登場人物

 

海ちゃん…18歳の時に出会った親友。

今は結婚して県外におり、3人の子供を育てている。

長女の渚ちゃんはもう高校生。

その下に次女の凪ちゃんと弟くんがいる。

 

川太…海ちゃんの夫。温厚で優しそうで家族想い。

と、誰もが思っていたが、実は部下と不倫をしていた。

まだ2人とも会社は辞めていない。

 

リク…24・5歳、海ちゃんの旦那の部下で不倫相手

 

家族仲、夫婦仲がとても良い夫婦と

海ちゃん本人も思っていた、しかし夫の本性は、、

 

 

 

何も知らない下の子供達が

川太に会いたくてはしゃぐのは

当たり前だとわかっている。

 

けれど、夏休みはいつもより多めに

食事の用意もしなければいけないし

子供の行事などで

ママたちとの付き合いもあるし

 

下の2人はまだまだ沢山喧嘩もするし

川太の不倫のことが

いつだって頭の中を支配して

全然薄れてくれないし

 

今思えばこの時海ちゃんは

渚ちゃんと2人きりで

ちゃんと話す時間を取っていなかった。

 

 

 

そして8月のある日

 

 

川太の実家に、下の子供達が2人で

2日ほど泊まりに行くことになった。

 

 

しかも渚ちゃんは最初の1日目

あやちゃんのところに

泊まりに行くのだそう。

 

 

 

海ちゃん

「渚、あえてこの日に行くの?

 あやちゃん家。」

 

 

 

渚ちゃん

「だって私がいたらママは

 ご飯作らないといけないでしょ。」

 

 

海ちゃん

「え?、、、そんなこと考えて

 泊まりに行くの?」

 

 

 

渚ちゃん

「まーまー、別にそれだけじゃないよ。

 お泊まりしたかったし。

 

 でも、ママも1日ゆっくりして!

 次の日には帰ってくるんだから。」

 

 

 

 

海ちゃん

「そっか、、うん。行ってらっしゃい。」

 

 

 

 

 

そうして海ちゃんは何年かぶりの

いや、10数年ぶり?に

1人の夜を迎えることになった。

 

 

 

こんなことは、想像したこともない。

 

 

例え子供達が一斉に泊まりに行っても

この先独り立ちをしても

自分か川太のどちらかが先立たない限り

夫婦2人で過ごしてゆくことに

なるのだと思っていた。

 

 

しかし離婚という決断をしたら

あと10年後には、

一人暮らしになるのか。

 

 

 

下の子供達は、川太が迎えにきた。

 

 

特に弟くんは大はしゃぎだった。

 

 

 

渚ちゃんは、自転車で出掛けて行った。

 

 

 

 

パタン。

 

 

 

玄関の扉を閉めて、海ちゃんは

家の中を見渡す。

 

 

 

海ちゃん

(うちって、、意外と広いな・・・)

 

 

 

別に普段だって

子供たちが学校に行っている間

1人になる時間はあるのに

その日戻ってこないと思うと

急に寂しさを感じる。

 

 

 

休めばいいのに、海ちゃんはそのまま

雑巾を出して、床掃除をする。

 

 

 

そしてひと段落すると

先に炊いておいた白いご飯と

お茶とキムチと納豆だけを

テーブルの上に置く。

 

 

 

海ちゃん

(ふぅ、、あれ、、この後どうしよう、、

 1人の時間になったら

 あれもやりたいとか、これもやりたいって

 普段から色々思ってるのに、、

 

 全然思いつかない、、)

 

 

 

テレビをつけて、ぼんやりと眺める。

 

 

 

 

海ちゃん「うぅ、、、」

 

 

 

 

急に、涙が溢れてきた。

 

 

 

 

これから先、自分はどういう覚悟で

生きていけばいいのか

全然わからない、、

 

それよりまだ、川太のことが許せない。

 

 

 

 

それから海ちゃんは、

リビングに思い切り響き渡る大きな声で

思い切り泣いた。

 

 

泣いて泣いて、泣きまくった。