先日、お遊びで掌編を書こうとして
冒頭を書いたところ、

「あ、これ、結構な長さになりそうだから、今はやめとこう」

と断念したものがあるのですが

せっかくなので、その冒頭だけ
ご紹介いたします

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拝み屋さんと鑑定士

京都寺町三条のホームズ
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わが家は祇園の拝み屋さん

act.3

※冒頭のみです※
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拝み屋さんと鑑定士 Ⅲ
act.3


比叡山の麓。
北白川に、明治に建てられた西洋風建築の屋敷がある。
異国への憧憬が込められたジョージアン様式のその邸宅は、かつて眩いばかりの輝きをもって道行く人の目を留めていたが、今はその影もない。
伸び尽くした蔦が外壁を覆い、長年手入れをされていない庭はまるで侵入者を拒んでいるようだった。



「近所の人たちは、ここを『お化け屋敷』と呼んで恐れているそうです」

家頭清貴は屋敷を仰ぎ、愉しげに口角を上げる。

「それで、清貴さん。
どうして、僕をこの屋敷に?」

賀茂澪人は隣に立つ自分よりも少し背の高い男・清貴を見上げて、微かに首を傾けた。

「『お化け屋敷』と噂が立つのも納得の、『何か』いそうな雰囲気でしょう?」

手を広げてなんだか嬉しそうに言う清貴を前に、たしかに、『いかにも』な廃屋やけど、と澪人は肩をすくめる。

「そんなん、ここに限らず、どこでもいますわ」

「そういうものなんですね」

「そうです。もしかして、評判のお化け屋敷やから連れてきた、いうわけですか?」

冷ややかに一瞥をくれる澪人に、「いえいえ」と清貴は首を振る。

「かつてこの屋敷の主人だった孫娘さんから依頼を承りました。ここに柱時計があるそうで、それが大層値打ちがある品らしく、鑑定を依頼されたんです」

そうですか、と澪人は相槌をうち、黙って次の言葉を待つ。

「その柱時計は、とっくに止まっているのですが、時々音が鳴るそうなんです。それがとても不気味だと。それも調べてもらいたいと。
これは、あなたの管轄ではないかと思いまして。拝み屋として時計を視(み)てもらいたいんです」

「はぁ、そういうことですか、
もし人ならざるものの仕業でしたら、祓ってもよろしいか?」

「いえ、視るだけで良いそうです。なにがどうして音を立てているのか、それを知りたい、と」

「なんや、訳ありやな」

と独り言のように洩らして腕を組む澪人に、「ほんまやね」と清貴は笑い、すぐに真顔になる。

「それでは澪人くん」

「ええ、ほな、行きましょか」

ぎいい、と錆びた音のなる柵門を開けて、二人は今や『人』の気配はしない屋敷の中へと入っていった。



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ここまで書いて
「あ、これ、長くなる、だめ絶対。
今は書けない」
と中断したのですが

いつか続きを書けたら良いな、
と思っています(*´艸`*)