四太郎(仮名、中2)が

 
先日、学校の平和集会の出し物で
劇をやったそうだ。
 
 
 
シナリオから自分達で作って
小道具なども作ったらしいが
 
 
平和集会なのでテーマは戦争と平和。
 
 
 
劇は、年老いたヨシオ(仮名)君が
 
「…みんな天国で元気にしてるかな…」
と、呟き
昔を回想するシーンから始まる。
 
 
特攻隊の隊員だったヨシオは
旅立ちの朝に
遅刻して
 
ひとり
行きそびれてしまったところ
 
間も無く終戦を迎え
 
現在を生きている
 
という設定。
 
 
 
飛行機を段ボールで3機作り
 
遅刻するヨシオ以外の3人の特攻隊員が
飛び立つはずだったが、
 
劇の直前までかかって作った
段ボールの飛行機に
 
乗る予定だった隊員役の
一人が
本番の直前になってから
 
やっぱりどうも
飛行機のサイズが小さいから乗れない
言い出した。
 
確かに少し小さめではあったが、
その子の体の大きさで乗れない訳はないと
みんな思った…
 
が、
 
ちょっとシャイな彼が本番を前にして
そんな事を言い出したのを
仕方ないと
みんな思ったらしい。
 
 
そこで
 
ストーリー的にはちょっと変だが
教官役のナオト君(仮名)が
急遽、代わりに出動することにした。
 
 
ちなみに四太郎はアメリカ軍の司令官役で
飛んできた特攻隊の飛行機を見て
あれはなんだ!?
と、叫んで
撃ち落とすよう命令するという役だったそうな。
 
 
 
そうして
仲間はみんな逝ってしまい、
 
舞台は現代に戻って
 
年老いたヨシオが一人
 
もう二度と…と平和を祈る
というラストだったらしいが
 
 
神妙な面持ちで進んでいた劇の終盤で
 
 
舞台裏の事情により
隊員の代わりに急遽出動することになった
教官のナオト君が
 
結構ノリに乗っていて
 
段ボール飛行機に足を突っ込んで両腕を広げて飛び周りながら
 
突然アドリブで
 
 
 
「…ヨシオ……聞こえるか…?」真顔
 
 
と台詞を入れて来たらしく、
 
登場人物達はその余りのハマりように
笑いを堪えきれず
 
思わず笑ってしまった…と。ニヤニヤ
 
そうして
 
決して笑いに持って行ってはいけない平和集会で
笑ってしまったことを
あとからみんなで
反省したとか。
 
 
昨今の中学生は
ほんと真面目。
 
校内暴力が横行していた世代からは
考えられない。
 
 
ジージーだね。(ジェネレーションギャップの略)
 
 
 
 
 
 
 
もう随分前になるが
TVの特番で
 
特攻隊の姿を追って
知覧の町を訪れて取材したものを観た。
 
 
 
 
出動命令が下るまでの間
隊員達が過ごしていた下宿の
 
おかみさんとその娘さん二人が
インタビューに答えていた。
 
 
おかみさんが言うには
 
ある隊員さんが
 
自分が行って任務を遂行したら
 
蛍になって必ず此処に戻ってくるよ
 
と言い残して飛び立ったと。
 
 
そうして
 
その数日後の夜、
 
見た事もないような大きな蛍が一匹
 
その家の庭に飛んできて
 
しばらく庭の草の上に止まっていたと。
 
あの蛍は
そうだったに違いないと
 
おかみさんは話していた。
 
 
 
 
劇の話を聞いたので
 
四太郎に昔観たそのTVの話をした。
 
蛍の話をすると
 
私の体には鳥肌が立った。
 
 
 
 
四太郎は黙って聞いていたが
しばらくして
 
 
「ほんとはねー…」
と言って話すには
 
 
劇中の
出動前の場面で
隊員の一人が
 
「…おれ、やっぱり死にたくない…
好きな子がいるんだよ…!!!」
 
というセリフがあって
 
四太郎は
最初に大筋を書いてきてくれた
仲間のシナリオの
そのセリフにグッと来たらしいが
 
恥ずかしくなってしまったのか
その役の子が
本番ではそのセリフを飛ばしてしまったらしく
 
四太郎はそれが
 
残念だった、言って欲しかったなー
 
と言うので
 
TVのもう一つのエピソードを思い出した。
 
 
 
 
その下宿屋さんの二人の娘さん達の話では
 
特攻隊の隊員さん達は
みんな揃って
大変カッコ良かった
 
素敵だった、と。
 
だから
どの人からプロポーズされても
絶対にお受けしようと思っていた、と、 
 
二人共がそう言って深く頷いておられた。
 
 
 
プロポーズがあったのかどうかまでは
取材ではわからなかった。
 
ただ、お二人とも
 
ずっと独身を貫いて居られるとの事だった。
 
 
 
 
 
四太郎はその話を聞いて
 
「まじで…。
 
……すげー……
 
それ、どっちもカッコイイな……」
 
と、呟いていた。
 
 
 
戦争で
お国のためにと
散って行った若者達は
敬われるべきであると思う。
 
でも、だからと言って
戦争を肯定してはいけないとも思う。
 
 
ただ
 
中学生が自分達で考えて作ったという劇の
シナリオを聞いて
 
この国で生きていた人達の
スピリットは
 
今も生き続けているのだと
改めて思わされた気がする。
 
 
 
No More War.