「地球をつくった男」改訂版
絵とおはなし いけかつまいこ
昔昔ある銀河に地球という惑星がありました。
その星は死の惑星とも言われ、そこに辿り着いたものは一瞬にして深い眠りにつき、大切なことを忘れて、やがて朽ち果てていくという恐ろしい伝説があったのです。
それはそれは悲しみに満ちた惑星で、そこに居るだけでたちまち凍りつき、人はみな絶望してしまうのでした。
遠い銀河の住人や、
他の惑星の生き物たちは、地球を嫌い、やがて誰もよりつかなくなっていったのでした。
実際に人々は眠ったまま戦いを繰り返し、奴隷ロボットのように苦しみながら働き、殺しあい、ののしりあい、怒り狂うものもいました。
おののいた人は引きこもり、身動きがとれなくなったりしました。
そう、長年の人々の苦しみや悲しみの歴史、そしてとても大きな戦いやいじめなどによってその惑星はほとんど死にかけていたのでした。
地球は完全に元気を失っていました。
水は濁り、嵐が吹き荒れ、花や木々は枯れていきました。
星と会話ができる人は限られており、ほとんどこの星を気遣うものはいませんでした。
それでもなお、戦いは終わりませんでした。
何世紀か、長い間、この星全体が灰色に覆われていました。
ある時ひとりの勇者が、舞い降りてきて、こういいました。
「地球よ!頼むから死なないでくれ」
「僕は君を助けに来たんだ!お願いだから起きておくれ!!」
「僕は何億光年も先の惑星から来た、だからこの星のことはよくわからない。でも死んじゃだめだ!起きるんだ!目を覚ましておくれよ!」男が手をさしのべても
地球は黙ってうつむいたままでした。
地球は何度も何度も人から酷いことをされたせいで、もう誰のことも信頼できなくなっていたのです。
だからプイとすねたように、地球は全然男の話を聞こうとはしませんでした。
男は、翌日から世界中を旅して廻りました。
様々な地域を旅してはどれだけこの星の水や風や花や、空が美しいかを語り、人々と分かち合いました。
太陽や月の光が優しく照らしてくれることや、
雲の流れを見つめることも、
地球にいるからこそ味わえることなのだと男は学びました。
男は何度も何度も同じ話を語り歩きました。
眠った人々は次第に意識を取り戻しました。
鳥の声を聞いては一緒に歌い、犬や猫ともふれあい、世界の偉い人たちとは国民について語り合いました。彼らは不眠に悩み、また孤独でしたが、男と語り合ううちに本当の愛を知りました。
世界中の人々と笑いあい、悲しむ人がいたらなぐさめ、抱きしめ、勇気づけたりしました。
気づいたら彼は地球上の全ての生命と友達になっていました。
花や山や動物たちは男のことが大好きでした。
男もこの地球という小さな星の全てが好きでした。
男は彼の住む遠い遠い銀河のはずれの故郷の星のことなどすっかり忘れいつの日かもう地球にずっと居たいと願うようになっていました。
そしてこの惑星が生き返るならば何だってすると固く誓うようになっていたのです。
とある日蝕の日に地球は元気を取り戻していました。
気づくと男の周りにはたくさんの人がついてきていました。
そう、彼の周りはみんなが笑っていました。この星には戦う人など一人も居なくなっていました。
はにかみやの画家や、カッコつけた俳優や、頑張り屋の演歌歌手や、生真面目な教師や、おせっかいな老婆、少し風変わりな子供たちなどが地球にいるというだけで、みんなが家族に見えました。
みんなは本来の自分をすでに思い出していました。
男は、それだけで充分に幸せでした。
男は、地球のとある女性と恋に落ち、可愛い息子を授かりました。
男は、地球で幸せな家族を作りました。
そのとき、はじめて地球が笑いました。
キャッキャッというような、まるで赤ん坊のような声をあげて、地球は一晩中笑っていました。
地球は人類を信頼できるようになっていたのです。。。
地球での時間を充分に過ごして、男はこの地球での思い出を胸に抱き、出会った全ての人々を思い出していました。
そして、この惑星に感謝をし、祝福し、
「ありがとう、地球よ。私はこの惑星に滞在できて良かったよ」
男はそう言うとこの星を去りました。
人生の尊さを地球に教わったことを彼は決して忘れませんでした。
それからその惑星は見違えるように輝いたといいます。そう、楽園のように、いつまでも宇宙の中で永遠にキラキラと輝き続けたのです。
場面変わる
「お父さん、今も本当に地球という星はこの宇宙のどこかにあるの?」
「さぁ、、、それはわからんなぁ。 お父さんは地球へ行ったことがないからなぁ」
「僕、大人になったら地球に行ってみたいな!僕、絶対に地球に行くよ!そして約束したみんなに会いに行くんだ。」
おしまい