学校に着き、美雪たちは女子テニス部の更衣室へと向かった。どうやらふたりが一番乗りらしく部員は誰も見当たらない。
なので、美雪はしおりと一緒に更衣室に入り着替えることにした。
「しおり……また胸少し大きくなった?」
「え?最近は全然だけど」
「そ、そっか……」
「ちょっと触ってみる?」
「え!いいよ別に……誰かに見られたらまずいから」
「冗談だよぉ」
しおりは笑いながら言った。
「あ、そういえばさぁ、美雪ってゆうみちゃんと一緒にいて大丈夫なの?」
「ゆうみ?……ああ、西谷のことね。正直ちょっと不安……」
美雪は西谷とまともに話したことがないので不安でしかたない。
「よしと、そろそろみんな来るかもだから出よう」
「うん」
着替え終わるとふたりは部屋から出た。
その直後、美雪の視線に西谷の姿が映った。西谷もこちらを見つめている。
まずい、しおりと出てくるところを見られてしまった、と美雪は思った。
「お、おはよう……」
とりあえず美雪は挨拶した。
だが、西谷の返事は帰ってこない。気まずい空気になってしまった。
しばらく目を合わせていると西谷は逃げるように更衣室へと入っていった。
「ちょっと待って!」
美雪は西谷を追った。中へ入ると西谷は振り返りこっちを向いた。
「……何してたの?ふたりで……」
その質問に美雪はすぐには答えられなかった。
「まあいいよ答えなくても……」
美雪が答える前に西谷は言い、それから黙々と着替えた。
美雪はとりあえず部屋から出てテニスコートの方で待つことにした。歩いているとき、コートで座って待ている間、美雪は西谷を怒らせてしまったと思い落ち込んでいた。
「真冬くん」
呼ばれたのに反応し顔を上げると、いつものような笑顔の西谷がいた。
まるでさっきのことはさっぱり忘れたように明るく振舞っている。その姿を見て美雪は安心した。
「あのさ、今日僕んち泊まってかない?」
放課後の部活が終わろうとするころ西谷が言った。
できれば断りたいけれど今朝のことがあるので美雪は断れなかった。
「もちろん」
美雪は精一杯の笑顔を作って答えた。
正直男子と泊まったことのない美雪には不安でしかたない。とりあえず美雪はしおりにメールでそのことを伝えることにした。
部活が終わると西谷と一緒に校門を出た。そのとき後ろからマサルが走ってきて来た。
「よぉ、俺も混ぜろよ」
そう言って美雪の方に手をのせた。
「そうだ、秋村くんも一緒に泊まりに来ない?」
「げっ……」
西谷の提案に美雪はつい素の反応してしまった。
「あ、ごめん……ダメだった?」
「いや、ダメではないけど……」
「なら決定だね」
西谷は笑顔でそう言った。