兄の通学カバンが汚れなくなって1週間。
安心したのも束の間。
カバンの中に
カビたコッペパンが入っていた。
母親は不思議な気持ちになったが
兄が何も言わないので
それ以上追求はしなかった。
ちなみに兄は生まれた時から
小児アトピーが酷く体が弱かった。
その5年後、転がしといても
勝手に育ったらしい私に比べて(言い方よ。)
風邪を引いたと思ったら
即入院することになったり
体の痒みで辛くて泣いて起きたりなど
本当に兄にはどうしてこんなに
試練があるのだろうと
丈夫に産んであげられなかったこと、
母は何度も自分を責めていたらしい。
そんな、コッペパンがカビていた日から
ほんの数日後
パンダ母
「あれ、、お兄ちゃん。
筆箱の中にたくさん入ってた
新しい鉛筆とかペンとか
1本も入ってないんだけど」
夜にまた
次の日の準備をしようとした母が
兄に話しかける。
パンダ兄
「机の中にある
お道具箱に置いてきたのかも。
部屋にまだあるから
1本入れておくよ。」
そう言って自分でまた
新しい鉛筆を入れる。
パンダ母
「お道具箱に全部鉛筆、、
入れたりする?」
母は胸騒ぎがした。
そしてその翌日の夜。
今度は国語の教科書の表紙が
半分以上破れていた。
パンダ母
「ねぇ、教科書ってこんな風になる?」
パンダ兄
「カバンから取るときに
引っ張っちゃったみたいだから。」
ちなみにこの時、兄は家の中で
塞ぎ込んでいる様子でもなかったそうだ。
元々大人しいのでわからないが
まだ2・3歳くらいだった私と遊んだり
好きなお笑い番組を見て笑ったり
すごく普通に過ごしていたので
何かを思い切り我慢しているようには
見えなかったのだ。
◆
翌日、母は思い切って
伊藤先生に電話をかけて
この数日にあったことを
伝えることにした。
パンダ母
「私の思い過ごしならいいんですけど
こんなことが日々続いて
気になってしまったので・・・
申し訳ございません。
ご面倒おかけして・・・」
伊藤先生
「いえ、確かにコッペパンは
持って帰るのを忘れてしまう子供は
何人かいるんですけど
まだ転校して間もないのに
すでに教科書が破れてるっていうのは
気になりますね・・
私ももう少し、休憩時間も
教室にいるようにしてみます。」
パンダ母
「ありがとうございます。」
◆
そんなことを話した数日後。
パンダ兄が食事の時に
少し遠くのおかずを取ろうとして
手を伸ばした時
パンダ兄「いたっ」
そう言ってお箸を下ろした。
パンダおばあちゃん
「あら、どうしたん??
なんで痛いん??」
ハッとしてパンダ母が、兄の袖をまくると
パンダ兄の肘に大きなあざがあり
明らかに打撲しているようだった。
パンダ母
「ちょっとこれ、どうしたの?」
パンダ兄
「・・・今日、学校で転んだ・・
大丈夫だよ・・」
兄はすぐにその傷を隠すようにして
袖を下ろす。
パンダ母
「転んだって、どこでどうやって?
こんな大きなあざになってるのに
なんですぐに家に帰ってきて
教えてくれなかったの?」
パンダ兄
「別に、すぐに痛くなくなってたから
あざになってるの
気づかなかっただけだから・・」
パンダ母「でもっ」
兄が立ち上がり、一瞬何か言おうとして
すぐに階段で自分の部屋に
駆け上がって行ってしまった。
でも、パンダ母は見逃さなかった。
立ち上がった瞬間の兄の目に
涙がいっぱい溜まっていたのを。