この界隈でよく言われる「早期治療」について私の思うことを書きたいと思います。

第二次性徴を迎え、身体が男性化する前にホルモン治療ないしブロッカー治療を開始し、より女性的な容姿、声を手に入れたい(手に入れたかった)という考え方はこの界隈にありふれたものだと思います。私自身早期治療したかったという考えはあります。中には若い子は早期治療すべきだという意見も…。

たしかに早期治療は将来的なパス度の問題やQOLの向上には高い効果を発揮するのは間違いないと思います。ただ、そのメリットだけに目が行きがちで、デメリットを軽視するあまりに厳しい状況に陥る若年MtFの子がいるのも実際のところだと思います。

早期治療のデメリットとはいってもよく言われるような「思春期は性自認の揺らぎがあるから云々」という話ではなくて、若年層を取り巻くGID治療の状況が必ずしも患者に寄り添ったものになっていないがために個人治療に手を出すことによるデメリットが大きいと思います。

若いGID患者を取り巻く問題は枚挙にいとまがないと思います。学校での人間関係や学校側の無理解の問題、経済的に自立してないがために保護者の支援がなければ治療が受けられない点、未成年であるがゆえに診断までの時間が多くかかり治療開始までに時間がかかってしまう問題などなど…。加速していく第二次性徴の中で時間がかかればかかるほど焦りを感じてしまうのは致し方ないことだと思います。

ただ、それでも個人治療に手を出すのは好ましいことだとは思えません。個人治療をする上で適切な治療を指示してくれる人間もいなければ、責任を取ることのできないネット上の人間の不適切な意見に惑わされることもあります。このような状況でホルモン治療を行ってしまえば、心身の健康を損なう可能性はかなり高くなると思います。それだけではなく、医療機関(精神科)でのホルモン治療ではうつになった際にサポートを受けられる(うつの治療だけでなく投与するホルモン量の調整も)のに対し、個人で行っていると何かあった際に補助を受けることも難しくなります。
精神のバランスを崩せば自殺という最悪の結末を迎えることも少なくないことも界隈にいる人なら想像に難くないはずです。
自殺だけが問題というわけでもありません。思春期には様々な決断すべきことがあり、受験はその代表例だと思いますが、このようなタイミングにホルモン治療に手を出したばかりにメンタルに不調を来し失敗することも考えられます。治療を急いだからといって必ずしも最良の結果を迎えられないことも理解すべきだと思います。

正規の医療機関で治療を受ける場合のデメリットは必ずしも望んだ通りの治療をすぐに受けられない点にあると思います。未成年のGIDの診断には成人よりも時間をかけるべきとされているケースがほとんどだからです。とはいえ、現在の状況ではこれが最良だと思います。今後、若年層のGID治療がもう少し患者に寄り添ったものになることを願うばかりです。

長々と書きましたが、早期治療に反対するわけではないが、しっかりとした医療機関で治療を受けることが最善の選択肢であろうと思います。その上でどうしても個人治療に手を出したいというのであれば、しっかりデメリットに目を向けてその上で決断してもらいたいと考えています。

必ずしも全員が医療機関を受診できないことも考えると、若年層のMtFに対してしっかりとしたアドバイスができる大人が界隈に必要だと思うし、より現実に即した相談窓口があるといいなぁって…

長い。