今日、5月3日は
寺町三条シリーズの葵の誕生日でして、
昨日からお祝いのメッセージをいただいたり、ハッシュタグ( #真城葵2017生誕祭 )で呟いていただけて、とても嬉しく思います!
ありがとうございます!!
(〃ノωノ)
記念に1巻から最新刊までの葵ちゃんの姿をまとめてみました✨
ヤマウチ先生、ありがとうございます!
こう見ると、
大人っぽくなってますよね〜
(絵師様はさすがです)
(絵師様はさすがです)
バースデー記念と感謝御礼に
ちょっぴりSSをお届けします
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6巻&6.5巻で描いた
葵の誕生日パーティの時のこと
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ホームズさんの即席美術講座、
そして、謎解き宝探しと大いに盛り上がった私の誕生日パーティも今は少し落ち着いて、
皆はそれぞれ、楽しげに過ごしている。
オーナーは柳原先生や美恵子さん、好江さんと語らい、
小松さん親子は上田さんと、香織は佐織さん、利休くんと楽しげに話していた。
「…………」
そういえば、ホームズさんはどこだろう?
ホールを見回すも、彼の姿は見えない。
ここだろうか?
と、バルコニーに出るも、ホームズさんの姿はなかった。
ホールは熱気に溢れていたので、風がとても気持ち良い。
心地良さに目を細めながら、夜空を仰ぐと、半分の月がとても美しかった。
「……綺麗」
ぽつりと洩らすと、
「葵さん、『月がとても綺麗ですね』」
背後で声がして、私は弾かれたように振り返る。
そこには、ホームズさん。
口許に笑みを湛えて、こちらを見ている。
『月がとても綺麗ですね』
その言葉に、頬が熱くなって、思わず俯くとホームズさんはパチリと目を開いた。
「どうされました?」
「え、あの、それって、もしかしたら、その、今のって『夏目漱石』かなと」
俯いたままつぶやくと、ホームズさんは「え」と動きを止める。
「葵さん、この言葉が漱石の引用だと知っているんですか?」
「あ、はい」
かつて、夏目漱石が英語を教えていた時、生徒が『アイラブユー』を『愛しています』と訳すると、『日本人はそんなことは言わない。「月が綺麗ですね」とでも訳しておきなさい』と言ったというエピソード。
つまり、夏目漱石の訳において『月が綺麗ですね』は、愛の告白なのだ。
私の返答に、ホームズさんは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、身を乗り出す。
「そ、それじゃあ、僕が以前『月が綺麗ですね』と言ったのをご存じですか?」
「以前って、いつですか?」
「斎藤邸で、円生とやり合った後です」
「……ああ」
言ってましたね、と私は頷く。
「あの時はどう思われましたか?」
「えっと、月が綺麗でしたし、そのままの気持ちを口にしたのかと」
そう答えると、ホームズさんは「そうですか」と苦笑してうな垂れる。
「も、もしかして、漱石の引用だったんですか?」
「………はい。
特別な反応がなかったので、あなたは漱石のエピソードをご存じないのかと」
あの時のあの言葉が漱石からの引用だったなんて!
嬉しいけれど、『本当に!?』という戸惑いが勝る。
「まさか、ご存じの上でのスルーだったとは、やはり葵さんは、無自覚にひどいですね」
「そんな!知ってても、そこでそんな風には思いませんよ!だってホームズさんはいつだって『花が綺麗ですね』『星が綺麗ですね』『この壺、美しいですね』と、いつだって何かを褒めてるじゃないですか!」
「そうかもしれませんが、やっぱり葵さんは無自覚にひどいですよ。『安定の葵さん』ですね」
と、少し意地悪な横目を見せる。
「ええ!?ホームズさんが分かりにくすぎですよ」
戸惑いの声を上げたその時、
「いや、ホームズ。
俺は葵ちゃんの気持ちに賛同するな」
と、バルコニーに秋人さんが現れた。
どうやら、話を聞いていたようだ。
「……突然現れてなんですか」
と、ホームズさんは冷ややかに一瞥をくれる。
「だってよ、『月が綺麗ですね』が、愛してるの意って、なんだそれ。分かりにくすぎたろ、その比喩、面倒くせぇ」
秋人さんは頭の後ろに手を組んで、月を眺める。
「あなたには、この情緒が分からないんですよ」
「情緒って、んなもん、いらねぇし。
だったら、なんだよ、『あの月に行ってみたいですね』って言ったら、エロい誘いってことか?」
「……あなたは、本当に」
と、ホームズさんは、額に手を当てる。
秋人さんは「おっ、そうだ」と何かを思い出したように、私の方を向いた。
「葵ちゃん、今日から18だし、いろいろ覚悟しろよ」
「覚悟、ですか?」
「ああ、ホームズの奴、今や最強の免罪符を手にしてるからな」
「最強の免罪符?」
「そう。もう、ホームズはマジで大変、ギリギリのライン、爆発寸前なんだ。なっ、ホームズ」
と秋人さんは振り返って、ホームズさんを見るなり、びくんと体を震わせる。
ホームズさんは満面の笑みで、
「秋人さん、あっちでお話しましょうか」
と秋人さんの肩に手を乗せた。
「あー、いや。俺はそろそろ」
「いえいえ、ああ、秋人さん。随分と肩が凝っているんですね。ここに肩凝りのツボがあるのをご存じですか?少し痛いですが、効きますよ」
そう言って、ホームズさんは秋人さんの肩をグッとつかむ。
うぎゃあああああ
と、秋人さんの汚い悲鳴がバルコニーに響いた、
それは、楽しい誕生日の夜。
〜fin〜
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安定のしょうもなさで失礼いたしました
(*´艸`*)
ありがとうございます✨