「ねぇ、なんで横浜の人は国道1号線を2国(にこく)って言うの?」
助手席で彼女が僕に聞く
「知らないよ」
「え~、横浜の人でしょ~?」
からかうように彼女は笑う
「そんな事、知らないよ」
冗談っぽく僕が答えると
彼女は淋しそうにつぶやいた
「何も知らないのね・・・。」
久しぶりのデートで
久しぶりのドライブ
桜も終わりが近くなって
花びらもだいぶ散ってきてはいたけど
仕事でなかなか時間が作れなかったから
やっと彼女とお花見でもしようかと
僕らは国道1号線を走っていた
「あのさぁ、横浜出身だからって、そんな事知らないよ」
すこし呆れたように僕が言う
「そうよね」
彼女は軽く笑って答える。
なんとなく鎌倉の方へ向かへば
桜が見れると考えていた
鶴岡八幡宮なら桜の名所だし
横浜駅を過ぎた辺りで
彼女が言いだした
「結婚しようって、なんで?」
僕らは同棲生活を5年近く続けていて30歳をむかえていた
なんとなく過ごしていたが、親がケジメを求めてきたのだ
彼女の親ではなく、僕の親からだった。
「俺の親がさぁ、お前は男だしどうでもいいんだけど、彼女の方が大切なんだって言われてさ」
親から固められたんだと、僕は心の中でそうつぶやいた。
そんな逃げ道でもない限り、できる決断じゃない。
ちょっと道を間違えて、かるく迷子になったとき
坂道で綺麗な桜並木のトンネルを通った
そこはドラマの中でしか見ないような
綺麗な空間だった。
「綺麗・・・」
「こんな所があったのね」
彼女の嬉しそうな顔が、僕に幸せを感じさせた。
「そんな結婚・・・」
「絶対要らない・・・。」
強く吹いた風が、
桜の花びらをブワッと一斉に舞い上がらせる。
春の心地よい暖かさが、日差しから感じてくる
そんな日の事だった。

