「人間の作る物に価値は無い」
人類最後の正統派交響曲作家
ハンス・ロット
序文
出逢うべき物と出逢えずに終わる事程、不幸な事は有りません。
普段、クラシック音楽をほとんど聴かれない方であっても、それは単に出逢う機会を持たないまま日々が過ぎて仕舞っている、もしくは出逢い方がまずく、すぐに物別れに終わって仕舞った事が原因である場合は、計り知れない程多い事は疑いを入れないと言えるでしょう。
そういった方々に、それぞれの方にふさわしい作品、肌に合う作品と出逢って欲しいとの理由で、筆者は当ブログを開設致しました。
ちまたには、クラシック音楽を紹介する書物やテレビ番組を時々見掛けますし、それこそブログならば枚挙にいとまが無い程存在している事でしょう。しかし、この三態の全てを確認する事は不可能ですが、恐らくまず間違い無くその著者や紹介者たちは、学者や評論家の様なプロや、博識でクラシック音楽の鑑賞機会を多く持っている、いわゆる愛好家、好楽家ばかりであると言えるでしょう。
まさにここなのです。この様な人々はそのほとんどが幼少期からクラシック音楽漬けというべき環境のもとに生活をして来た人々と言えるでしょう。そのゆえに彼等は私達の様な、いわゆる門外漢がどうしてクラシック音楽を聴かないのか、何故興味を示さないのかという事をまるで理解、あるいは認識していないのです。
さらには、クラシック音楽の業界というのは恐ろしい程の、超が付く程の権威まみれでフットワークが悪いどころか、権威主義にがんじがらめとなって身動きを取れない硬直し切った世界であり、演奏会も作品の紹介も毎回毎回繰り返し繰り返し同じ、御墨付きの権威作品ばかりを扱っているのです。あるいはクラシック音楽の世界の物でない作品を管弦楽に置き換えて演奏したりしている。入口の間口は広い方が良いとはいえ(と言うより何でも構わないのですが)、これはクラシック音楽を紹介している行為とは呼べません。クラシック音楽自体に興味を持ってもらわなくてはならないのですからクラシック音楽の本道を紹介しなければ意味が有りません。最近でこそ珍しい作品も時々やる様になったかも知れませんが、それとても我々部外者のニーズを把握してはおらず、ちぐはぐで、ほとんどが見当違いの選曲ばかりです。
なればこそ、ゆえにこそ、ここにドシロウトを投入しようという次第なのです。筆者は音楽理論はおろか、調性も拍子もソナタ形式もなんにも知りません。にもかかわらず、もう約三十九年間もどっぷりとクラシック音楽の世界に浸かっているのです。筆者の様なドシロウトだからこそ、何故多くの人々がクラシック音楽の世界へ入ってゆかないのかを良く理解していると言っていいと思います。
筆者がクラシック音楽を聴く様になったのは十九か二十歳の頃、毎日強烈なストレスに襲われ、それを何としてでも解消せずにはいられず、何か激しい音楽を大音量で聴かずにはいられなくなったのですが、大音量は父親の反対で断念せざるを得なかったのですが、鑑賞は許可が下りたのですが、その頃筆者が知っていた唯一の激しい音楽は、作品の名称であれば、そしてその冒頭部であれば誰でも知っている、ベートーヴェンの「交響曲 第五番」(日本でのみ使用される通称は「運命」。これは作曲者自身の命名した正式名称ではないそうです)だったのですが、この作品は短かく、約三十分前後なのですが(短かいと言ってもベートーヴェンの時代の作品としては一般的な長さ)、それでも全曲を聴いたのは初めての体験でした。
そうなって来ると、どうしても同じ様に激しい、力強い作品を他にも聴きたくなるのが必然というものです。所が、あれも駄目これも駄目。幾ら捜しても筆者の切実な要求に応えてくれる作品は見付からなかったのです。長い旅路の果てに、ついにブルックナーにたどり着くまで。
ただし、当時はインターネットなど無かったのですが、私の好みや要求に合う作品を捜す為に大きく役立ってくれたのが「クラシック音楽 作品名辞典」という物でした。無名作品や無名作曲家がかなり幅広く掲載されていました。C.D.はひと月に二枚まで購入を許されたので、あとはひたすらラジオを聴きまくり、カセットテープに録音しまくりました。
当ブログはクラシック音楽にほとんど関心の無い方にも役立つと思いますが、特に筆者の様に自分に合う作品、あるいは自分の要求する作品と出逢うのに無駄な時間と費用と労力を費やして欲しくない為に書いている次第です。
そういう事は手間暇をかけて自ら道を切り拓く事にこそ喜びが有るのだと御考えの方もいらっしゃる事でしょう。しかし私の経験上それは徒労でしかないと言わねばなりせん。完全に時間と費用の無駄遣いです。
まさしく掲げさせて頂いている副題の通り、出逢うべき物と出逢わずに終わる事程不幸な事は有りません。少しでも多くの方に、少しでも多くの自分にふさわしい作品と出逢って頂きたい。当ブログがその為の御役に立てる事を願ってやみません。