フライフィッシングを始めた動機の1つが、この釣りのアカデミックな雰囲気である。始めた頃、書店で関連書籍を探していると、なぜか水生昆虫の生態について書かれた本を見つけた。何故、釣りに昆虫?

当時は水生昆虫の存在も知らなかったので、幼虫時期を水の中で過ごし、水面、水中で羽化し亜成虫となり、さらに脱皮して成虫となり、短い成虫期間を終える、なんてことは知らなかったし、そのステージを模し、季節によって異なる虫を考えながらする釣りだと知った時は、驚きもしたし、奥深さを感じて、そのアカデミックな雰囲気に嬉しくなったのを思い出す。

 

その後、フライフィッシングをしていく中で、ブリティッシュな雰囲気が好きになり、ドライフライで釣りたい川は最終的には南イングランドのチョークストリーム、リバーテスト、イッチェン、エイボン。スペイで釣りたいのはスコットランドのリバースペイ。

幸いに、そういう指向の人と知り合いにもなれて、いろいろ教わりながら自分の釣りは進んできました。

暫く振りにフライに戻ってみると、イギリスの古いイラストのようなフライがますます素敵に思えて、ブラインドアイのフックにアイアンブルーダンなどを巻いているのですが・・・

 

 

本というのは面白いもので、タイミングよくその人の元に訪れてくれる事がある。ふと目に止まった本が川野信之先生が翻訳された「フライフィッシングの昆虫学」。

原著の初版は1836年なので180年前にイギリスで書かれたものです。内容は鱒の生態から始まり、釣りの道具、フライの製作法、そして後半、半分以上は3月から9月まで月ごとに出現する昆虫とそのフライを作るためのマテリアルが、綺麗な図版とともに紹介されています。

 

 

 

 

 翻訳された川野信之先生は脳神経外科の先生で北里大学で客員教授をされていました。フライ雑誌に投稿された楽しい記事を読ませて頂いており(学会に出張された折に時間を見つけて釣りをされた事、など)、お名前は存じておりました。ショップでこの本をパラパラめくっていると、ショップの主人が川野先生は2年前にお亡くなりなった事を話してくれました。

他にもハルフォード、スキューズといったイギリスの100年以上前のフライの専門書を翻訳されています。

ブリティッシュな釣りにも造詣が深くてらっしゃったんだなあと、嬉しく思うと共に、お亡くなりになられたのはとても残念な事だと感じました。

それにしても医学の世界でも大きな業績を残され、御趣味のフライの世界でもこの様な先生にしかできない様な足跡を残され、御尊敬申し上げると共に頭が下がるばかりです。

 

 

 
ロナルズのイラストとは似ても似つかぬフライもいくつか巻き溜まりましたので、そろそろ釣りに出かけたいと思います。
ヘッドの真ん中からダイレクトにラインが出ているのが何か新鮮で、釣りにも好影響を与えそう、なんてすでに妄想が始まっています。
次の釣りでは1日これらのフライで通して見たいと思います、釣れても釣れなくてもねニコニコ