カウンセリングの時間中
海ちゃんはどんどん自分のことを
話していた。
すごく不思議な気分なのだが
1件目のクリニックではなく
ここを選んだ理由がそれで
別に友達のような安心感とか
そういうことではないのに
なぜかベラベラずっと話してしまうのだ。
これが、プロのお仕事なのか。
カウンセラーさん
「では海さん、もうそろそろ
お時間ですね。」
海ちゃん
「えっ、あ、なんか、あっという間ですね。
すいません、こんな
雑談みたいな話ばかりしてしまって、、」
カウンセラーさん
「そういう会話から、重要なポイントが
いくつも出てきましたよ。
だって海さん前回より
表情が少し穏やかにもなりましたし
ご主人のお話も減りました。」
海ちゃん
「あぁ、、そうですね、、夫のことより
今は子供のことの方が心配で・・」
カウンセラーさん
「海さん、海さんは一生懸命
頑張っておられます。
ですからこれからもっと、
自分のことを
見つめていく時間にしましょう。」
海ちゃん
「そう、、ですね、、自分のこと
向き合うのは、少し怖いです。
元々自分に自信なんかないのに
今回の夫の件で
もっと自信がなくなってしまって、、」
カウンセラーさん
「別に、自信なんかつけなくても
いいじゃないですか。
海さんのままで。」
なるほど、、と私も思う。
私なら、今回はたまたま川太が
ポンコツだっただけなんだから
たった1人のしたことで
自分の自信までぶち壊す必要ない
と言ってしまいそうなのだが
確かに元々海ちゃんは
自信満々に話したり、自分を
出すような人ではなかった。
だから無理して、
自分らしくない自信なんか
つけなくてもいいのだ。
海ちゃん
「・・そうですね、、
じゃあこの後娘のこと
どうぞよろしくお願いします。」
カウンセラーさん
「はい、こちらこそお願いします。」
カウンセリングルームを出ると
なぜか少し心が、軽くなっていた。
海ちゃん
「あ、渚。診察終わったの?」
待合室に戻ると、渚ちゃんが
携帯でSNSを見ていた。
渚ちゃん
「うん、終わったよ。私は
薬の処方とか必要なさそうって。
あの先生、面白いよね。」
海ちゃん「ん、面白いの?」
渚ちゃん
「うん。なんか発想が面白くって
笑っちゃった。」
海ちゃん
「へー。発想が??」
渚ちゃん
「ちょっと何がどうだって
例えるの難しいけどなんか私って、
なんでも考えすぎなのかな。 」
海ちゃん
「あー、それはママに似たんだわー。」
渚ちゃん
「私もそう思う。でも、
考えすぎる人がいてくれるから
いろんな問題が解決したり
商品が生まれてることも多いんだから
その長所を活かしなさーいって
先生に言われた。」
それから渚ちゃんは
先生と話したことを1から細かく
教えてくれる。生き生きと。
看護師さん
「では、渚さんこちらへどうぞ」
渚ちゃん
「はい、じゃあママ行ってくるね。」
渚ちゃんが立ち上がり、
手を振った様子を見て
海ちゃんはさらに、安心感を覚えた。
きっと私たちは、2人で乗り越えられる。
考えすぎ親子だけど
不器用で、ペースも遅いけど
乗り越えてみせる。
カウンセリングルームに入る娘の背中に
そう伝えた。
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