図解でわかるパラメータ・原音設定 | チラシの裏 ~UTAU調声メモ~

チラシの裏 ~UTAU調声メモ~

UTAUの調声の話を中心に、初心者向けの使い方からうまく歌わせるコツ・ニッチなネタまで、独断と偏見で書いています。

初稿:2014年11月


ここではUTAU調声時に出てくる発音・発声タイミングに関するパラメータのうち先行発声オーバーラップと、
原音設定で出てくる左右ブランク・子音部分について解説します。
それ以外のパラメータ仕様はUTAU調声パラメータまとめにて。


原音設定は音源作りの一部と捉えられがちだが、本来は先行発声、オーバーラップ、STPなどの、調声する時に使うパラメータのデフォルト値を用意する事を指す。
音源の一部というより調声を補助するための設定ファイル?

だから原音設定と実際に歌わせる工程には密接な関係があるし、調声ガチ勢になると調声しながら原音設定が気になって直したりする。
ここでは調声ガチ勢向けのパラメータの話と原音設定の話を結びつけて、ひとつの画像で説明します。

以下、画像の音源は空花ルアフルセットのD#4より。
上がUTAUのエディタ表示、下が原音設定支援ソフト「setParam」の操作画面。
(クリックで拡大できるよ)


まずは単独音で先行発声(以下pre)オーバーラップ(以下ovl)の説明。

otoini1

日本語の発音は子音+母音の組み合わせ。
画像の波形(setParam上段の黒いかたまり)を見れば、「さ」はpre(先行発声、赤い線)を境に左右が全然違う形なのがわかると思う。preより左がs(子音)、右がa(母音)。
母音のスタートとノート(音符)のスタートをあわせるので、子音はノートが始まる前に鳴らさないといけない。そこで「先行発声」という考え方が出てくる。
つまり、先行発声の値=子音の長さ(ミリ秒)=setParamの「左」から「先」までの長さ となる。・・・基本的には。

次に、前の「あ」のノートが「さ」の子音部分とかぶってるんだけど、この重なりの長さが「オーバーラップ」。
ovlを大きくすると重なりが増えてなめらかに聞こえるけど、増やしすぎると不自然なので注意。
ovlは左ブランクの位置を0として、数が大きいほど右へ、小さいほど左へ。
負の数を入力すれば、「あ」と「さ」の間をあけることができる。
(カ行やタ行などの破裂音ではovlをマイナス値にしたりする)

「子音部分(子音部、固定範囲とも言う)」は原音設定には出てくるけど、UTAUエディタ上には表示されない。
つまり調声時にはあまり意識しなくていいやつ。
簡単に言うと、原音より長い音符を歌わせるときは子~右ブランクの間がびよーんと引き伸ばされる。
左右ブランクは「ここからここまで使うよ」ってやつ。

さて、画像のsetParam画面下段のカラフルなやつ(初期設定では白黒だったと思う、色は変えられる)はスペクトルといって、原音設定時に絶対に必要な画面。
preの位置を見極めるときは波形ではなくこちらを使うのがメイン。なんでかは後述。


ここで、調声師目線でパラメータを簡単にまとめ。
・先行発声=子音の長さ。
UTAU上では、先行発声のぶんだけエンベロープの四角い箱が左に伸びて発声開始の位置が早くなる。
原音設定時は「子音と母音の境目に置く赤い棒」として扱うことが多いが、調声時は「デフォルトのままならリズムぴったりに、数を増やせばタイミングが早く、減らせば遅く発音させるパラメータ」と思ったほうがわかりやすい。音の開始位置を微調整できるパラメータ。
先行発声はSTPと関わりの深いパラメータなので「UTAU調声パラメータまとめ」も読むべし
・オーバーラップ=調声時も原音設定時も、「前の音符が次の音符とどれぐらい重なるか」という認識でOK


次は連続音(の先頭じゃないやつ)。

otoini2

こちらは「さ」ではなく、あ→さの繋ぎ目を含めた素材なので、「左」~「先」の範囲に手前のaも入っている。
ovlはだいたいpreの3分の1ぐらい。連続音であまりovlを長くすると、前の音符が短いときに色々と面倒なことになるので、連続音の原音設定時にはovlはいじらないこと。

連続音ではどの音も左~オ、左~先の長さが同じでいいので、setParamの設定でpreを動かすと他のパラメータが全部ついてくるようにして、preの位置だけ決めてしまえば左ブランクとovlは触らなくてok。
子音部分も大抵は触らなくていいので、連続音の原音設定はpreと右ブランクだけ直せば終わり。超簡単!
・・・「- か」などの先頭音は単独音のように設定したほうが親切なので、実際そんなすぐには終わらない。


次、破裂音「a か」で残響の話をしようと思う。

otoini3

カ行、タ行、パ行、チャ行、ツァ行などは破裂音(とくに無声破裂音)といって、前の母音と子音の間に無音部分がある。図の左のaとkの間がそれにあたる。
(ちなみにダ行やガ行などの有声破裂音でも母音-子音間が無音になる場合があるけど、これは発音する人によって色々。)

CVVCのVC([a k][a t]など)では、a~aの終わりまで(kの手前まで)とすることが多い。
[a k]にk音を入れてしまったら、[a k][か]と入力したときに「akka」とk音が2回鳴っちゃうから。

んで、残響の話だけど、aの終わり~k音までの「空白であるはずの部分」でうっすら音が鳴っている。
これは録音時のノイズで、aを発音したときの残響が入ってしまっている状態。
(音が部屋の壁とかに当たって跳ね返ってくるノイズ)
原音を再生して聴いてもそこまで気にならないんだけど、UTAUで合成すると目立つことがあるので注意。あと周波数表の作成がうまくいかないことがある。

さっき破裂音でovlはマイナスになるって書いたけど、

otoini4

要はこういうこと。UTAU上で前の音の残響が鳴らないように、左ブランクを右にもってきて削る。
その結果ovlは左ブランクより左にくる=負の数になる。

(無声破裂音の左ブランク位置には諸説あるため個別記事を書いた→オーバーラップマイナス教とは(単独音・CVの原音設定の話)+プラグイン配布


よく見ると、さっきの「a さ」にも残響が入っていて、波形だとわかりづらいけどスペクトルを見るとよくわかる。
この流れで「スペクトル」の説明↓

otoini5


「u い」とかもう波形見たって全然わからないよね。切り替わるとこ。
そんなときにこれ!スペクトルです!!
スペクトルとは周波数ごとの音量を色の濃さで表したもの。
上のほうが高い音、下のほうが低い音。
UTAUの原音設定エディタでも一応表示できるけど見づらい。

音は色んな周波数の波が重なってできるんだけど、uとiでは同じ音程でも含まれる周波数(倍音の量)が違うので音色が違って聞こえる。
その「音色」を目でみてわかるようにしたのがスペクトル。

母音と母音の変わり目(赤丸、uがiになる途中)が終わったところにpreをもってくると良い感じなはず。たぶん。
これはヤ行とか拗音でも重宝するよ↓

otoini6

「n や」。
子音yや母音iは赤丸で囲った部分(画面下から5分の2あたり一帯)が白くなるんだけど、これを知ってると設定が楽。

原音設定時には波形と一緒にスペクトルも表示しよう!
というわけで今回はここまで。