目が覚めると救急車の中で、気が付くとタンカーの上に寝かされていました。
母が横にいるのが分かりました。
救急隊員の方にはずっと
「がんばりや、がんばりや」
と言われていました。
母は
「まいこ、まいこ」
と何度も泣きながら呼ぶのですが、私はなぜか返事をしっかりできませんでした。
そのうち私は喉がかわいて、
「みずちょうだい!」
と言いました。
でも、誰も水をくれない。
後で知りましたが、人間は瀕死の状態になると心臓に全神経集中し、水を飲んだら
その心臓に集まった神経が消化に使われ、亡くなってしまうそうです。
『最期の水』と言われるそうです。
だから、生きてほしい人には絶対に水を与えないのだそうです。
救急車の中では、病院に電話して、みてもらえるか確認します。
病院側が受け入れ可能と言われて初めて救急車は発車します。
やっとの事で受け入れ可の病院に搬送されても、私の状態をみるなり
「うちは、ちょっと・・・」
と断られを何回も繰り返し、私たちは救急車でさまよいました。
これも後で知りましたが、病院は救急車の瀕死の患者は受け入れるのを嫌うそうです…。
搬送先の病院で亡くなることは、病院にとっては不名誉なことだそうです。
そんなこんなで1時間は救急車でさまよい、やっと搬送してもらえる病院が見つかりました。
ドクターは、私がICUにつくなり、医療用はさみを私の体に向け、
着ていた洋服を、まずは切り裂きました。
血まみれの私の体から、衣服をはぎ取るためです。
この時の私の体に触れた、医療用はさみの冷たい感触を
私は今でも忘れることはできません。
(つづく)