、大丈夫。ちょっとね。」
「そこの一番上の引き出しに入ってるわよ。ママ今忙しいから自分で出してくれる?」
ああ、よかった。ケガなんかしたら、もう公園行っちゃダメって言うもんな。

その時は、バンドエイド貼っただけだった。あれが本当に始まったのは次の日公園で又フーセンカズラの種を探している時だった。
 
腫れたところがすごく痛くなってきたので、バンドエイドをそーっと剥がしてみた。赤くなっている中心が黒い豆になっている。いや豆じゃない。種だ。ハートのマークが付いてる。傷に種が入ってたのか、だから痛いんだ。取ろうとすると、もっとすっごく痛い。もう涙がじわってきた。今日はもう帰ろっと。仕方がないからあきらめてママに見せよう。

「やっぱりお医者さんに行く運命にある宇宙君なのだ。」
そうつぶやいて帰りかけたとき、どこから飛んできたのか小さな虫が左手首にとまった。
なんだカメムシか。臭くなるから潰したりしないよ。ふっと吹き飛ばそうとすると、カメムシの奴長い触覚で僕の痛いとこちょんちょんしながら僕を見た。

ホントに見た。
昆虫は複眼なのに確かに目と目があった。

「おまえなあ、僕のそこ痛いんだから。」
そう言ってふと気が付くと、痛くない。
「えーっおまえ、ナウシカの王蟲みたいなやつだな。治してくれるの?」そう言って振り払うと急に激痛が来た。
「ごめんね、嫌いだからじゃないんだよ、ここは痛いとこだからだよ。」
 
僕は虫も大好きなんだ。いつもだったら絶対家に持って帰って飼うところだ。ちょっとかわいそうな気もして、どこに飛んだのか探した。でも見つからない。
草をかき分けてみても、いない。   つづく