娘の入院が決まったというのに
今夜から1週間も
離れ離れになるというのに、
タクヤは時間ばかり気にしている。
タクヤに言いたいことは山ほどある。
だけどまだ私は
女優でいなければならない。
ミキ
「夕飯どーする?買って帰る?」
当たり前に、そう聞いた。
こんな時に、
泊まりになんていくわけないよね。
娘より大事なものはないよね。
タクヤ
「あ、うん。
まぁ‥‥そうだね。」
動揺してる。
わかりやすー!!クズー!!
そして、買い物して帰宅。
ほどなくして、タクヤが言う。
タクヤ
「ちょっと出かけるから」
はいはい。きたきた。
和歌子のところね。
わかってるよー!
もう出てけー!
と心の中ではそう思いながら
ミキ
「え?どしたの?
いま?帰ってくる??」
いや
帰って来ないの知ってるよ。
敢えて聞いてみたよ。
てか、帰って来るな。
タクヤ「いや、帰らない」
万歳ー!
やったー!!
よかったー!!!
もう、
期待を裏切らない最低男だ。
帰ってこないなんて
普通に考えたら最低だけれど
娘がいない今夜、
2人っきりになるのも嫌だ。
ミキ
「そっか。わかった。」
疲れてるし
面倒くさくなってきて
適当に返した。
タクヤは出ていった。
よし。
さぁ、パンダさんに電話だ。
私は今日のことを
パンダさんに即効話したかった。
そして
あれやこれやと話していたら
ガチャッ!
え!何!?
玄関のドアが開いて
まさかの旦那帰宅。
なんで!
なんで帰ってキタノ!?
慌ててパンダさんとの電話を
切ってしまった。
これは
和歌子となんかあったな。
タクヤはどうして
こんなに分かりやすいのか。
なんかもう面白くなってしまう。
さてさて私は、
どんな演技をするのがいいだろうか。
考えた。
10秒くらい。(短っ!!)
当時はもう演じる事に慣れていたので、
瞬時に頭が回転するようになっていた。
ミキ
「え?どしたの??
帰って来れないんじゃなかったっけ??
実家、大丈夫??」
実は、タクヤがが出かけて暫くして、
1通LINEをいれていた私。
その内容は、
ミキLINE
「急いで出て行ったから
きっと実家だよね?お母さん大丈夫?
気をつけて帰ってね。」
いや、思ってないよ。
和歌子でしょ。
分かってて送ってるんだよ。
気づいてないあんたを
すごくすごーく信じてる嫁を
演じてるだけだから。
それ故、帰宅後の会話を
スムーズに進める事が出来た。
ミキ
「実家、大丈夫なの?
…おかあさん、そんなに悪いの?」
タクヤ
「いや、実は飲んでて…」
なんでこんな茶番に
つきあわなければいけないのか。
タクヤは、
ずいぶん憔悴した表情をしている。
これはそうとう揉めたんだな。
ミキ
「え!飲んでたの!?
1人で?どこで?えー!」
タクヤ
「近くで…。1人飲んでた…。」
んなわけない。
ミキ
「なんかずるい!なんで1人で!?
飲むなら私だって一緒に飲みたかったよ。
ただでさえ辛いのに‥」
(シュン…みたいな素振り)
タクヤ
「ごめん…。
ちょっと1人で飲みたくて…。」
いやいやもうやめてよ
分かってるから。
何かあったって、
顔にかいてあるから。
もう、ここまできたら面白い。
すると急に、タクヤの携帯が鳴った。
タクヤ
「あ、ちょっと電話出るわ…」
タクヤはベランダに出て、
会話をし始めた。
こんな時間に電話なんて
和歌子以外の誰でもない。
妻子がいるとわかった上で
こんな時間に電話してくる
和歌子も非常識だが
出るタクヤもタクヤ。
さぁこれから、
どうしようか。