久しぶりに家族旅行で草津温泉に行ってきたよ
お母さんがあっちに行ってからもう何十年も経つけど、二人で暮らした草津は相変わらず硫黄臭くて観光客でいっぱいだった。
この場所を覚えているかな?
お肉屋さんから救ってきた白い仔犬を「シロ」となんのひねりもなく名づけてかわいがっていたのに、酔っ払って帰ってきたお母さんが首輪を離してしまったから、保健所が撒いていた毒入りウインナーを食べて玄関の前で冷たくなってたね。もしかしたら、シロは家に帰りたかったのかもしれないのにお母さんが戸を閉めちゃったんだね。
二人で泣きながらこの空き地の隅に埋めたんだけど、まだ空き地のままだったよ。
湯畑だけど、あれはなんかの罰ゲームだったの?
急にここに入ったでしょ?いつも突発的にやらかすから慣れたけど、あたしは恥ずかしかった。他人のフリしたけど、仕方ないよね?
今はね、そーゆーおばかさんが入れないように柵がしてあるんだよ。
授業中に呼び出されて、美容院に連れて行かれたら、七五三だった。
お母さんの行動はなんでも突発的だったね。
二人きりで白根神社にお参りしたけど、お父さんがいないあたしを気遣って平日にしたの?それともこの日に仕上がったスーツが着たかったからなの?
でもこの日にあたしにつまづいて転倒、膝が派手に破れちゃったね。
ここのおっさん、あたしを抱っこしてハァハァしてたけど、ヘンな人だったね。
いい季節だね。お母さんが好きだったサルビア、コスモスがたくさん咲いていたよ。
ほら、コスモスの向こうにすすきもあるよ。
夕方から始まる、空の色が変わっていくのを眺めているのがすきだった。
お母さんはこんな空を眺めている余裕はあったのかな?
久しぶりに朝陽を見たよ。
眩しくて目が潰れそうだった。
思い出したくない記憶ややり場のない感情が湧き出てきたけど、地平線と空を割るように光りだす太陽を見ていたら、終わったことに縛られている自分がアホらしくなってきたから、二度寝した。
あのね、久しぶりの草津はもう「ただいま!」の場所ではなかったよ。
記憶より町は小さくて、自分が変わったことがわかった。
相変わらず空気は澄んでいて水は冷たくて山は雄大だった。
明日からまた頑張ろうっと!




