タヌキの奇形創作宿 -11ページ目

タヌキの奇形創作宿

ようこそ。
このブログでは、
オリジナル小説(主に怪談)、童話、
詩、二次創作物を自己満足に綴ります。
Youtubeでは、朗読を投稿し始めました。

この窓際から眺める打ち上げ花火は、


今年も色鮮やかに咲き乱れては消えてゆく。


去年と違うのは、きっと夕子がいないからだ。


「夕子。君は心霊スポットに行ってから、

幽霊が見えるようになったと言ったね」


夕子と過ごしたこの部屋には、


彼女が残した思い出だけが儚く漂っている。


「君は髪の長い女の人が憑いていると言ったね」


彼女はそれが原因で精神を病み、


今もカウセンリングに通っているらしい。


しかし、僕は彼女を大袈裟だと思う。


「……一人、増えた」


花火を背にして部屋の中を見渡すと、


そこには七人の同居者が徘徊していた。


俺は車から一人の少女に声を掛けた。


田舎道での誘拐とは、我ながら人生を捨てていると思うが、


それでも理性を抑えられなかった。


年齢は小学校の高学年くらいだろうか。


「何でも買ってあげるから、おじさんと一緒に行こう」


少女は嬉しそうに頷くと、


助手席のドアを開けて座った。


最近の子にしては、あまりにも警戒心がなさ過ぎるではないかと、


誘拐犯である俺としても首を捻ってしまう対応だが、


まぁ、そういう子供もいるだろうと納得した。


「それじゃあ、出すよ」


そう声を掛けると、少女は元気良く頷いたが、


その後で意味の分からない言葉を発した。


「うん!皆も良いって!」


俺は思わず、アクセルを踏もうとしていた足を止めた。


「……皆?」


俺は後部座席と扉の外を見回したが誰もいない。


「だ、誰もいないけど……」


と、少女に視線を戻すと、知らない少女のにやけた顔が間近にあった。


「ひっ!!」


俺は慌ててドアを開けて、車の外へと飛び出した。


「おじさん、どうしたの?」


化物。


その表現にここまで適した姿はない。


何故なら、先ほど声を掛けた少女の頭部や


頬に複数の違う少女の顔が張り付いていたからだ。


「一緒に行こう一緒に行こう一緒に行こう一緒に行こう

一緒に行こう一緒に行こう一緒に行こう一緒に行こう」


少女は顔が重いのか、俯き加減でゆっくりと近付いてくる。


「うわああああああああああ!!!!」


俺は全速力でその場から逃げた。


自宅に戻ることも怖くて、友人の家に泊まらせて貰うことにした。


そして、翌日、俺は車を取りに戻った。


駐禁も取られていないのが、不幸中の幸いだった。


「……急ごう」


そう心に誓いながら、アクセルを踏んだ。


とにかく、あの化物の姿が頭から離れず、


早くこの場から去りたいという気持ちでいっぱいだった。


そして、ようやく通行人の姿が見える道まで差し掛かったところで、


助手席からこんな声が聞こえた。


「一緒に行こう」

「被告人を責任能力の欠如を認め、有罪。死刑とする」


「はっ? 待ってくれ! 無罪じゃないのか!?

俺は心神喪……」


「生きていくということは、責任を背負うこと。

それが出来ない人間に存在価値はない。

例えば、泥酔した人間「が」何をしても許されるのなら、

泥酔した人間「に」何をしても許されるというのが、

私の考え方だ」


「そんなこと、世間は許さないはずだ!」


「確かに綺麗ごとしか言えない偽善者は多いが、

この法廷では通用しない。

何故なら、この場にいる全ての人間は私と同じ考え方であり、

世間に公表されることもないからだ」


「ふざけるな……ふざけるな!」


「では被告人の死刑を執行する」


裁判長の言葉を合図に一人の裁判官が、


一本のナイフを取り出すと、


被害者遺族に手渡した。


「……お、おい、何をする気だ?」


「被告人は十三歳の少女の身体を十五回刺して殺害した。

同じ目に遭えば、痛みを知ることは出来るだろう」


「待ってくれ……頼む! 俺が悪かった! 助けてくれ!」


それから二十分程、法廷内には狂ったような絶叫が響き渡った。