登場人物

 

海ちゃん…18歳の時に出会った親友。

今は結婚して県外におり、3人の子供を育てている。

長女の渚ちゃんはもう高校生。

その下に次女ちゃんと弟くんがいる。

 

川太…海ちゃんの夫。温厚で優しそうで家族想い。

と、誰もが思っていたが、実は部下と不倫をしていた。

 

リク…24・5歳、海ちゃんの旦那の部下で不倫相手

 

家族仲、夫婦仲がとても良い夫婦と

海ちゃん本人も思っていた、しかし夫の本性は、、

 

 

 

長女の渚ちゃんは今回の件を

教えてくれて良かったと言った。

 

 

けれどこの瞬間長女として

一気に重たいものを背負った。

 

 

 

長女 渚ちゃん

「こんな、、こんなに苦しいこと、、

 

 あの子たちに、、

 こんな思い、させたくないよ!!」

 

 

 

 

海ちゃん「渚!!」

 

 

 

部屋を飛び出すと今度は、

お手洗いに閉じ籠り、鍵をかけた。

 

 

 

この扉の向こうから、

啜り泣く声が聞こえてきて

海ちゃんも泣き出したい気持ちを抑え

落ち着いた口調で話しかけた。

 

 

 

海ちゃん

「渚、、今からパパには

 出て行ってもらうから、、、

 そしたら出ておいで、、

 

 あとでママとゆっくり話そう。」

 

 

 

渚ちゃん

「うぅ、、最低だよ、、

 パパなんか、最低、、」

 

 

 

海ちゃん

「うん、、そうだよね、、うん、、

 渚、、辛い思いさせてごめん、、」

 

 

 

渚ちゃん

「違うじゃん、、謝るのは、、

 ママじゃないじゃん、、

 

 もうママも謝らないで、、

 なんかそれも、、、うぅ、、

 苦しいんだよ、、」

 

 

 

あぁ。渚ちゃんが泣いているのは

自分のことでじゃないんだ。

 

可愛い妹と弟のため、

そして

 

大好きなママのため。

 

 

 

海ちゃんはその扉をさすりながら

涙を堪えて声をかける。

 

 

 

海ちゃん

「そうだね、、ママが謝るの、、

 嫌だよね、、、

 

 今、パパと話してくるから

 ちょっと待っててね、、」

 

 

 

渚ちゃん

「うぅ、、、、」

 

 

 

 

 

 

 

リビングの床に座り込んだ川太が

部屋に入ってきた海ちゃんの顔を

すがるような目つきで見つめる。

 

 

 

海ちゃん

「あなたがやったことは、、

 

 こういうことだから。

 

 

 渚のあの顔見た?

 あんなに悲しい、苦しいあの子の顔、

 今まで見たことある?

 

 そんな顔させたのが、、

 父親であるあなたなんてね!」

 

 

 

川太

「もう、、一生俺とは

 話してくれないのかな・・」

 

 

 

 

海ちゃん

「知らないよ、そんなこと

 私に聞かないで。

 

 とにかくあなたはもう

 今日は実家に帰って。

 

 あなたがいると、渚があそこから

 出てきてくれなくなるから。」

 

 

 

 

川太

「・・・・」

 

 

 

海ちゃん

「だから話さなきゃ良かったのに、

 って、思ってる?」

 

 

 

川太

「・・・・・そんなことは、、」

 

 

 

 

海ちゃん

「今の、一瞬のあなたの顔が

 そう言ってるみたいだった。

 私のことを、責めてるみたいに。」

 

 

 

川太

「そんなわけないだろう。

 違うよ、、」

 

 

 

海ちゃんはこの場でもっと

口汚い言葉が飛び出しそうになる気持ちを

グッと堪えた。

 

2人きりだったら、言っていた。

 

 

 

 

海ちゃん

「渚には、声をかけずに出ていって。」

 

 

 

川太はわかったと言って、

それからすぐに、家を出た。

 

 

 

 

 

 

海ちゃんは、フーと息を吐いて

渚ちゃんのいるお手洗いに向かう。

 

 

 

 

海ちゃん

「渚、、今、パパ帰ったから、、

 

 ママと、2人きりだよ・・

 

 

 

 

 ・・・・・・・」

 

 

 

 

するとゆっくり、お手洗いの扉が開き

 

 

 

渚ちゃん

「うっうっ、、ママ、、、」

 

 

 

 

 

涙でぐちゃぐちゃの長女が、

愛おしくて苦しくて

 

海ちゃんはその身体を

思い切り抱きしめた。