あの子の名前じゃなくて。
口止めみたいにユウナじゃなくて。
茶目っ気たっぷりのユウカじゃなくて。
いい子の言う事を聞くユウコじゃなくて。
わたしの名前を呼んで。
呼べる状況になった、今。
そんな顔して、呼ばないでよ。
帰る前に
いい子だねってしないでよ。
しまったって顔して
顔を覗き込まないでよ。
わたしは強い子だよ。
言い聞かせてきたでしょ。
牛乳だって
飲めるし。
何を言われても
無知に救われてきたし。
あなたがいなくたって
ちゃんと
大人になれるんだからね。
あなたの言葉
あなたのすべてを拒否したい。
言えなかった
あの日のわたしじゃないんだから。
泣かなくちゃ
わかってくれないって
一言も話さなかった頃のわたしじゃないんだから。
あの日と同じ。
わたしは息苦しい。
あなたといるから。
あなたが
わたしを大切にしないから。
それを、癖みたいに続けないでよね。
わたしの名前を呼んでくれてた人が
違うから、あなたを思い出せない。
そうでしょ?
違う?
そんなのどうだっていい。
今さら、元の場所に戻りたくなんかない。
時を、巻戻せると
巻戻しボタンを押して
仲直りしてた頃とは、訳が違うんだよ。
でも
わたしに言っていた状況は
変わらないよ。
あの日のあなたは
今とまったく同じ状況だと言っていた。
ちょっと違うところもあるけど。
あの日のわたしと
今はそんなに変わってない。
やっぱり
あなたに逆らえないから。
どんなに拒絶しても
あなたを思い出して
恋しがってる。
どうして
あの頃のことばかり
思い出すんだろう?
わたしが好きなのは
あなたじゃないのに。
わたしの名前を呼んでほしい。
ただそれだけ。
それを強く願ってたからかな。
わたしは
言う事を聞くいい子じゃないよ。
本当は
家族よりも自分が楽になりたいから
いつだって
失踪者に憧れてたんだから。
わたしの名前を呼んで
迎えに来て。
あの頃のまま
わたしは取り残されてる?