数回目に訪れる、診療帰りのカフェ。
いつもとは心なしか気分が違う。
それは、目の前に座る娘が
少し明るい様子だからだ。
たった1回でここまで変わる?
それとも無理してる?
海ちゃん
「今日は何にする?」
メニューを開くと渚ちゃんは即答する。
渚ちゃん
「今日はプリンパフェ。」
海ちゃん
「えっ、プリンパフェとか珍しい。
じゃあママはホットサンド
ちょっとお腹すいちゃった。
量が多そうだから渚も食べる?」
渚ちゃん「うん、食べる食べる。」
それから2人はドリンクセットで
注文を行う。
渚ちゃん
「それでね、カウンセリングの内容
話してもいい?」
海ちゃん「うん、もちろん。」
渚ちゃん
「私さ、ママ以外の大人に
ちゃんとパパのこと話せて
ちょっとスッキリしたんだ。」
海ちゃん
「パパのことって、例えば?」
渚ちゃん
「例えばも何も
パパは会社の若い女の人と
不倫して、しかもあやちゃんに
目撃されたってこととか。」
そうか、カウンセラーさんは
そういう話もすでに知っているのに
初見のように、娘の話した通りに
聞いてくれたのか。
海ちゃん
「1から全部聞いてくれたんだ。」
渚ちゃん
「うん。そういうのママともちゃんと
話してなかったでしょ。
順序立てて話すみたいな。」
海ちゃん「まぁ、確かにね。」
そんなことしたら、自分も娘も
再び傷つくと思っていたから。
渚ちゃん
「だけどそういうの口にしながら
どこが傷ついたのか
なんで傷ついたって思ってるのか
1個ずつわかってきた。」
海ちゃん
「えっ、そんなこともわかったの?」
渚ちゃん
「わかったっていうか、まぁ。うん。
例えばだけど、、
パパのことがわかった時さ」
海ちゃん「うん。」
渚ちゃん
「パパに腹が立ったりしたこととか
女と会ってたことのショックの前に
・・ママが傷ついたこととか
パパがママを傷つけたことが
ショックだったってわかった。」
海ちゃん
「・・・そんなこと、
思ってくれてたの?」
渚ちゃん
「言葉にして、そう思ってたって
わかったのは今日だけどね。」
海ちゃん
「ありがとう、、そっか、、」
海ちゃんは、自分はまず
川太が不倫していた事実が辛く
苦しかった。
男としても夫としても大好きだったから。
自分が傷ついた。
だけど渚ちゃんは最初に、
母親である自分のことを思い
苦しんでいた。
だからつまりやはり渚ちゃんにとって
何が一番堪えたのかって
海ちゃんが傷つき落ち込んでいた姿。
渚ちゃん
「そしたらカウンセラーさんがね
あなたは優しい子ね、って言ってくれて
(ママの気持ちは、
ママ自身がちゃんと立て直す。
あなたのママは、
それが出来る人だから。
だから子供であるあなたが
心配しすぎて、
治してあげる必要はないの。)
って。」
海ちゃん「あぁ、、」
涙が出そうになるのをグッと堪える。
海ちゃん
「本当、カウンセラーさんの言う通り。
ママの気持ちは、ママが治せる。
だから渚は、自分のこと
将来のことや進路のこと
いっぱい考えていいの。」
自分が、川太やリクへの怒りで
いっぱいだった時も泣いていた時も
渚ちゃんはそれより自分のために
心を痛めていたんだ。
渚ちゃんのカウンセリングはどうやら
渚ちゃんの気持ちだけじゃなくて
同時に海ちゃんの気持ちも整理する
大切なプロセスだったようだ。
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