熊田先生の診察は
10分程度で終わったが
海ちゃんはそのまま
ベテラン看護師の田辺さんと
カウンセラーの
羽鳥さんに連れられ
ソファーのある席に移動した。
なんだかそこは
病室とはちょっと雰囲気が違っていて
カフェのような、
どなたかのお宅のような
あえてそんな雰囲気に
なっているのだと思った。
ベテラン看護師田辺さん
「私は一旦ここまでなので
海さん、頑張ってください。」
海ちゃん
「ありがとうございます。」
海ちゃんは、田辺さんに会釈をしたが
少し心配だった。
それは、田辺さんや熊田先生に比べて
カウンセラーの羽鳥さんが少し
きつい印象に見えたからだ。
カウンセラー羽鳥さん
「では先ほどの続きになりますが
またいくつか
質問をさせていただくので
海さんのお話を
聞かせていただけますか。」
海ちゃん
「はい、、お願いします、、」
カウンセラー羽鳥さん
「まず海さんは現在
・ご主人の不倫
・お嬢さんのこと
でお悩みのようですが、
海さんの悲しみの比重で
何よりも大きいのはどちらでしょうか。
それは、今の気持ちで構いません。
明日になったらその気持ちが
例え逆転していたって
今別に何か、答え合わせを私と
しているわけではありませんから。」
海さん
「・・・・・・・・それは、、」
娘のこと。
と言えば正解だろうか。
なんてことを考えてしまった。
海ちゃん
「・・・・・・・・・・・」
カウンセラー羽鳥さん
「・・・質問を変えましょうか。
無理して答えなくても良いです。
海さんが答えやすいもので。」
海ちゃん
「あっ、、すいません、、、」
カウンセラー羽鳥さん
「謝らないでください。」
じゃあ、ずっと無表情は怖いです。
海ちゃんはそう思う。
申し訳ないがなんとなく
羽鳥さんには答えづらいのだ。
語尾が、冷たく感じてしまう。
別に怒っているわけでもないし
淡々と仕事をしているだけだと思うが
その淡々とが伝わって
こんな話をしてしまって
ごめんなさいと感じてしまう。
きっとこれからここに通うなら
先生より、看護師さんより
カウンセラーの方と
一番話すことになりそうな気配の中で
この人にこれから
全て打ち明けるのかと思うと
なんとなく気が進まない。
でも、ここは受付の方も
田辺さんの感じもいい。
先生も薬を無理に出さないという
良い先生に思える。
カウンセラー羽鳥さん
「ご主人の問題で
そのことでご主人本人は
ちゃんと向き合ってくれてますか?
海ちゃん
「そこは、、はい、、
話し合いは多分、、、
出来てる方だと思います。
でも、、私が思うような答えは
夫の口から出てこないので、、
って言っても
自分が何を求めてるのか
それがわかってないんですけど、、、」
カウンセラー羽鳥さん
「そもそもの出来事が、海さんにとって
求めている内容とは
全く違うわけですから
わからなくて当然ですよ。」
海ちゃん「はい、、、」
カウンセラー羽鳥さん
「差し支えなければでいいですが
そのことで海さんは、
離婚をお考えですか?
それとも、再構築ですか?
もしくは、
どちらも悩まれている最中ですか?」
海ちゃん
「どちらも悩んでます。
どっちをとっても、辛いので、、
それは私だけじゃなくて、、
子供達も、、」
カウンセラー羽鳥さん
「では、お子さんがいなかったとして
それなら海さんは
迷わず離婚を選びますか?」
海ちゃん
「あぁ、、、」
海ちゃんは、少し考える。
海ちゃん
「いえ、、、
子供がいなくても、、、
迷います、、、、、、、、」
こういうやりとりを繰り返しながら
海ちゃんは気づくのだ。
離婚したくないのは、
子供のためじゃない。
自分が、離婚をしたくない
そう思っているからだと。
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