寺町三条気分を高めるために
SSを書きたいと思います。
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その日は店長に頼まれて、四条に使いに出ていた私は、用事を済ませて河原町通を北上し、寺町三条へと向かっていた。
途中、抹茶スイーツの店に並ぶ長蛇の列に驚きつつ、振り返る。
古都京都は、和スイーツが人気であり、中でも抹茶はさらに人気が高い。
だけどこの人気はどうしたことだろう?
圧倒されながら、寺町三条の『蔵』に戻ると、
「葵さん、お使いありがとうがざいます」
と言った店長の隣に、ホームズさんの姿もあり、私は「わあ」と声を上げた。
「ホームズさん、来ていたんですね」
「ええ、お疲れ様です、葵さん。四条の人出はどうでしたか?」
「四条はいつも通りでしたが、河原町通の抹茶スイーツのお店の行列に驚きました」
私がそう言うと、ホームズさんと店長が揃って「ああ」と頷く。
「人気ですよね」とホームズさん。
「辻利の抹茶パフェもすごい行列でしたが、あそこはさらにですねぇ」
続いて店長が相槌をうちながら言う。
「美味しいんですか?」
「とても美味しいそうですよ。僕は食べられていないのですが、テレビでも紹介されたそうです」
「ああ、それで」
私は頷きながらも、少し不思議だった。
京都市内の有名店のほとんどは、それぞれに美味しく、大抵テレビでも紹介されている。
あのお店だけ、異常とも思える行列はどうしてなのだろうと。
「ちなみに、その番組が『嵐にしやがれ』らしく」
そう続けたホームズさんに、私はすべてが腑に落ちて大きく頷いた。
「それは、あの大行列も納得です。さすがですね」
「本当に、国民的アイドルはすごいものですよねね。ぜひ、われらが三条の抹茶店にも来てもらいたいです。僕の贔屓店なので」
そう言って拳を握るホームズさん。
京都愛もさることながら、さらに狭まり三条通愛も強いようだ。
(きっと寺町通愛も強いに違いない)
さすが、と感心させられつつ、
「三条の抹茶店って?」
と私は小首を傾げた。
「ご存じなかったですか?」
ホームズさんが意外そうに言うと、
「清貴、連れて行って差し上げたらどうかな。葵さんにはよく無理をしてもらっているし」
と店長が微笑んで言う。
「ありがとうございます。
では、葵さん、行きましょうか」
嬉しそうに言うホームズさんに、私は戸惑いながら頷いた。
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そうして、ホームズさんが連れて行ってくれたお店は、ビルの6階にあり三条通と鴨川を見下ろすことができた。
「見晴らしが良いでしょう」
お店の名前は、『京はやしや』さん。
「創業260年の老舗で、宇治に茶園を持つ和スイーツのお店で、元祖抹茶パフェのお店なんです。三条贔屓というだけではなく、僕のお気に入りのお店なんです」
※画像、京はやしや様[LINK]
食べた抹茶スイーツは、上質な抹茶の風味と絶妙な甘さ加減で、決してしつこくなく上品な味わいであり、まさに大人の和スイーツという感じがした。
「本当に美味しいです!」
「それは良かった」
美味しい和スイーツに舌鼓をうちながら、鴨川や三条通を眺める。
目の前には、優しく微笑むホームズさん。
思わぬ幸せに、緩んで仕方のない頬を隠すようにそっと湯呑みを傾けた
それは、ビタースイートな午後。
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某書店の店長Aさんに
「私が一番好きな抹茶スイーツの店は、『京はやしや』さん」
と聞いて行ってみたところ、本当に美味しかったので、書いてしまいました。
Aさん、ありがとうございました。
ちなみに河原町の抹茶スイーツのお店は、さすが国民的アイドルのパワー、行列がすごすぎて、まだ食べられてないです
( *´Д`*)